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異世界喚ばれた俺のチートがエロ本召喚  作者: うただん
第三章・異世界なのにドラゴンが居ない件。
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1・「良い子にしていたら」

お久しぶりです。ようやくと一ヶ月に渡る現場が終了して一ヶ月ぶりの

お休みが取れたので、次話投稿します。

 俺は今、北へ向かう馬車に乗っていた。

無理やりに荷台に乗せられた俺は未練がましく南の方、つまりは進行方向の反対側を向いて、荷台の縁を掴んでいる。


「なんでこうなるんだよ……」


呟く俺の左腕に、当ててんのよ状態のカレン。

てか、カレンさん?

息荒く、どうして俺の左上腕にお胸を擦り付けていらっしゃいますか?


「お姉さまぁ」


俺の調教によって完膚なきまでに陥落したエルフさんは俺からカレンという名を貰い、俺を姉と呼び慕っている。

調教というが意志無く死に向かっていた身体を治療するには仕方なかった処置だったんだ! だったんだってば。

ともあれ、白かった肌は褐色となり、髪の毛も白色……俺の調教によって体調を元に戻してからはどちらかというと銀に輝くその髪に、色に溺れた顔はまさにダークエルフ!!


「あのさ。カレンってダークエルフなわけ?」


「え?闇エルフですか??

 闇エルフは、光当たらぬ洞穴の奥や深い森林の最奥に住まう一族のことですが……私は、元々湖エルフですよ?」


「闇エルフの肌って……」


「エルフの中では病的な程の白さであると聞いたことがあります」


「あー……じゃあ、湖エルフってのは、そんなに肌が日焼けしてるのか?」


「え……この肌は、お姉さまに刻んでいただいた愛の印ではないですか……いやんっ、それ以上は、あ・と・でっ」


今、間違いなくはぁとが着いていたよね!?

と言わんばかりの上目遣いでカレンがもじもじする。


「めんどくせぇ……」


「放置プレイですかっ!ああん、そんなお姉様も素敵っ」


ていうか、プレイって、翻訳されずにそのままなのな。


「はぁ。

 カレンはさ。湖エルフなんだろ?

 これから、北の国エベンデリスに行くみたいなんだが、故郷に帰りたい?」


あの後。

リオーマンを魔物が跋扈する土地とし、魔物の王、つまり魔王を作り出した俺は、対魔王としての勇者の役目をアンジェロに与えた。

たまたまだけど、リオーマンに伝わっていた王家の宝剣を聖剣として、アンジェロに過酷な運命を背負わせたことになる。

魔王と勇者という構図は、しかし親と子という構図でもあり、親殺しの宿命を負わせてしまったことに後悔を感じなくは無い。

しかし、彼の望みであったカレン……今となっては旧名も分からぬこのかつての聖女であったエルフの少女を救い、かつ、彼の父親や兄たちの願いを叶えてあげたという思いもある。半ば、自身に言い聞かせる言い訳のようなものではあるが。

俺がこの世界に落とし込んだこの結末に、心の表層上では折り合いを付けている、つもりだ。


「カレンは、お姉様とずっと一緒に居ます!」


無垢な……その表現が正しいかは別として。

太陽を一杯浴びる大輪の向日葵のような笑顔を浮かべてカレンが言う。

そんなカレンはしかし、湖エルフとは全く別の存在となったのだろう。それは、俺が図らずとも口に出した闇エルフという種族とも違う、ダークエルフという新たな種として。


「ごめんな。

 俺は、お前の人生を変えてしまった」


ハテナマークの浮かべたカレンの頭をそっと抱き、この世界に少なからず俺が与えた影響に思いを馳せた。


「……もうすぐに、エベンデリスに渡る船の待つ漁港ヘルハストです」


二人の会話に割って入ったのは、見目麗しい優男ヴィンガスト。

本来は女性に使いたい表現である"見目麗しい"、分かっちゃいるけど衝動的に使いたくなる、エルフも裸足で逃げ出すくらいの美形な男だ。

まあ、寡黙な上にきゅっとへの字に結ばれた口元が近寄りがたい雰囲気を纏っているのがまた……渋い!

声も低く、弟が死んだことを国威発揚の演説に利用する兄が発しそうな、そんな声と雰囲気が良い。

そのヴィンガスト曰く、エベンデリスの使者として、四代目聖女としてのエルフ……ま、俺なんだが……のお披露目に友好国の使者として臨席していた彼の最重要任務。

北の島国エベンデリスが王、ガートフェンザー一世の婚約者マールレーンとその血族をあらゆる困難から保護せよ、との命だったそうだ。

どうもエベンデリスでは聖女のお披露目に合わせ、ヴァレネイ聖王国が侵攻を再開する情報を得ていたらしい。

てことは、異世界初の魔物との戦いはきっとヴァレネイの聖騎士が体験するだろう。

自らの領域を侵されなければ、魔物たちは積極的に人の住まう街や村を襲うことは無い。

俺が、そういう概念を植え付けたからだ。それはしかしヴァレネイと繋がる()エステカリオン平原、今はエステカリオン樹海とでも呼ぼうか、その領域に侵攻してくるであろうヴァレネイには適用されない。

エステカリオン樹海は今や、魔の森と化し自然には生まれない歪な獣……まあ、ファンタジーお決まりの魔物を生み出す魔境となった。

それを、そうなるようにと、種子を与えたのも俺なんだが。

あれ。俺って、ひょっとして邪神っぽい?

漠然と取りとめもないことを考えていたが、改めてこの馬車の向かっている先を思う。


「ヘルハストかぁ。

 あ、運転手さん、俺はそこまでで良いから、そこで降りるからね」


タクシーの運転手にでも言うかのごとく気軽さで、さくっと願望を口にする。


ヴィンガストは無口。

マールレーンはにこにこと笑うのみ。

必然、対するのはアンジェロ。


「え、だめです!

 ガートフェンザー王は余の義兄となるお方。その方に大恩人であるケイ様をご紹介しなくてどうするのですか。

 それに……」


そういって恥ずかしそうにカレンをちらちらと見遣るアンジェロ。

なんですか?と言わんばかりに笑顔で返すカレンにアンジェロの顔が上気する。


「カレンは、お姉様と共に行きますよ?」

「あらあら。

 アンジェロの初恋は厳しい戦いになりそうですわね」

「お、お姉様っ、余は別にそのような……」


最後はごにょごにょと語尾を濁したアンジェロに優しく見守る姉、マールレーン。

エベンデリスに渡ることで身の安全を確保できそうなこの姉弟についてはそれで良いとして、カレンにも一度故郷に戻って欲しいと思っている。

いや、待てよ。カレンの故郷か。

南大陸に渡る前に湖エルフの里に行って何かしらの情報を得ておくのも有りか。

南大陸にすぐに向かえないなら、少しでもポジティブシンキングしなくちゃな!

と、ここで俺は思考を切り替えた。

正直、マギーやミーニャ、アーテたちを南大陸に向かわせた手前心配ではあるし、こちらも心配を掛けているだろうことは簡単に想像できる。

だが、今のこのエベンデリス行きが覆しにくい状況ではその想像を心のどこかに押し込んで次のことを考えるようにする。


南へ続く空を見上げて俺は、手に持った一匹の鳩を空へ放った。

鳩の足には『遅れる、後で必ず追いつくから』の短文を書き示した手紙。

何時の間に? 後で種明かしするからちょっと待ってな、と一人ごちて何故か羨望の眼差しで俺を見るカレンの頭を一撫でしておいた。

とかく、この世界に召喚されてからは、心の中での独り言が多くなった。


「あれが、ヘルハストです」


遠く空へ飛んでいく鳩を見送っていると、ヴィンガストが道中殆ど開かなかった口を開いて港への到着を告げた。


□■□■□■□■


「マールレーンよ、無事であったか!」


港に着くなり、大手を振ってお出迎え。

ガートフェンザー1世その人である。


「いや、てか、国を空けて王自ら来んなよ」


ぼそっと突っ込みを入れる。

カレンは俺の突っ込みが聞こえたらしく、きょとんとした顔。


それ以外、正確に言えばマールレーンとアンジェロを除くヴィンガスト、それに王の供であろう人々が全て膝をつき頭を垂れていた。

そんな状況でマールレーンを迎えたこの大男……ガートフェンザーが許嫁であるマールレーンの無事を祝いはしゃいでいるのを俺は遠巻きながら腕組みし見ている。


「おい!そこな女!

 王の御前であるぞ!」


そりゃ、こんなことを言う輩も出てくるだろうな、と我ながらの迂闊さを後悔しつつも、空気を読んで膝を折ろうとした。

あの、カレンさん? 俺の右腕に掴まりながら、そんな目線を飛ばさないでいただけます? 相手に向けた殺気がこちらまで伝わって来るんですが。

射殺すような目線を向けられた男がたじろぐ。

まあそうなるよな、と思いつつ面倒なことにならないようカレンの頭をぐっと押さえる。


「カレン、良い子にしていたら、ご褒美を上げるよ?」


一発である。

カレンは即座に陥落した。堕落したと言っても良い。

えさをお預けにされた犬のようにおとなしくなったカレンは期待の眼差しを向けて抵抗を止めた。


「あー。俺の部下がすまんなっ!

 む。もしかして……

 リオーマンの聖女殿と見るが相違ないか?」


こんなやり取りをしていたらそりゃ注目もされる。

マールレーンとの邂逅を喜んでいたガートフェンザーが俺、というかこの場合はカレンにだろうか、気付いてのっしのっしと歩み寄ってきた。

しかし、このガートフェンザー、身長が2メートル近くあるんじゃないだろうか。

ブラウンの長髪をオールバックにして、立派なもみ上げ、青い目には目力たっぷり。おまけにうっすらあご割れてる。

脳筋ぽいなーって思っていたら意外とそうでも無いらしい。


考え事をしていた俺の手をそっと両手で握り、片膝を折りその両手を自らの額に付けたのだ。

どういう意味があるかは分からないが、仮にも王と呼ばれる人物が片膝をつくなどあってはならないのではないだろうか?

ほら、後ろの臣下の皆様が驚愕してるし。


「あ、えっと?」

「お姉様に触れないでくださいませっ!

 ガートフェンザー王!」


カレンがいち早くこの状況に気付いたのか、俺の腕を引っ張りこの儀礼が終了する。


「おや……ほう。

 肌の色が違うが、ひょっとして先代の聖女殿かな? 今代の聖女殿に加え先代の聖女殿も居られたか。

 これは重畳っ!」


ガートフェンザーがにかっと笑う。

カレンは俺という存在を取られないようになのか、まるで獣のように喉を鳴らして王を睨んでいる。

ていうか、このガートフェンザー、声がでかい。とにかくでかい。

しかも、がなっているのではなく、腹の底からだしているか如く、張りがあってどこまでも通る声だ。

お前は声優か、と心の中で突っ込みを入れつつ、この状況を脱するべく助け舟を求めてマールレーンやアンジェロを見遣る。


「王っ!

 如何な同盟国の聖女殿であろうと、そのように気安く、親愛の礼をするものではありません!」


いや、俺が見たのは、お前じゃないからね?

先ほど俺達に失礼を咎めた男が我先に歩み寄ってくる。

早足ではあるが、けして走ってこないあたり、この人はきっと礼とかそういうのに煩い人なんだろうなぁと思ってしまった。


「オーネイ、美しいものを愛でるのは当たり前のことだっ!

 ほら、お前も聖女殿をよく見てみると良い。……美しいだろ?」


暢気な台詞を吐いて再び俺の手を取ろうとするガートフェンザー。

そこにカレンが取られてなるものかとばかりに、その手を払う。


ぱしっ。

手を払うには大げさなほどの大きく乾いた音が広場に広がった。


「貴様っ!」


そりゃ、抜刀もするよ。

目まぐるしく状況が一方的に進む中、俺はカレンの肩を抱いて、ぐっとこちらに引き寄せたのだった。

来週からぼちぼち更新頻度を戻していきたいと思います。

感想、誤字脱字誤用ご指摘お待ちしております。

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