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異世界喚ばれた俺のチートがエロ本召喚  作者: うただん
第一章・異世界喚ばれた。
7/37

7・「小便をしたいのだが、どうすれば良い?」

次話、投稿します。



 睨みあい。

エリオースとカレンドロと呼ばれたおっさんが火花を散らす。


(私をめぐって争うのは止めて!)


と思わず言いそうになるが、ぐっとこらえてエロ本を読む。

『性騎士リリオーネ』はテンプレートながら、女騎士物である。

様式美が全て詰まっており、我がエロ殿堂ボックスから時折持ち出しては、お世話になっていた殿堂入りエロ本のひとつである。

エロ本について何か突っ込まれたり、チートを疑われたら嫌だなぁと暢気に考える。

今のところ、俺にはこのエロ本、エロゲを喚びだすことしかアドバンテージが無いのだから。


そう言えばと思い、隣の檻を見遣る。

当たり前だが、カレンドロの威圧を受けて、マギーは眠りから強制的に起こされていたらしい。

今は真っ青な顔をして檻の端でがたがた震えていた。


「落ち着け、マギー。

 カレンドロはもう良い歳だが童貞なんだ。

 きっと普通に人に接する為に必要な何かが欠如しているんだ、わかってやれ」


良い歳っていうのがこの世界では幾つくらいからかはわからないが、異世界ではセカンド童貞と最早言ってもいいぐらい、二人目の女性との縁が無かった俺は心の中でそっと泣いた。

もう止めて!俺の精神ポイントはゼロよ!くらいは、言わせていただきたい。


ぷっ。

エリオースが噴出す。

それをきっかけに興を削がれたのか、カレンドロが小さく舌打ちをする。

おい、エリオースお前俺の心の中覗けるわけじゃないだろうな、まさか。


「エリオース、間もなくガリオンの峠だ。

 峠を越えれば、神都まですぐだからな。

 お前の命はそこまでだ。

 精々、異教徒共と仲良くしておくが良い」


捨て台詞を残して、馬車を去るカレンドロ。


まもなく休憩も終わったのか馬車が動き出すと、檻の中は静寂に包まれた。

あ、いや正確に言うときっとカレンドロ辺りが外に出た後部下に伝えたのだろう。

エリオースの、俺の召喚本の攻撃によって解かれていた拘束がより一層頑なに施されていた。

どこから持ってきたの?といわんばかりの……所謂、アイアンメイデンのような棺っぽい金属製の拘束具に変わっていたのだ。

だから今は物音一つしない、そんな馬車の中なう。

これで喋れるようなら、もうお前一人で脱出できんじゃね?と突っ込みを入れたくなるところだ。

ちなみに、俺の手には何故か手枷が追加されていた。

すでに手枷足枷はついていたのだが、今度は物々しいオール金属製の何か幾何学模様っぽいものが彫りこんであるものだ。

どうやら魔法を阻害するような仕組みらしい。

本が少しだけ喚びだしにくくなっていた。

まあ、全く喚びだせないわけじゃないんだけど。


さておき、すっかりと起きてしまったマギーと特に話す内容も無かったのだが、気になったことを聞いてみよう。

軽い気持ちで口を開ける。


「マギー、ガリオンの峠って?」


「ガリオンの峠は、西から聖都ヴァーレーンに到る唯一の峠です。

 その峠を越えると、断罪者の丘と呼ばれる小高い丘と砦があります」


マギーは先ほどのカレンドロの威圧がまだ効いているのか、寒そうに肩を揺らしている。

手枷のついた両腕では肩も抱けず、その様子が少し可哀想で何か出来ないか、思案を巡らす。


「……その断罪者の丘では、異教徒が毎日何人も何人も処刑されていて……つまり、私やケイさんはそこまでの命ということになります」


俺より2ヶ月もこの鬱屈とした檻の中で処刑までの時間を過ごしてきたのだ。

マギーは取り乱すでもなく、淡々と自分の命の残り時間を告げた。

或いはそう見えなかっただけで彼女の中では恐怖との戦いは続いているのかもしれないが。


「わ、私はともかく、たまたま喚びだされただけのケイさんまで処刑なんて……

 しかも、エリオース司教は、聖都での審判に拷問が待っているのでしょう。

 私たちはただ異教徒であることを告げられて、火あぶりか、断頭か……さほど苦しみも無く処刑されるのですが、司教は背教が加わります……ので……」


静かに嗚咽を漏らすマギー。

俺やエリオースの行く先にも涙してくれているのか。

俺はともかく、あいつ、変態だからそんなに気にしなくていいんだぞ?

と思わなくも無いが、そんなことを言える雰囲気では無い。


「マギー。

 カレンドロと言ったか。

 性奴隷にでもなれば、罪の軽減があると言っていたが、それは本当か?」


「私には分かりません。

 ですが、ヴァレネイでは性奴隷のみならず、奴隷に落ちること自体が人ではない扱いの身分であると言われています……」


「まあ、亜人種ってだけであれだけ差別政策を敷いているんだ。

 奴隷となりゃ、きっと人では無いんだろうなぁ……」


異世界に来て、いきなり性奴隷エンドってのもなぁ。

たとえこの命が複製されようとも、命は命だ。

幸いにして、エリオースが俺をこちらに召喚した術のオリジナルを使える素養はあるようだし、まずは何とかこの危機を脱して元の世界に帰る方法を探ろう。

出来れば、マギーは一緒に救ってあげたい。

エリオースは……まあ、自分で何とか出来そうではあるが、一応、召喚術についてもう少し詳しく聞かなきゃいけないしね?

よし。

とにかくも、俺の第一目標は生き残ること。

最終的には元の世界に戻ること、だ!

そうとなりゃ、自分の出来ることは何か手探りではあるが、色々と試してみようかな。

まあ、明日からね。

うん、明日から。


マギー、続いてエリオース、最後にカレンドロとの会話でずっと喋り通しだった為に眠気に抗えず、俺は意識を手放した。


□■□■□■□■


ぶるっ。


寒気を感じて目を覚ます。


誰かの威圧とかじゃない。

あれだ。

尿意だ。


30歳を過ぎ四捨五入をすると40歳の頃になるとトイレが近くなった。

寝る前にお酒を飲んだりすると特に顕著だ。

昔は、寝たい!という欲求に素直に従って、通勤時間ぎりぎりまで寝ていられたが、ある時からトイレに行きたくなって目が覚めるなんてことが頻繁に起きるようになった。

トイレが近いというだけじゃない、尿意がコントロールできないとも言い換えられる。

寝る前にトイレ行っとけば良かったー、なんてレベルじゃなくなる。


向こうに居た頃は自分も年を取ったものだ、と感じながら目を開けたものだ。

だが、この今感じている尿意はまた、別だろう。

檻に入れられてから、1日以上が経とうとしている。

むしろ今までよく保ったものだ。


「やっぱり、状況は変わらないか」


相変わらずの鉄格子、見飽きた天井だ。

そういえば、尿意を感じてみたものの……どこですれば良いんだ?


マギーに聞いてみようと思い、隣の檻を見る。


その瞬間、馬車の幌が開く。

だいぶ傾いた太陽が一日の終わりを示唆しているのだが、そんなことよりひざを抱え、涙の跡を残しながら寝ているマギーの横顔が初めて見えた。


暗い赤毛を三つ編みにしており、茶色いローブを着ている少女。

鼻は高く、つむってはいるが目のラインがきっちりとして、睫毛が長い。

鼻頭には少しソバカスがあるものの、白い肌は透き通るようであり……

ここに妖精さんがおるで!

と声を大にして言いたいくらいの可愛い少女が居た。


いやぁ、眼福眼福。


「おい」


尿意なんてどこかに吹き飛んだわ!


「……おい、エルフ!」


「うっさいわ!」


思わず突っ込む。

マギーを起こさないように小声で。


振り向くと、そこに幌を片手に上げてこちらを覗く少年が居た。

この傲岸不遜な感じ!

エフェクトを入れるなら、あれだ、ニュータ○プの感応音みたいな。


「お前、ディオネーズか?」


奴は声に出さずただしっかりと首を縦に振った。

どうやらディオネーズで正しいらしい。

でもまあ、ちびだちびだと思ってはいたが、ショタだったとは。

あいにく俺にはショタだのロリだのは引っかからなかったので特に興味は無かったが、そのあたりの造詣が深い友達に言わせたら垂涎物なんだろうな。

そんな……いわゆる西洋のお子様の……ここに天使がおるで!を体現したような少年は、何かを言おうとしては口を噤み、また言おうと試みていた。

こういう所作がきっとショタを愛でる会会員の『おねえさま』方の心を掴んで離さないのだろうなどと思いつつ、助け舟を出してみることにする。


「おい、ディオネーズ、トイレ……あー、そのなんだ、小便をしたいのだが、どうすれば良い?」


仮にこの肉体に俺自体が憑依?とでもいうのか、入っているとして自分の表情がうまく動かせているか分かりかねるのだが、これまでの人生の中で飛びっきりの爽やかであろう笑顔を浮かべサムズアップをしながら、俺は思った。

あれ?

これやっちゃった?


ストックがすでに枯渇しつつあります。

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