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異世界喚ばれた俺のチートがエロ本召喚  作者: うただん
第二章・俺のチートが自重しないんだけど。
15/37

1・「一晩限りの騎士ってことでさ」

第二章、開始いたします。


「そっち行ったぞっ!」


「まかせときなっ!」


俺が正面からウサギを追い立てる。

とっさに方向を転換したウサギの正面に、更にミーニャが立ちはだかる。

ウサギゲットだぜっ!

その瞬間野生の底力なのか、後ろ脚に蓄えられていたであろう爆発的な脚力でウサギがミーニャの股下をくぐる。


「馬鹿なっ」


言ってる暇があれば後ろを振り向けよ、と思いつつ俺はここ数日でものにした技能召喚の一つ、触手を喚び出した。

向こうが野生爆発ならこちらは魔性爆発だっ!

いや、意味が分からないけれども、ともかく俺の手から放たれた触手はまっすぐに伸びウサギを捕捉、そのか細い首を捻じり折った。


「いやぁ、ケイのそれ、最初は気持ち悪かっただけだったけど、意外と便利なものだなぁ」


「まあ、ばんぺん君は万能だからな」

にょろにょろとうごめく触手を少しづつ戻していく。

一気に戻すことも可能だが、伸縮の動きに慣れる為敢えて短くしつつ送還しているのだ。


さておき。

ばんぺん君。

そう名付けた触手にはもちろん人格?なんて無い。

ミーニャに褒められてうねうねと嬉しそうに揺れる最小限の大きさになったちっちゃいばんぺん君を放置して、本日3匹目のウサギを手に取った。

人格、なんてないよね?ね?


そう「テンタクルキング~勇壮なる王女を触手の生贄に~」に登場する物語当初から使える触手であり全ての触手の母である『万遍の魔手』。

速度、力に置いては最下位であるもののその汎用性、発展性は一番なのである。

物語中盤からは捕食型、設置型、人型など様々なタイプの触手が出てくるこの作品において、唯一、召喚した本人からのみ発動する「触手のみ」の形態、それがぱんぺん君である。


そういや物語後半で特殊条件を満たすと、人格の無いばんぺん君が危機に陥った主人公を召喚されても居ないのに身を盾にして守るというイベントがあったな。

あれは抜きゲーだと思っていて油断していたところで急に出てきた感動シーンだったなぁとしみじみ思う。


そんな元の世界での思い出をしみじみ思い出していた。

今は最小限の大きさでどこまで残して居られるかの訓練をしていたばんぺん君は本当に"なんとなく"だけど嬉しそうにうにょうにょしている。


「今日の狩りはここまででいいだろ、マギーも戻ってくるだろうしそろそろ日が暮れる」

ミーニャが手斧を元の棒に戻し、耳に挟むとそう言った。

本日の狩りはここまでにして、ミーニャと集合場所として決めた大木を目指して歩き出す。


今現在、俺たちは絶賛逃亡中の身である。

なお、今日の俺のスク水は紺色だ。

白だけじゃなくて色も指定できるこの召喚術の芸の細かさに驚くものの、「おにいちゃんえっちぃ」な台詞が聞こえてきそうな絵がプリントされた抱き枕シーツなどはその絵自体が消せなかった。

そのため、大抵の布製品は人前で堂々と出せないのがたまに傷だ。

そして、ミーニャはそのマッシブで褐色の肌に映える白い体操服に紺色のブルマーを来てもらっている。

褐色の肌なら白スク水だろと思うだろ?

なんていうかな、みーにゃと書かれた名札付の体操服が似合ってたんだっ。

予想以上に!!!

と誰にともなく力説しておく。

じゃないと、「これって動きやすいな!」と笑顔で言ってくれたミーニャに申し訳ない気がするからだ。

ちなみにブルマーは「あねぶる~姉とブルマーと~」(アークベル作・2003年)の初回特典であり、体操服は「あねぶる2~逆襲の体操服姉~」(アークベル作・2007年)の初回特典である。


ちなみに俺には姉属性もある。


ちなみに俺にはあと108の属性があるっ。


ごめん、そろそろしつこいな。


さて、そろそろ大木の下にたどり着こうとする頃、同じく薪となる木切れや食べられる野草や木の実などを採ってきたマギーも戻って来たようだった。


「ケーイーさーん!

 ミーニャーさーん!」


両手に薪材や草を抱えているため、両手が振れないからか間延びした声を出すマギー。

俺はさっき獲ったばかりのウサギをミーニャに渡してマギーの荷物を一部受け持ってやる。

マギーはこの中で一番背が高いのだが、それでも俺とどんぐりの背比べレベルの差でしかない。

マギーの両手一杯に抱えられた荷物をいくらか受け持って、本日の野営場所となる大木の下に向かう。


「新年明けてから大してたっていないのに、さすが南の方は採れるものが違いますねっ」


そう言ってにっこり笑うマギーに、エリオースと生き別れた直後の暗さは見えない。


エリオースに命を繋いでもらい、数日。

俺たちはただひたすら、エステカリオン平原を目指した。

皆、無言で馬を進める。

追っ手の恐怖はもちろん、教会の強大さや対峙した聖騎士の強さに恐れおののくしか無かったのだ。


その沈黙を破ったのはミーニャ。


「お、ウサギだ」


それまで、木の実や果物で辛うじて飢えを凌いできた俺たちの前に現れた一匹のウサギ。

それを見た瞬間にぐぅーと女性らしからぬ大きなお腹の音と共に獲物を見つけたミーニャが照れも無くにかりと笑う。

自然、俺にもマギーにも笑みがこぼれた。

どうやら、俺たちはまだ死ぬのには早いらしい。


それからは林の中でも水源や、木の実、野草、野生動物などを狩りながらの逃避行となった。

そうして、さきほどの場面である。

皆で話し合いエステカリオン平原に入る直前から林と平原の境界を進むこととし、ガリオンの峠からやや南西に位置する湖上都市ヴァレビナンを目指すことにした。


「湖上都市?」

「言ってみれば意味がわかるよ、マギーも楽しみにしてなっ」


そう言っていたずらっぽく笑ったミーニャは本当にこのパーティのムードメーカーとなってくれている。


□■□■□■□■


エステカリオン平原は、ヴァレネイ聖王国と隣国リオーマン王国との国境地帯である。

そして、幾度と無く戦争が繰り広げられた場所でもあった。

ヴァレネイにとってリオーマンは中央大陸の中でも南東に存在する大国であり、この大陸の覇権を狙うに最大の障害でもある。

リオーマンは最南端の岬から南大陸……亜人族が最も力を持つ大陸だが、そことの貿易を積極的に行っている。

そのため、中央大陸の中では比較的亜人族に対し寛容だ。

特にリオーマンにとってエルフは特別な存在であり、救国の聖女として王家に幾代も仕えてきているのだ、とミーニャは言う。


「それって、厄介ごとのフラグだろ」


そう突っ込むと、フラグって何ですか?とマギーに聞かれたので、呪いのようなものだと答えておいた。

ミーニャはいまいち分かってないようだったが、とにかくもリオーマンの首都ネジェイデスは行かないように決める。

ネジェイデスを通過しなくとも湖上都市ヴァレビナンに寄って後、亜人の聖地とも言われる南大陸を目指すことは可能であるからだ。

だって、聖女なんてエロゲじゃ敵に捕らわれて調教とか、贄にされるかそんな存在だろ?

なんて非常に限定された世界の常識で語ってみる。


まあ、自分の心の中でだけ、ではあるけれど。


さても、この逃避行である。


俺は技能召喚で何が出来るのか、色々と試行錯誤していたし、ミーニャもマギーもそれぞれの得意分野で役割をこなしていた。

俺はほぼ狩り特化、ミーニャも狩り特化ではあるが肉の捌きと野趣溢れた料理番、マギーは野草や薬草、木の実の採取に火の番など。

あ、ちなみに林の中に居ると良い具合に俺のエルフとしての能力が発揮されるらしい。

危険な生き物への警戒、地図上の方角や進行に邪魔な木々や草薮の最適化など多岐に便利な能力であった。


その為、野宿に関わらず夜警はほぼ火の番をするだけで良かったのだ。

これも今の迂回となるような逃亡ルートの選択理由の一つであった。


森林の中を進めば、エルフである俺の利点が最大限生かせる上、食料も豊富なのだ。

あれから1週間以上は経過しているはずだが、追っ手が来ないことを考えると向こうもそれどころでは無いのではないかと思う。

まあ、峠の進軍ルートとなる道は岩山を破壊してきたし、最前線であろう丘の城砦も城壁はぼろぼろだろう。

あの時は逃げるのに必死で被害状況をろくに確かめられなかったが、そういうことにして今は逃げることを考えるべきだ。


「そういえば、冒険者とかって居るのか?」

「冒険者?

 冒険っつーのは分かるけど、冒険をする者ってことか?」

「あー、そうじゃなくて。

 職業みたいなものさ。

 冒険をして生計を立てている人っているのか?」

「危険を冒してでも生きる場所を切り開くという意味では私の居た開拓村は皆、冒険者ということになりますが……」


どうやら冒険者と呼ばれる存在は居ないらしい。

異世界に来たのは良いものの、全くと言ってこちらの世界の常識が分からないので、世間話に織り交ぜて色々と聞く。

食事も終わり、就寝前にこうして取りとめの無い会話で色々なことを教えてもらっていた。


「てことは、冒険者ギルドとかそんなものもないのか。

 まあ、魔物は居ないし、便利で摩訶不思議な薬草なんかも無いだろうし……」


そう言って、マギーをちらりと見遣る。

マギーは手元にある即席の石の器で何かの草をすりつぶしている。

熱冷まし、腹痛、虫下し、下痢などに効くと言う幾つかの薬草をこうしてすり潰しては木の実を炙りすり潰した粉と混ぜて丸薬を作っているのだ。

当然、一つの丸薬には一つの効果しかなく、何種類かの丸薬をちょっとずつ作り貯めしている最中だ。


俺や、ドワーフのミーニャにそれが在るかどうか実はまだ聞けていないのだが、生理痛を和らげる薬なども作っている。

「もうすぐなんですよね」と恥ずかしそうにはにかんだマギーにこちらも顔を真っ赤にする他反応できなかった。


「ギルドっていうと商人や職人が作る組織だろ?

 冒険者なんて職業聞いたこと無いから、そんなギルドも無いっちゃ無いけど、エルフの国にはあるのか?」


「あー、いや。

 忘れてくれ。

 昔読んだ本にそんな組織が登場してな」


エルフの昔って何百年前だよ、とミーニャが笑う。


「でもでも、ケイさんのお話もっと聞きたいです!

 エルフの国ってどんなところなんですか?

 ジューエンが貨幣でしたっけ、あと、えーと」


「まてまて。マギー。

 俺はあの変態に召喚された身だからな。

 エルフはエルフだが、この世界、いや、時代のエルフと同じかどうかまでは分からん。

 だから俺の常識はあてにしないでくれよ」


必死に言い繕ってみる。

ごまかせているかどうかは分からないが、マギーはそうなんですか、と残念そうに呟いた。


「あ、でも、私たち、これから南の大陸に向かうんですよね!

 じゃあ、エルフの国が直接見れますね!」


花が咲いたような笑顔でマギーが言う。


「そうだな。

 それにはまずこの大陸から逃げ出さなきゃな」

と返す。


しかし、胸中ではマギーがこのまま俺たちについてくるべきか決めかねていた。

もちろん、最終的には本人の意思で決めるべきだ。

ただ俺たちはエルフである俺とドワーフであるミーニャは亜人ゆえに南大陸を目指すのであって、人であるマギーを巻き込むのは可哀想だと思っている。

本人も気付いているだろうが、戦闘になるとマギーは全くの足手まといになる。

厳しい言い方にはなってしまうがその問題もあった。

逃亡生活を強いられている俺たちには、マギーとの別れが近いのだと薄々気付いていた。

それは、俺やミーニャは言うに及ばず、マギーも恐らく肌で感じ取っているだろう。


火がぱちぱちと音を立てる。


ぱきっ。


そんな時だ。

人の足で木の枝が踏み折られる軽い音が混じる。


「誰だっ!」


既に先ほどから人の気配自体を感じていた俺はすぐさま誰何する。

マギーは気配のした方向を正面に火の後ろへ即座に回り、ミーニャはドワーフの手斧を握り締め臨戦態勢を取っている。

接近する人が教会の騎士ではないことは森の声で把握していた。

だが、武器を佩びた大人の男が二人、果たして彼らは何も悪びれることなく、俺たちの前に姿を現した。


「おいおい。

 物騒だなぁ。

 俺っちらは怪しいものじゃねぇよ。

 俺っちはケルビン、後ろに居るのは俺っちの相棒でバークレイだ。

 なに、今日の狩がどうにもふるわなくてね。

 焦る一方でついに夜になっちまって野宿でもと思ってたらこの火が見えてさぁ。

 な、これも縁と思ってさ。

 一晩、一緒させてくんねぇかな?」


突然の誰何に焦ったのか一気にまくしたてるように男が喋る。

火に照らされてあきらかになる人影は確かに二つ。

簡単な自己紹介をして頬を掻きながら人懐っこい笑みを浮かべてそう告げた男は、しかしながら先ほどの枝を踏んだ位置から驚異的なスピードで今の位置まで出てきた。

俺はそれに少しだけ警戒しながらもマギーとミーニャと顔を合わせた。


「お、女ばっかりだったか。

 そりゃ警戒もされるわな。

 でもほら、わるーい狼から守ってくれる一晩限りの騎士ってことでさ」


いや、お前が狼になる可能性もあるだろと突っ込みを入れそうになり、実際そう言おうと口を開いたその時だった。


「うそっ。

 おいケルビン、エルフだぜっ、エルフっ!」

「ばっ、おまっ」


目の色を変えて先ほどのケルビンよりずっと速い速度で俺に向かったバークレイはケルビンの引きとめ空しく俺の間近まで迫る。


「ぶほっ」


そうしてそんな奇妙な声を上げて、バークレイは召喚されたコミケのカタログの背アタックであっけなく沈むのだった。

来週は水曜日に一回、週末は二日とも更新したいです。

誤字誤用ご指摘お待ちしております。

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