表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2弾 忘れ物の話をしていたら、なぜか記憶の書き換えの話になった件 ~記憶の所有権とロールバック領域を巡る僕らの放課後~  作者: とまCo
第12話 記憶を取り戻す(そして違和感)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/44

第12話 記憶を取り戻す(そして違和感)~現実への帰還と違和感~ [3/4]

 光が弾けたあと、

 A君はゆっくりと目を開けた。


 そこは――

 “いつもの教室”だった。


 黒板。

 机。

 窓の光。

 クラスメイトのざわめき。


 すべてが“今日”のはずなのに、

 A君の胸の奥には、

 “昨日の残響”がまだ熱く残っていた。


B君「A! 戻ってきたか!」


 B君が駆け寄ってくる。

 その顔は、いつものB君だ。


 ……のはずだった。


A君(……あれ……?)


 B君の笑い方が、

 ほんの少しだけ違う。


 昨日のB君は、

 笑うときに「ははっ」と息を漏らす癖があった。

 でも今のB君は――

 「ふっ」と短く笑った。


 たったそれだけ。

 でも、A君には“違う”と分かった。


A君「……B……?」


B君「ん? どうした?」


A君「いや……なんでも……」


 言葉が喉で止まる。

 説明できない。

 でも確かに“違う”。


 その時、

 O君がノートを閉じてこちらを見た。


O君《A君……

  大丈夫?》


 O君の声はいつも通り。

 しかし――

 机の上のノートが、

 A君の目を引いた。


A君(……筆跡……?)


 O君の字は、

 細くて整っていて、

 どこか機械的な美しさがあった。


 でも今の字は――

 少し丸い。

 柔らかい。

 “別人のような筆跡”。


A君(……Oの字……

  こんなだったっけ……?)


 胸の奥がざわつく。


 昨日の記憶は戻った。

 確かに戻った。

 でも――

 “昨日の世界”と“今日の世界”が

 完全に一致していない。


AB君【A君……

   顔色が悪いよ】


 AB君が心配そうに覗き込む。

 その手にはノートがある。


 A君はふと、

 そのノートの赤字に目を向けた。


A君(……え……?)


 赤字が――

 “四重”に見えた。


 一本の線が、

 四つのレイヤーに分かれて重なっている。


 まるで、

 “AB君の記憶が四層に分岐している”ような。


A君「……AB……

  その赤字……」


AB君【ああ、これ?

   ちょっとペンが滲んじゃって】


 AB君は笑った。

 しかしA君には分かる。


 これは“滲み”じゃない。

 “重なり”だ。


A君(……昨日のABは……

  二重だった……

  でも今は……四重……?)


 胸の奥が冷たくなる。


 昨日を取り戻したはずなのに、

 世界が“昨日のまま”ではない。


 黒板を見る。


 昨日の黒板に書かれていた文字と、

 今の黒板の文字が――

 微妙に違う。


 昨日の記憶では

 「一次関数の応用」

 と書かれていた。


 でも今は

 「一次関数の応用(復習)」

 と書かれている。


A君(……昨日の黒板……

  こんな書き方じゃなかった……)


 違和感が積み重なっていく。


 B君の口癖。

 O君の筆跡。

 AB君の赤字。

 黒板の文字。


 どれも“少しだけ違う”。


 その時――

 A君の視界の端に、

 淡いログが一瞬だけ浮かんだ。


〈!-- 整合性:再計算中。 -->


A君「……っ……!」


 ログはすぐに消えた。

 まるで“見られたくなかった”かのように。


B君「A? どうした?」


A君「……いや……

  なんでもない……」


 でも、A君は気づいてしまった。


 ――この“昨日”は、

  本当に“この世界”の昨日なのか?


 胸の奥に、

 小さな疑問が芽生えた。


A君(……俺の昨日……

  本当に……

  “この世界”の俺の記憶……?)


 その疑問は、

 静かに、しかし確実に

 A君の中で広がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ