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始まりの章
周囲の気温が著しく下がっているせいか夏場にも関わらず吐く息が白い。
「高等氷冷魔法か……」
思わず口に出してつぶやく、そうでもしないと体が凍えてしまいそうだった。
数多の屍鬼の群れを一瞬で全滅させたその威力には感服する。
しかし、周りのことを考えないのはどうにかしてほしい。
「どうよ、この威力!」
俺の近場に降り立って親指を立ててガッツポーズをする、その自信満々の笑みはどこから来るのか知りたいがどうもその攻撃力だけで判断してほしいらしい。
「威力だけで言えばSクラスの氷冷だが……問題点が他に多すぎる……」
なるべくやる気を削がない程度に褒めつつ問題点を指摘する。
彼女とは長い付き合いだが適度に褒めないとすぐにやる気をなくしてしまう。
「えー、なんでよ!」
彼女は大げさにリアクションしつつ頬を膨らます、昔に比べれば表情は豊かになったと思う。
しかし、それとこれとは別の問題だ、彼女には才能がある。
それも常人とはかけ離れた才能が……