鳥歩き
大きな管理釣堀に来ている。
だいたい、サッカーコート四枚分の広さの溜池だ。
水の上を十二分割するように橋が架けられている。
その橋の上が、釣り人が歩いたり座って釣りをするための場所だ。
今日は平日なためボクが座っている橋にはほかに三人も座っていない。
それに加えて暖かい気候のせいもあり、開始から二時間たらずで二十枚近く釣れている。
釣り上げたヘラブナのクチから針をはずし水の中へ戻したとき、座っている橋が大きく軋んだ。
近くにある定食屋のおじさんがお昼ご飯の注文でも取りに来たのかとも思ったが、いつもとは足取りが違う。
針に餌を丸めて池に投げ、足音に目を向けた。
女の子が歩いてきている。
全身をつつむ真っ白なコート、おそろいのケープはファーがたっぷりとついている。
それだけでも充分に特長的だったが、それと同じくらい目立つ帽子をかぶっていた。
『ウシャンカ』にも見えたが『パパーハ』、いや『シャプカ』だったかな。俗に言うロシアン帽だ。
そんな女の子が、ご機嫌な歩調でスキップをしながらリズムをとりつつこちらへ来る。ときおり、くるりと体を回転させたりもした。
そのとき、ウキに反応があった。
見逃すことなく、引っ掛け、引き寄せ、網ですくう。
重さ、形ともになかなかのものだ。
足音は近づいていた。
ふたたび女の子を見るとすぐそこにいた。
近くにきたことで気づいたが、女の子は金髪で色白の外国人だった。
そして、手からパンくずを撒きながら歩いている。
今まで気づかなかったが、女の子から距離を置いて鳥が付いて来ていた。
数えきれないほどの多種多様な鳥の群れだ。
白鳥、ツル、インコ、ワシ、ペリカン、コウノトリ、アルバトロス、ニワトリ、名前のわからない鳥が女の子の後をついてきている。
パンくずが目当てのようだ。
女の子がボクの後ろを通り抜け、鳥がボクの後ろを歩いていく。
鳴きたてるようなことはなく、羽音と足音だけを立てている。
鳥の群れの最後尾にはペンギンがいた。
ヘラブナのクチから針をはずした。
親指と人差し指の側面で挟むようにヘラブナの尻尾を握る。
ひじから先だけを使い手首のスナップを効かせて投げつけた。
ブーメランを投げる要領だ。
ヘラブナは勢いよく回転しながらペンギンへ向けて飛ぶ。
ペンギンが気づき、くちばしを開けて待ち構える。
はいった――
そう思った瞬間、横から来た何者かにヘラブナはかっさらわれた。
カッコウだ。
その日からボクはカッコウを憎悪するようになった。




