第2話Ex 説明回!
Exという訳で、番外です。
今回はトラと一緒に、WWSについて知っていく回になります。
あ、本篇の第三話も同時に投稿していますのです、そっちもよろしくです。
「それでは皆さん、また明日会いましょう。 さよなら」
「「「さようなら」」」
今、この瞬間から放課後の時間となった。
これが何を意味するのか、それは今の俺にとっては頭が痛くなるような問題だった。
「徹三くん」
「…はあ」
例の人物が教室の後ろのドアから顔をのぞかせている。
嗚呼、こんなにうれしくない放課後は初めてだったかもしれない。
…いや、後悔して残念がっても仕方ない、切り替えよう。
カバンを纏めながら、どう説明するかを考える。
「…」
「テツ」
「ああ、解った。説明する」
普通に教室に入ってきて、普通に隣の席を座ってくる。
視界の隅に友一が居ることに気付けば、そいつがこっちに親指を立ててくる。
もう後戻りできない所まで来てしまった気がする。
……いいや、やるなら全て案内してやる。
「そうだな、まずWWSについて知ってる事はなんだ?」
「知ってる事?あのCMで言ってる事で全部だと思う」
「ああ、そう。解りやすいな」
「どうも」
要するにほとんど知らないって事じゃないか。
はあ、それじゃあどこから説明したものか…。
「まずな…本体とソフト以外にお金がかかるのが、フライトコントローラとヴァーチャル装置だ」
「ヴァーチャル装置? あんな高いのを買えと?」
「そうは言ってない。 この二つは別に無くても大丈夫だ、普通のコントローラで、普通に画面を見ながら操作しても良い」
ヴァーチャルとか大層なことを言っているが、今の時代ヴァーチャル装置とは俺が持っているヘッドマウントディスプレイの事を差す。
別に体の動きをゲームに反映したりはできないのだ。
そういった技術がいずれ実用化されると、テレビで何回か報道されているらしいのだが。
それでも最近、革命的な程に進化した技術が生まれ、それの多くがPZ4、PCに埋め込まれていると言う事が割とある。
これにより、処理・演算・記憶能力などが革命的に進化。それまでの何倍もの力になったと言われている。
こんな短期間でこんな進化を遂げたのだから、これ以上の進化は必要ないんじゃないかと、それとなく思っている。
「本体とソフトと…あとはテレビさえ有ればできる。PC版ならばPCだけだ。 他に必要なのは…ああ、後は酔わない体質である事か」
「え」
「うん?」
「…いや、大丈夫」
いや、大丈夫じゃないだろう。
今の”え”には、明らかに危険な奴だ。
「…酔うからゲーム出来ませんって言われても俺は知らないぞ」
「それは無い、私から頼んだんだから」
「ふうん……。ああそうだ、もしWWSを始めたら、やるのは陸軍なんだよな?」
「うん、そうだけど」
「へえ」
このゲームでは、陸・空・海の兵器が出てくる、その中に大きな住み分けが在ったりなかったりする。
とある人は、陸軍ばかりやって他を全くしない人かもしれない。
俺が思うに、目の前の人物がまさにそれだろう。
俺については、空軍だけやっている人間となるだろう。
いや、旧日本には空軍は存在しないか、じゃあ海軍か?
…まあ、どっちにしろ航空機ばかり乗っているのは変わらないな。
「所で、フライトコントローラって何?」
「空軍ご用達のコントローラだな。操縦桿の形をしていて、実際の動きと同じような操作が出来る」
「へえ」
俺が持っているのは、『フライトフルコントローラ・ゼロ型』だ。それこそゼロ戦のコクピット内の構造をある程度再現したコントローラだ。
操縦席に座り、左手にスロットルバーを握り、右手で操縦桿を操る。
まさに戦闘機体験と言える程の完成度だ。
因みにゼロ型とあるが、通常の物とレバーやらスイッチやらの位置が違うのだ。
他に戦車の内部を再現したコントローラだってあるが、大きすぎて置き場に困る代物だ。
実はこれ、本気で戦車を再現しているから、運転手と射撃手の二人で操作しなければいけない。
そう、ボッチ厳禁である。
「まあ、フライトコントローラはお前には要らないだろうな」
「その内鳥に成りたがるかもしれないよ」
「ああ、そう」
その確率は低そうだ。
さて、話しながら進めていた荷物纏めは終えた。
他に忘れ物は無いかと確認をし始めるが、特になさそうだ。
カバンを持ち上げて、廊下に出る、トラはちゃっかりと俺の横に付いて行っている。
随分とデカいトラに懐かれてしまったな…。
「もう説明することは無いと思うが…質問は?」
「何処で買えばいい? ゲームなんて触ったこともないの」
「…そのスマホで調べろ」
「機械音痴にそれは難しいわ」
まさか…まだ案内しろと言うのか?
それも購入まで面倒を見ろと…!
「お前…ああもういい。買える所まで案内する」
はあ…もう。
なんでこんなことまで…。
ホッチキスの芯で元取れるとは思ってなかったが、これは流石に無理だ。
スマホを手に取って、せめて一番の懸念を相棒に報告することにした。
〈今日は遅れる〉
今回、特に言いたかったのは、主人公の感覚がゲームの中と完全に同調しているわけでは無いという所でした。
これ、VRゲームってジャンルであってるのかなあ…。