第1話
第1話
1200人にもなる一年生とその家族、先生やお偉いさん達が余裕に入れるホールで入学式が行われている
学園長の挨拶、祝電やお祝いの言葉、そして今コーラス部による校歌斉唱が終わったところだ。
なんとも退屈なので
俺はプログラムへと目を向ける、
予定事項はあと3つもう少しで終了だ
「次は生徒代表の言葉です、12組桜咲彩希さん。」
「はい」
俺の席から左へ5席横辺りに座っていた少女が澄んだ声で呼応しステージの上へ長髪を揺らせて向かう
(あれ、あの娘は確か…)
記憶をちょっと前へ巻き戻す
綺麗な黒髪ロングのお姫様みたいな少女
間違いないだろう
桜咲彩希はさっき校門で見かけた少女だ
入学式が始まる直前も冬谷と会話してたから気付かなかったが、同じクラスのようだ
「スゲーカワイイな桜咲さん!俺は今この学校に来てよかったと感動しているぞ!」
「 入学式で生徒代表ってことはあの人は入試でトップ合格だったのかな?」
「妥当に考えりゃそうだろーな!」
(可愛くて頭良い人ってホントにいるんだな)
当の少女は感謝の言葉や抱負をステージの上で語っている、その姿はステージから少し離れた席の俺ですらはっきりと分かる程に神々しかった。
「お姫様見たいな人だな…」
「ワガママそうってことか?」
「いや、そうじゃなくて…ホントのお姫様みたいに綺麗な人だなって」
「なんだ雪矢、もしかして桜咲さんにときめいてる?」
「やかましいわ、少しは静かにしろ。」
「話しかけてきたのは雪ちゃんのくせにぃー…グフッ!?」
瞬間、俺は冬谷の脇腹にストレートを見舞う、
まあスカッとしたから許してやろう。
冬谷とは小学生のときからずっとクラスが変わら無い上、佐々城雪矢、笹倉冬谷と出席番号が必ずと言って良いほど隣になるので何をしようにも一緒にやって来た、切っても切れない腐れ縁ってやつだ。
こういったやり取りも何回やって来たことか…
そうこうしている内に桜咲彩希による生徒代表の言葉も締めくくりようだ
「歴代の先輩方と方を並べられるよう勇往邁進していきたいたいと思います。ランシェル学園98期生代表桜咲彩希」
ホール内に拍手の嵐が起こる
(桜咲彩希…か)
入学式が終わり
俺は12組の教室へ向かう
冬谷とも同じクラスである
ここランシェルは生徒総数
3600人以上を誇る有数のマンモス校である
30クラスもあったら違うクラスになる方が自然なのだが腐れ縁とはまったく驚くばかりである
ホールから教室のあるC棟へは歩いて15分程度、
校舎が大きいと移動する距離も少し長い。
上級生達がこの移動の最中にあれよあれよと部活の勧誘をしてくるが、俺はさらっと流す、
部活に入る予定は今のところ無い。
当夜もそのようで特にビラなどを貰っていない
C棟の校舎が見えてきた
C棟も他の施設と同じように中世のヨーロッパ風の建物である
やはり桜が似合わない、何故ヨーロッパに桜?
俺は苦笑しつつC棟へ足を入れる
C棟2階2-6教室
俺が所属する1年12組の教室だ
「このクラスの担任をさせてもらう
希鈴 かなです、今年から教師としてランシェルに来ました、よろしくおねがいします。」
希鈴先生が簡単な挨拶と共に
この学校の教育理念らしきことを話始めた。
ランシェルは進学校というより生徒を成長させるためのサポートをする学校だということ
その成長を促すための場として
ランシェルは設備を整えてきたと
A・B・C・Dと4つの5階建て校舎を造り、A~Cは各学年がD棟は実習室と職員室になっている。
他にも先程入学式が行われた大ホール、運動場、多目的ホール、図書館、聖堂、文化部室棟、寮棟などが存在するそうだ。
けど俺がここにきたいと思った理由はこの設備だけじゃない、冬谷もそうだろう、
何といったも、ここランシェルには…
「何よりここランシェル学園はフリーダムをカリキュラムに取り入れた、フリーダム試験導入校となっている世界でたった3つの学校の内の1つなのです。」
そう、俺がここへ来た理由はフリーダムがあるからだ。
「このフリーダム、およびFAAに興味があって、ここへ来た人も少なからずいるでしょう、いえ、むしろこっちが本命かもしれませんね。」
その通りだよ先生
フリーダムについての話はこの後ホールで説明会があるそうなので、希鈴先生はリンクタブレットへと話を変える。
「このリンクタブレットはフリーダムへリンクするために使いますが、通常の授業時は教科書として使うので常に常備しておいてくださいね。」
これについても後に話すから今はここまでといって
今度は自己紹介へと話は移った
先生の促すままに自己紹介が始まる
出席番号順なのでさ行の俺は比較的早く出番が来るが、それよりも早く桜咲彩希の番になる、
「桜咲彩希です好きな事や趣味は料理で、御菓子作りが大好きです、これからよろしくおねがいします。」
意外にもシンプルな自己紹介だった、
というか、みんな一人30秒も無いんじゃないかという短い自己紹介なので
あっという間に俺の番である。
特に考えていなかったので
こうなるとアドリブしかない
「佐々城雪矢です、フリーダムに興味をもったのでここへ来ました、勉強も頑張りたいと思っていますよろしくおねがいします。」
うーん、なんとも言えない内容になってしまったな…
そして後ろの席に座っている冬谷の番になる
「笹倉冬谷です!佐々城君とは小学校の時からの幼馴染みでここまでずっと同じクラスになってます。冬谷って呼んで全然オッケーです!
よろしくおねがいします!」
こういう冬谷のフレンドリーなところには憧れる、だが冬谷よ全然オッケーって日本語としておかしいんだぞ、知ってるか?
その後はまたシンプルな自己紹介が続き、40人全員が終わった。
みんな人当たりの良さそうな人達で良かったと安堵する
休憩を挟んだらまた教室移動で、今度は実習室へ行きそこでフリーダムやFAA、リンクタブレットについての説明と同時にフリーダムへリンクする実習をするそうだ。
休憩時間
俺はクラスの男子同士で軽く挨拶しあう、
冬谷がリードしてくれて気兼ね無く話すことが出来たのでまあ、満足…と。
そんな休憩時間も終わり
「はーい、では実習室へと移動するので廊下に出てください。」
俺達は希鈴先生の後について実習室へ向かう
遂にフリーダムとご対面だ。
第2話へ続く