友人と僕の儚い日常
明かりは付いていなく、朝の日差しがカーテンの隙間から出ている。
ホコリが目立つ、掃除しなければ。
『ごめんなさいねぇ、今月もそっちに戻れなさそうだわ』
「ああ、分かった、てかもう大学に入って三年も経って自立もできたしそんなに心配しなくてもいいよ」
「本当に大丈夫?宏ちゃんはお姉ちゃんがいなかったら何も出来ないから」
「そうだね・・・出来ないことは姉さんにやってもらうよ」
嘘だよ、母さん、姉さんはもう・・・
「そうしなさい、あらもう時間だわ・・・また後でねぇ」
「うん、また後で・・・」
母さんは帰れるはずがない、母さんが現実をみない限り。
「母さん、姉さんはもう・・・」
畳のある部屋の隅を眺める、そこには扉の閉じられた仏壇が鎮座している。
「姉さん・・・」
あの日あの時、死んでしまった姉さんは10年たった今でも・・・
「大学にいかないとな・・・」
暗くなった思考を切り上げる、こんなに経つのにまだ忘れられない、あの女との思い出などとうに掠れてしまったというのに。
「よっす宏文」
「ああ、おはよう孝」
金髪やらリングやらもうどこからどう見てもチャラ男でヤンキーな僕の友人孝、根は真面目なんだ、根は。
「おっはーヒロポン」
「だからその名前で呼ぶんじゃねえよ、麻薬じゃないんだから」
「ごめん、ごめん、おはよう宏文」
「はぁ、おはよう啓太」
茶髪をボサボサ(本人曰くイケてるらしいが)、一応俺の友人だ。
彼らとは10年来の友達である。
「ところでさーヒロヒロー」
「はぁ、なんだそのあだ名・・・」
「まぁいいじゃーん?今日合コンあるんだけどさー」
「パスで」
「またかよーヒロヒロはイケメンだから女の子が良く釣れるんだよ」
「はぁ・・・お前は何言ってんだよ」
女の子・・・か、姉さんが死んで、一番親しい女性が死んだことで僕の中の女性との距離がよく分からなくなっていた。
それに女の人を愛することが正直怖い、自分が変わってしまうのが怖い。
「はっ!?もしかしてヒロヒロってばホーモー!?俺の貞操狙ってるー!?」
「え、うわ、正直引くわー」
「俺もだ、啓太がそんな趣味だったとはな」
こういうのは言いだしっぺがそういうものだのだ。
「え、なじぇに俺?ちょっ!?周りの女の子も引いてるし!」
「お前は恥ずかしい奴だなぁ」
「まったくだ、いいやつだけど・・・ホモでさえなかったらだけど」
「ホモじゃないし・・・」
「あ、俺そろそろ時間だから行くわ」
「お、そうか・・・じゃあな」
「おうじゃあな」
彼らとは本当に仲のいい友達なんだ、姉が死んでから初めて出来た友達でずっと一緒にいる。
これからもきっといい友人として過ごしていけるだろう。