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異世界喚ばれた俺のチートがエロ本召喚  作者: うただん
第一章・異世界喚ばれた。
1/37

1・「私の名前は変態です」

はじめまして。

まったくの見切り発車ですが、がんばります。

「私の名前は『変態』です」


声高らかにそれは、宣言された。

それは自慢にならないだろう、とぼんやりした頭の中で突っ込みを入れた。

何故そんなに堂々と胸を張っているのか。

それ(変態)は公言しちゃだめな類の、まさしく宣言を発した人物を見上げる。

今日は、仕事から帰ってきて、ビール片手にちょっと、うとうとしていたのかもしれない。

メガネが無いとろくに視界を確保できないはずなのに、徐々に焦点を合わせていく我が目に、メガネ掛けっぱなしで転寝しちゃったかなー、と思う。

やがて、くっきりと現れた優男に、俺の思考が瞬間、ストップする。

何時の間にか自分の部屋の電気を消したのか、薄暗い中で辛うじて分かる栗色の髪の毛に、碧眼、高い鼻、涼しげな目元!

なんだ、俺の部屋に外国人が居る!?

え、ていうか、ここ俺の部屋か?

薄暗いって感じたけど、こんな奥行きあったか?


待て待て、まだあわてるような時間じゃない。

ちょっと落ち着こう。

こういう時は深呼吸だ。

あ、でも、目の前の外国人からは目を離しちゃいけない。

クレイジーなサイコパスが快楽殺人的な衝動で俺をキルしに来たとか、あまつさえもファ○クしに来たとか、後なんだ、とにかく危険が危ない!

いやいやいや、ぜんぜん、落ち着けていないじゃん、俺。


奴は、変態だ、少なくともそれだけは分かる。


だって、自分で言ってたんだもの。

よし、整理できてきた。


この自称・変態は一時置いておくとして、この状況を整理しよう。

なんなら、自称と変態の間に☆を入れておけば、ちょっとはこの不可解な状況がファンキーになるかもしれない。

ファンキーになるなら、俺も幸せになるかもしれない、そう、俺の名前は東井 慶。

年は36歳、独身、イベント制作会社勤務。

よし、そこまでは大丈夫。

今日は22時頃会社を出て、帰ってきたら23時、日課の自家発電を致してビールでもかっくらって、今日は寝よう、そう寝ようとしていたんだった。

転寝じゃねーよ、ちゃんと布団に入ったじゃん!

枕元のメガネ立てにちゃんとメガネを入れたよな、あれ忘れると朝起きてから、メガネ探す作業が増えるんだよな。


……てことはこれは、夢だ。

メガネが無いけど、ちゃんと見えてるからな。

なんだ、夢かー。

夢なら、もっとピンクな内容がよかったのになー。

なんで、夢の中で出会った最初の出演者がこの優男なんだろうなー。


優男はニコニコしながら、もう一度口を開く。


「あの、聞こえました?」


もう一度寝よう。

夢の中なのだから寝るってのはちょっと違う気もするけど、寝よう。


「おかしいな?

 翻訳の術式はうまく作用しているはずなのに……」


ぶつぶつと呟く優男。 自称☆変態さんだ。

星をつけて、ちょっとファンキーにしてみたけれど、外国人タレントかっと突っ込み入れたくなるくらいのイケメンだ。

変態でファンキーだけど、イケメンだ。

あ、いや、イケメンだけど、ファンキーで変態なのか?

どっちが残念度が高いんだろうな。


ふむ。


イケメンな彼が変態ならば、きっと恐らくフツメンであるはずの俺も変態だ。

あ、ごめん、フツメンっつったけど、全く自分に自信が無いわ。

生まれてこの方、告白なんてされたことない。

だからこそ、36にもなって結婚せずに、エロ本マイスターの道を究めんとしているのだ!

エロというエロをジャンルの差別なく全て飲み込み、全てを制覇した男、キングオブ変態、それが俺だ。

やめよう、36歳独身にはこれ以上はオーバー☆オウンキルだ。

☆をつければ、ちょっとはダメージが和らぐかと思ったけれど、そんなことは無かった。

普通に死にたい。 穴があったら、その中に入って、1万年ほど世界平和のことを祈って過ごしたい。 嘘です。


ていうか、こんなイケメンな変態がいるか、イケメンは爆発してしまえばいいのに。

残念度の高さを考えたけど、どちらもあれだ、※ただしイケメン、だ。畜生。


「えー、こほん。

 もう一度、自己紹介をしますね。」


イケメン優男ザ・変態がもう一度、自己紹介をするらしい。

もう何が何やら、分からないよ、彼の存在定義が行方不明だよ!


「私の名前は『変態』です。

 貴方の魂を異世界より召還した、全世界屈指の召喚術士『変態』です!」


「変態、変態、うるさいよ!」


俺は、いつの間にか手元に持っていた分厚い本を投げつけた。


□■□■□■□■


突然ではあるが、俺はエロ本が好きだ。

エロゲも好きだ。

中学生の時分、夏休みに訪れた親戚の家で従兄が隠し持っていたエロ本を初めて見て以来、俺はエロ本に魅入られ以降、集め続けている。

ちなみに名誉の為に言っておくが童貞ではない。

まあ10年も前に彼女と別れたっきり、そういった機会に恵まれることなく、セカンド童貞的な何かを拗らせている、36歳独身だ。

都内在住で、部屋は1K、6畳の部屋と5畳のキッチンにわかれ、広々とした物件ではあるが、築は古い。

狭いとは言わないが、10年も住んだ部屋だ、目をつぶったってベッドから玄関までいけるはずだ。


その部屋が、今や、薄暗い石造りの部屋に変わっている。


うん。


さて。


社会に出て、自分できちんとした収入を得るようになり、一人暮らしを開始した後は目に付くエロ本、エロゲとその収集に明け暮れた。

一応人目につかない程度で部屋に収納されたそれらは、買った時代から、趣味趣向、使用頻度(・ ・ ・ ・)によって機能的に収納され、どこにどの作品が入っていたか全て鮮明に思い出せる。

これまで買ったものは言うに及ばず、好きな作家の作品は基本、買い揃えていた。

来月には、デビューからずっと買い続けていた空清芽衣先生の新刊も発売されるし、エロゲでもチェックしていた新作がもうすぐだったはずだ。


そういえば、なんとなく投げつけた本はコミケのカタログだったなぁ。


とりとめもなく、そんなことを考えながら、俺は現実逃避に没頭しようとしていた。


「痛った、痛ったぁ」


さっき投げた本が強かに額に当たったらしく、イケメン優おと、省略、ザ・変態が頭を抑えて涙目になっている。


「あー」


か細く肺腑から吐き出された溜息、それは間違いなく自分の吐き出したものだった。

それは、良い。


「んー、んー」


うん。

俺はこんな高い声じゃなかったはずだ。

そして、先ほど本を投げたときに視界の端に見えた、自らの体であるはずの、白魚のような細い腕。

恐る恐る胸元を覗き見る。 程よい形の双丘が見える。

形も大きさも大好物、どストライク、完璧だ。


自分のものじゃなければ。


「おお!喋ることも大丈夫なようですね!」


ザ・変態がしゅたっと復活する。

復活、はやっ。


TSキター、とか、おっぱいキターとか言いたいところだけど。

俺が、俺こそが変態だ!とか、ネタにも走りたいけれど。

自分の体が性転換するという事実に、想像していた以上に俺の頭の中は混乱の極みにあった。

エロ本やエロゲなら大好物のシチュエーションも、今の自分の体に対する俺がいま感じている興奮が、ある筈の器官が、刀が、息子がいないことが影響しているのか、とても気持ち悪い。


「ええと、色々とご説明させていただければと思うのですが」


ザ・変態が慇懃無礼に話を切り出そうとする。

うん。

お前がとりあえず元凶だよね。 召喚したとか言ったよね。


「先ほども言いましたが、私の名前は『変態』、またの名を『変態』、とある国では『変態』とも呼ばれて」


2冊目のコミケカタログが飛んだ。

3冊目、4冊目と続く。

いや、正確に俺が飛ばした。 殺意を持って飛ばした。

流石に二度目だからか、ザ・変態はそれらを避けて、手で受け流し、4冊目を受け止めてこう言った。


「その、色々投げつけるのも良いですが、もろもろと見えてしまっているので、大変、そのう、眼福ではありますが、なんていうかそろそろ落ち着いて話を聞いていただきたく」


光の速さで5冊目が飛ぶ。


「この、ド・変態っ!」


「ご褒美ですっ!?」


綺麗な鼻血のアーチを描いて、遂に、遂にラスボスは打ち倒された。

※2014年10月26日、改稿しました。


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