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異世界喚ばれた俺のチートがエロ本召喚  作者: うただん
第二章・俺のチートが自重しないんだけど。
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6・「芸術的な筋肉だ!」

次話、投稿します。

 今は遠い故国、現代日本の皆さん、お風呂は好きですか?


ゆっくり浸かるお風呂は好きだが、日々の汗を流すだけの行為という意味ではあまり好きではない。

シャワーのみの清掃活動で汚れや匂いを落とす作業に没するルーティーンは好きではないが、1ヶ月に一度とかそんなスパンでイベントのように行く銭湯や温泉、サウナは好きだぞ☆ということだ。


と我ながらいきなり何を言っているのか自分でも分からない状態で、俺は捕縛されていた。


湖上都市ヴァレビナン。


湖上に浮かぶ浮島?に立てられた大きな都市に驚いた。

島の土の上に立てられた上等区……まあ、施政者の住む地区と貴族区、それに豪商が住む地区に比べ、湖上に建てられた一般区、ボート等で構成された下民区の違い等にまあそんなもんだよなと理解もした。


だけど、浮島のほんの端っこに引っかかる程度のちょっと良い感じに宿飲食店などが集積した地域で。

この世界初めての銭湯に行ってみた先で。

何故か俺はこうして捕縛されている。

この結果に俺自身も上手く説明できるのか自信が無い。


ことの始まりはこうである。



「マギー、俺大丈夫かな?」


「大丈夫ですよ!

 ケイさん、どこから見ても旅人に見えますもん!」


「いや、ローブを羽織っただけなんだけど」


「その下はスクミズ?だっけ、それ一着なんだけどなっ!」


マギーが手に入れてくれたローブを羽織り、俺達はヴァレビナンに潜入していた。

潜入というと聞こえは悪いが、この世界、冒険者ギルドなどは無いので身分を証明するものは無い。

であるからしての入場税での入場方式である。


先に捕まえた襲撃者の持ち物やケルビン、バークレイ(旧名)の喜捨により、俺達はこの世界の貨幣を僅かながらに手に入れていた。

え、ほんと喜捨だよ?

滂沱の涙を流して差し出してくれた貨幣や持ち物は喜んで俺達に恵んでくれたものなんだよね?


一日平均1000名程度が出入りするこの湖上都市で、身分だの何だのと調べるのはとても煩わしいらしく、入場税として10枚程度の銅貨を払い俺達は街に入ったのだ。

銅貨はちみっこい銅板の欠片、僅かながらに発行国の刻印とかそれらしき彫刻があしらわれているものだ。

それがだいたい30枚程度で3日分の食料費、銅貨100枚で銀鉄貨1枚に変わり、銀鉄貨100枚で銀貨に変わる。

銀鉄貨9枚未満で一ヶ月の生活水準だそうなので、おそらく一か月というのは30日くらいなのだろう。


久々に異世界らしい考証をしたなと思いつつ、下民区、ゆらゆら揺れるボートハウスのような物が林立する区を抜けてボートよりはまし程度の浮地の上に建てられた平屋が立ち並ぶ一般区の隅っこで今夜の宿を見つけた。


宿を見つけて、一旦部屋に入る。

オール雑魚寝みたいな部屋を想像したが簡易な造りのベッドが4つ並ぶ意外と普通の部屋だった。

人が歩くと揺れるし、波を受けてなのか定期的に揺れるし、なんか安い家賃のボロアパートという感じではあるが、異世界初めてのベッドにちょっとだけテンションが上がる。


それで今日はどこかで飯を食べて、寝よう、本格的に動くのは明日にしよう、そうしようと自分の中で決意を固めた時だ。


「よし、湖上都市名物、お風呂屋に行こうぜ!」


もろくも俺の決意が崩れ去った瞬間であった。


ミーニャの一言により、実はお風呂に行くのが初めてだというマギーも物珍しさから賛成、俺は言わずもがな、満場一致で銭湯行は決定した。

後は宿の受付に言って、お風呂屋の場所を聞くだけだ。

あ、ちなみに銭湯は通じず、お風呂屋って言ったら通じた。

銭ていう概念が通じないのかなぁと思いつつ、そういえば俺の召喚は次のレベルが概念召喚とかだったよなぁと思い出す。

からの。

ケルビンとバークレイの様子をちらと覗き見る。

彼らは今、あの異空間の中で悪の大首領様お得意の人体改造を受けている。

っても触手で模した大きな円筒形のガラスっぽい容器の中で培養液っぽい何かに浸かっているだけだけど。

「特捜天使ジャスティスナイツ」(ジャマイカ?作・2012年)で主人公たる悪の大首領様が憎き仇敵ジャスティスナイツの皆様を捕縛、洗脳、人体改造していくのだがその一部分を利用させてもらった。

ちなみにジャマイカ?というのは俺の記憶があいまいなのではなく、ハテナマークまで入れてメーカー名だったりする。

さておき、ヒロイン陥落エンディングの一つにヒロインに獣耳生やさせてはべらせるエンドがあったから出来るだろうと高を括って成行きを見守っている。

しかしながら、本当に出来たのなら俺の召喚魔法はどこまでチートなのだろうと空恐ろしくもなった。

まだまだ人の形を保っている二人を見て、そのうち名前も考えなきゃなと思いつつも意識を戻した。


あっという間にお風呂屋さんの前である。


湖の上だからか豊富な水量を背景に、ヴァレネイと違い魔法がまだ庶民の手にも伝わっているヴァレビナンではお風呂文化が名物となっているらしい。

こうして庶民でも銅貨3枚程度で入浴出来るのだから、実に素晴らしい。

湯をどうやって沸かすのか、清潔は保てるのか等現代日本人にとっちゃ気になる点もあるのだが、魔法があるから!と納得しておくより方法は無い。


すぽーんと白スク水を脱いだ上に隠すようにして送還して消す。

意を決して、お風呂場の扉を開く。


うむ。

ビバ女湯天国。

ま、幼女からお婆ちゃんまで老若揃えておりますが、TSしたらやってみたいことリストが一つ埋まったので良しとしよう。

これで現代日本だったり、後、自在に男に戻れたらなぁとしみじみ思うも、お湯をかぶったら元に戻れないかな等とも考える。

あれ、逆か?

てかこの状況で戻ったら、速攻おまわりさんこいつです、だよな。

……おまわりさんって居るんだろうか?


感慨に浸りながら、手桶で掛け湯をする。

さすがにこの流れはお風呂がある文化として共通らしい。

周りの皆様もお風呂に浸かるときは必ず掛け湯をしていた。

そうして、木造りの風呂桶に足を掛け、ゆっくりと身を沈めていく。

ここでエルフとばれるわけにはいかないのと髪の毛が長いことも相まって、手ぬぐいで頭を耳ごと包んで正体がばれないよう気を使っている。

耳が隠れるというのが少しもやもやとするものの、湯に浸るという快感を思えば少しの我慢だろう!

と、そこで自分の胸部の違和感に気付いた。


浮いてる!


ひょっこりひょ○たん島やで!?


いや、テンション可笑しいな。

などとセルフ突っ込みを入れつつふふと笑うと身体をぐっと伸ばした。


お風呂に入らないでいる人たちは、石鹸がおそらく貴重なものなのだろうか、身体を布で拭いている人、丁寧に髪の毛を櫛で梳いている人、香油だろうか、身体に何かを塗りこんでいる人などいろいろな人が入り混じっていて、俺にとってはおっぱいがいっぱいヘブンであった。


最初は恐々と足を入れたり出したりしていたマギーも今では、はふぅーと息を吐きながら湯に浸かりこの快感をかみ締めていた。

あれ、そういえばミーニャは?

そう思い湯煙かかる女湯の中を視線を動かしミーニャを探す。


「へっ、あたしの方が鍛えられた実践的な筋肉さね!」


「なにをっ、見よ。

 私の方が、計算され無駄なく鍛え上げられた芸術的な筋肉だ!」


ミーニャの声とそれに相対するように聞こえる凛とした声。

それが今回の騒動のきっかけだった。


□■□■□■□■


ミーニャはガテン系っぽく健康的な小麦色の、日に焼けた肌を惜しげもなく晒して主に上腕を目立つようにポージングしている。

対するもう一人の、凛とした声の持ち主は声に負けず、すらっとした長身で鼻筋もよく通ったクール系のお姉さん。

対照的に色は白いが肉体は引き締まっており無駄な脂肪は……そのお椀型のお胸以外については居ない。

ミーニャもあれはあれで小ぶりではあるが形の良い、良いおっぱいなんだよなぁ。

等と考えていると筋肉自慢は何故か、第二ラウンドの力自慢へと移っていたらしい。


周りが囃し立てているのも原因だな、あれは。


「隊長!わたしら、ヴァレビナン白鳥騎士団の名に懸けてそんな野蛮人に負けないでくださいね!」


と、わりと物騒な内容が聞こえる。

うん。

逃げよう。


我関せずな顔をしてそーっと湯船から足を出し、抜き足差し足で扉に向かう。


「お、ケイ!

 どうだ、あたしの方が立派な筋肉をしてるだろう!?」


「なに!?

 そこな女!仲間かっ!」


仲間だからなんだよ、でーさーせーろーよー!と言う間も無く俺は恐らくは白鳥騎士団の団員であろう皆様に囲まれた。

周りと囲むおっぱいたち。

うん、ハーレムゲームでこんなシーンあったよね。

なんでこんなに物騒な視線を向けられているのか。

エロゲのシーンと今の場面でどうしてここまで差がついてしまったのか。

慢心、環境の違い……

って、現実逃避している場合じゃない。


「いや、アタシ、ナカマ違うよ?」


出てきたのは片言である。

ここは勢いでごまかすしかっ!


「おいっ、お前たち、騒ぎを大きくするっ、ぺぐっ!」


あーあー。

部下達を止めようとしたのだろう。

隊長さんはミーニャとの力勝負を一旦お預けにし、こちらの喧騒を止めようと一歩を踏み出した瞬間、落ちてた手ぬぐいに足を滑らせた。

結果、この大股開きである。

この隊長さん、結構どじっ娘なんだろうなぁとしみじみ思った。

げらげら笑うミーニャ。

激昂する騎士団の皆さん。

あとは取っ組み合いのキャットファイトである。


そうして30分後。


着替え終えた白鳥騎士団の隊長さんとその仲間達に、何故か捕縛された俺とミーニャ。

ミーニャは顔に一発あざを作っているが、騎士団の皆さんは割りと傷だらけだったり。

そりゃ、捕まるわ。

過剰防衛ですよ!ミーニャさん。

こういう時にそう言ってたしなめてきそうなマギーには、前もって無関係を装ってもらい俺とミーニャの私物だけ先に確保してもらってある。


「おい、女!

 頭の布はもう要らないだろう!」


と団員さん。


「ダメヨ、コレアタシタチ部族のオキテ、結婚マエはトチャイケナイ!ダメ!」


とりあえず片言で通す、意地でもだ!


「おい、ふざけてるんじゃな……」


なおも警告を出そうとする団員さんを隊長さんがそっと止める。


「いや、過剰防衛とはいえ彼女は巻き込まれただけだし、なんらかの掟というのであればしょうがない。

 それに……それで婚期を逃してしまっては、我々は更なる咎を背負うことになる」


最後の方は普通の人には聞こえ辛いくらいの小さい声だったが、俺にはばっちり聞こえた。

その後も、あの時親の勧め通り見合いをしていれば、とか、剣ばかりでなくもっと女としての修行をしていれば、とか色々と後悔を漏らしてらっしゃった。

それが、大体、男も見る目がない、みたいな批判じみたものにスライドしたところで俺達は大して遠くも無い距離にあった詰め所らしきところに連行されてしまった。


これが冒頭の状況である。


詰め所では簡単な調書を取られ、一晩拘留ということで牢屋に入れられてしまった。


ちなみに調書は木の板に木炭かなにかでがりがり文字を書いていた。

ケルビンたちも言っていたがこの世界では紙はまだまだ普及していないらしい。


ミーニャは案外あっけらかんとしているし、マギーは宿に私物等を持って行ってくれているはずだ。

一晩分の宿賃が無駄にはなるがそこで噛み付いてもしょうがないし、頭の布についてもその後の追及が無かったのでおとなしくしておこう。

そんなことを思いながら牢屋……と言っても酷く簡易な石造りのそれの壁面にもたれかかった。


中空を眺めつつ、体育座りをする。

ミーニャはさっさと寝てしまったようだ。

俺は手を膝の上に置きながら、その手に課された手枷の残骸をそっと撫でた。

木で作られた手枷はさっくりと外れたのだが、ディゲネオスの会話の後に追加された金属製の手枷は削ることは出来ても完全に外れはしなかった。

今では不細工な腕輪みたいになって俺の手に残っていた。

怪しまれるかと思ったが、先ほどのどこかの未開部族設定が生きたのか、追求は無かった。


「邪魔するぞ」


そう言って隣の牢屋の扉が開く音がする。

石造りの牢屋は2つに仕切られており、俺とミーニャは同じ牢屋に入れられている。

ちなみにこの牢屋を仕切る金属の棒は魔力を阻害する働きがあるらしい。

魔法を使おうとしてもこの中でしか効果を表さずかつ威力も半減するそうだ。

投獄された時に説明を受けた。


「今日のことはすまない。

 私も思わぬ好敵手の登場に少しばかり熱くなりすぎた」


隣の牢屋に入ってきたのは件の隊長さんだった。

随行する団員に目で促すと渋々といった感じで団員は隊長を投獄する。


「これも自分なりのけじめでな。

 業務を全て終えた上で、になってしまったが私も同じ咎を受けねば、示しがつかぬ」


そう言って俺と同じように座り込み牢屋の壁にもたれかかる隊長さん。

やだ、この人、カッコイイ!


「こんなところでなんだが、私の名はアーテミシア・ヴァルロネイと言う。

 家名持ちだから分かると思うが貴族の末席に居る故、公の場では難しいが私のことはアーテとでも呼んでくれ。

 この場では貴族も亜人も関係なく、全て咎人なのだからな」


薄明かりに照らされて、柔らかに笑う隊長さん、アーテ。

蜂蜜色の髪の毛は肩につくかつかないかで切りそろえられ、癖っ毛なのか少しウェーブが掛かっている。

どじっ娘属性があるが、お姉さんって感じでもある。


「お…わ、ワタシ、ケイ。

 コッチの、ミーニャ」


思わず素で返そうとするが慌てて設定を思い出す。

ここで全てをご破算にするわけにはいかない。


「ふふっ。

 いや、ケイ殿、片言でなくとも構わぬよ。

 女には守りたい秘密の一つや二つはあるものだ」


アーテが悪戯っぽく笑う。

どこから気付いていたかは分からないが、話が分かる人でよかったとほっと胸を撫で下ろす。


「すまなかった。

 連れが、迷惑をかけた」


エルフとばれたわけでは無いだろうが、今のやり取りでとりあえず彼女の人となりはなんとなく分かる。

だから素直に謝罪の言葉とともに、だらしなく投げ出されたミーニャの太ももをぺちんと叩いた。

んぅと声を上げたミーニャを見ると同じくアーテも見ていたらしい。

期せずしてミーニャを見遣った俺たちはどちらともなく笑いあう。


そうして、ヴァレビナンでの意外な場所での一日目の終わりを迎えたのだった。

誤字脱字誤用ご指摘、感想地味にお待ちしております。

一応、明日も投稿予定です。

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