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高校航空隊!  作者: 馬汁
2/9

第2話 高校生!

学生たちの平和な日常です、空中戦のくの字もありません。

恐らく、ゲームパートと学校パートが交互に来るような流れになるかと思います。

しかし、ほんのちょっとだけ兵器の話が出てきます。

それ以外は純粋(不純物20%)な学生たちの日常なので、それでよければお楽しみください。

「ふぁ…」


もうすぐ朝のホームルーム、中央の一番後ろで欠伸を小さく。

それも小さく、まるで蚊の声のように。


そんな小さな欠伸は誰の耳にも届かない…。


「徹三~。 また夜遅くまで起きてたのか?」


いや、届いた。

この人の名はなんだったか…確か友一と言ったか。

なるほど、在り来たりな名前だな。


「ああ、12時まで起きていた」

「おっまえ……と、そんな事よりさ!」


会話を始めようとする様子だが、呆れた顔をしながら時計を見つめる。

あと二分前、針のズレを考えれば数十秒ぐらいで鳴るだろうか。


ようやく騒ぎが収まりはじめ、クラスメイトの大半が席につく。


「土曜日にあったろ、アップデート! アレだよ、アレアレ!」

「…もうすぐか」


時計を見ながらつぶやくが、目の前の人間はこの場を離れる気配さえしない。

周囲の様子を気にせず会話を続ける彼は、見方次第で哀れに見える。


「…なるほど」


なにか納得するようにして、目線を横の友人に合わせる。

土曜日のアップデート内容には、二つの前翼機…またはエンテ型の二機が追加されたと記憶にある。

一つは、マトモに空を飛ぶ事が出来ずに終戦を迎えた震電。

二つ目は、普通に安定性が無くて開発中止となった…だっけか?

そいつの名前はなんだったか。


「あー、あれか。米製震電」

「ちげえわ! XP-55! アセンダー!」

「どっちでもいい。時間だ」


『キーン、コーン、カーン…』


そう言った直後だったか、チャイムが鳴り始めた。

それと同時、前のドアからガラガラと音がして、先生が入場する。


「おおっ、相変わらずすっげえピッタリですね!」


教室の誰か、少なくとも友一ではない誰かが、時計先生の正確っぷりを称える。


「時計先生、6日連続ですね!」

「フフー。…と、友一くん、時間だぞ」

「っと、すいません」


そう言って、あっさりと俺の机の近くから退いていく。

ありがたい、月曜日の最初の幸運と言ったところか。


相変わらずだが、時計先生はホームルームに一分たりとも遅れたことが無い。

だからと言って数分前に来ているわけでもなく、ただ時間ピッタリに来ているのだ。

素直に凄い、普通に凄い。


「それじゃ、出席取るぞー」



そうして、1番から出席が取られていく。

このとき初めて気づいたが、一人欠席しているようだった。

そうして留年へと一歩進む者へと、哀れみの念を送る。


どんまい、どうでもいいけど。

まあ一日休んでも問題ないし。


「17番、徹三」

「はい」


さて…一時間目は―――








『キーン、コーン…』


「ん、もう終わりか。それじゃあ、このプリントが終わらなかった人は宿題、次回に提出するように。変な事して飯をプリントにこぼしたりすんなよー」


……とは言え、俺の方はプリント終わったから宿題は無いな。

さて、もう昼休みか。


「っ…ふぁー」

「朝は眠そうな癖に、授業中はねないんだな?」

「…ああ」


疲れからだろうか、不愛想な返事をしながらカバンの中を漁る。

そして中からお握りとサンドイッチを取り出す。


「…また俺の机で食うのか」

「良いだろー?」


対して友一も、同じようにして食べ物を取り出す。


…しかしそれは俺と同じようなコンビニ物ではなかった。

そう、あれは紛れもなく弁当だ。

決して容器は使い捨てではなく、中身だってコンビニの匂いが一切しないような、そんな手作りオーラが窺える。


「どうだ? 朝に貰った恋人弁当だぜ」


…頭の中に居る恋人だろうか?

と、行かん。俺はそんなに意地悪な性格ではないが…、そんなことを言う程無情ではないはずだ。恐らく。


「そんな変な目で見るな。嫉妬か哀れみなのかよく解んないぞー」

「自分で言うのもなんだとは思うが、感情が表に出ることは少ないと思うぞ」

「見た目はな。だが俺たちは心でつながふがっ!」


無言で辛口明太子のお握りを押し込む。


「もごもご……っ殻!」

「殻がどうした」

「辛いんだよ!」

「それは良かった」


辛口と言う字を見逃して、ついさっき気付いた辛口明太子。

まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。


「からから~…」

「何やってるの…」


聞き慣れない声に、自然と顔が向く。

ああ、クラスメイトの一人か。しかし名前は覚えていない。


「知らん」

「ああそう」

「もごもご、男子トークってところだゼ!」


バカげた発言を横耳にしながら、当然かのように近くの椅子を持ってきて…、この机に座った。

そうした行動に疑惑の目線を向ける。


「女子の輪のあぶれ者」

「輪?」


その言葉が差すのは向こうの集まりか。

若干遠いが、それでも話し声が聞こえてくる。


「マウスってかわいーよね!」

「マウスよりスチュアートでしょ!」

「いやいやKVの…」


…戦車?


「ああ、戦車ガールズか。確かに普通の女には入りずらいよなあ」

「戦車ガールと言えば私もその一人だけど」

「んあ、なんか悪いのか?」

「話に出てくる戦車が古臭い」


古臭い?

無言で二人の話を聞いているが、古臭いという言葉に疑問を持った。


「古臭い?」

「ええ、臭い」

「それだけだとなんか違えなあ…」


…2人の会話をただ聞いていて、事情を察することができた。

彼女はWWS関係なく戦車を好み、しかしWWSを通じて戦車に興味を持った者とは相性が合わない。

そんなWWSは大戦中の兵器を扱っている。


もう少し簡単に言うならば…彼女は新品戦車ガールで、WWSの中古戦車ガールとは噛みあわない。

…口に出さなくて良かった、例えが悪かった気がする。


「お前もさ、WWSをやればいいんじゃないか?」

「WWS?」

「世界大戦の兵器が出るゲーム。あの戦車ガールズはそのゲームでの戦車トークをしてるんだと思う」


…お握りが一つ、友一の口に消えていってしまったから物足りない。

購買で何か買おうか。


「ああ、世界大戦。道理で古いと」

「知らなかったのか?」

「CMで知ってたんだけどね、あの妙に手抜きっぽいCM」

「あれはあれで良いと思うんだけど…どうだと思う?徹三」


……友一と女性が気付いたころには、徹三はビニール袋を残して席を立っていた。


「何処行った?」

「どうせ購買に腹の足しになるのを探してるんだろうけど…、相変わらず気まぐれなもんだ」

「そ」


気まぐれな猫のように去っていった徹三を待つことはせず、友一は気にしない様子で会話を続けるようだ。


「あ、でもそうすると男女二人か。困ったな、こういう所見られると彼女が怒るんだわ」

「そう」


何をするつもりなのか、立ち上がると座っていた椅子を元の所に戻し、


「邪魔したね」

「おう? ああ、気を使ってくれたのか、ゴメ」


その言葉を気に留めず、さっさとドアを通って行った。

行く先は購買の方、つい先ほど徹三が行った所だ。


「…青春の気配だな。 これは尾行するべき!」


その微妙な独り言は、友一以外の耳には届かなかっただろう。多分








「見つけた」

「…さっきの」


あの現代戦車ガールだ。

彼女は此処で昼食を揃えるのだろうか?


「暇だからね、話し相手になってもらうから」

「俺が?」

「ええ」


俺と話したがる人間だなんて、友一だけだと思っていたが…。

珍しいものだ。ツチノコの生息数と同じぐらいは居るんじゃないだろうか。


とはいえ、UMAを捕獲したという訳にも行かない。


「悪いが、ガールズトークは無理だ」

「求めてない」

「じゃあ一目惚れか」

「何を言っているの?」


真顔で爆弾発言をする俺に、呆れるような顔を…しない。

どうやらお互いポーカーフェイスだったようだ。笑える絵だ。


「テツ! 俺を差し置いてなーに口説いてんだよ!」


突然声が聞こえたと思えば、何故か友一がこっちに来ていた。

ここまで客が多いと、今日の購買は儲かるかもしれないな。


「お前も来たのか。なんだ?その呼び名は」

「第二の戦車ガールの輪が俺らのあだ名決めをしてたんだぜ」


…戦車はどこに行った?


「戦車どこ行った。と言うか第二って何?」

「二年生だったから」

「なんにそれ…」


面倒なツッコミを代弁する彼女に感謝、そういえば名前を知らなかったか。

だがそんな疑問も、狙ったかのようにして友一がすぐさま解決する。


「因みにお前はトラな」

「なぜそうなった」

「あだ名決めが長引いた所為で飽きたみたいだぜ。なんでも、一年生全員のあだ名を決めようとしたとか」

「なるほど」


納得の声を上げて、頷く。

そりゃ一年生全員のあだ名決めなんて面倒だろう。

よく続けられたものだ。


「すごいけど納得できるか!」


頷く俺に反して、トラは迷惑にならない程度に怒鳴る。

まあ良いんじゃないだろうか、このあだ名でも。


「ったく…じゃあアンタはどうなの」

「…爆弾」

「なるほど」


わざわざトーンを落として伝える姿に、空の餌入れを眺める猫に似た雰囲気を感じた。

…自分で思うのもなんだが、言い得て妙だ。


「オレのあだ名は置いといて、トラちゃんは購買に来たのに買わないのか?」

「ざま…んや、私は元々テ…『ゾウ』に用事があったから」

「…誰の事だ?」


察しながらも、足掻く。

いや、おかしい、”テツ”はともかく”ゾウ”はおかしい。

あだ名だからそういうのもあり得るだろうが、おかしい。


「青春の匂いがするねえ」

「っはあ…、で、俺への用事って?」


呆れ半分か、もしくは呆れ四分の三か。

マトモな意見を望みながら訊いてみる。


「うん。確か…そうだ、私にWWSデビューをちょっとばかり」

「デビュー?」


と言う事は、ゲームを買いたいという事か?

しかし、ゲームを一個買う為だけに助っ人を求めるとはどういう事だろうか。

お金をくれとかいう訳でもなかろう。


…ないよな?


「あ、此処からは二人の話だから」

「へいへい、楽しめよう」

「後で落とす」


あの態度がなんだかイラっと来て、冗談半分に言う。

何を落とすのかは言わない。言わないことで脅迫としての効果が高まる。


「へいへい」


…しかし効果はなさそうだ。

確かに友一はそんな性格だったな。


「で、WWSか。助っ人が必要なのはどういうことだ?」

「機械やゲームに関しては鈍くさい、訳解らん、援助を求む」

「はあ…?」


何か台本でも読み上げてるかのように、声調も意思も真っすぐとなっていた。

唯一、その目線はぽっきりと折り曲がっており、その先は彼女が持つ紙片だった。


なるほど、大根か。

その事が分かった上で、幾つか疑問をぶつけてやる。


「なんで俺が?」

「運命を感じた」

「その紙は何だ?」

「台本」

「なるほど」


その台本を書いた奴に問い詰めたい。

もし出会えたならば、”表に出ろ”という言葉が真っ先に出るだろう。


「筆者は?」

「私」

「よくわかった、表に出ようか」

「外は雨」

「…なるほど」


ものすごく変な人間だという事が、よーく分かった。

関わらない方が良いかもしれない。


「どこの誰だかは知らないが、他の優しそうな人が居るんじゃないか? 購買のおっさんとか」

「それじゃあ購買で売ってるの、何か奢るから教えて」

「…何が何でも俺に教わりたいんだな」


否定の意思を伝えても、彼女の意思の方が打ち勝っているように思えて、面倒だと感じた。


「因みに3ケタ以内で」

「…」


一考。

3ケタ以内。それで何を奢ってもらうか?

…というか、女子から奢ってもらうのは男としてどうかと言われそうだ。

俺のプライドに障る事にはならないだろうけど。


…まあ、そうだな。


「解った、教える。その代わりホッチキスの芯を奢れ。丁度足りないんだ」

「うん、ありがとう」


…まあ、ホッチキスの芯と引き換えに案内するだけだと思えばいい。

そうだ、うん。これでいい。


「まずは…パソコン版が良いか? PZ4?」

「何が違うの?」


……1から教えるのか?


「…はあ」


面倒な…。

今教えるにしては手間がかかりすぎるし…。


……どうやったって時間がかかるか、今は無理だ。


「…説明には時間がかかるから、放課後にでも説明する」


時計を見ながら、問題を先延ばしにするのが精いっぱいだった。

御感想、御指摘、是非書いてくださるとありがたいです。


次回は…すこし時間がかかりそうな気配がします。


改訂・あだ名のくだりに不自然な点があるのに気付いたので、修正しました。

改訂2・一部、主人公の名前が初期構想時の物になっていたので、修正しました。 申し訳ないです

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