第12話 記憶を取り戻す(そして違和感)~復元の光~ [1/4]
黒い穴の“残響”が光を帯びた瞬間、
ロールバック層の空間は、
まるで深海の底から浮上するように静かに震えた。
白い床が淡く光り、
黒い壁に走るログがひとつ、またひとつと書き換わっていく。
〈!-- rollback-core:再開 --〉
〈!-- 記憶復元:開始 --〉
その文字列は、
“世界がA君の昨日を再び受け入れ始めた”ことを示していた。
B君「……始まったんだな……」
B君の声は小さかった。
けれど、その小ささは不安ではなく、
“見守る覚悟”の静けさだった。
O君《うん……
A君の“昨日”が……
戻り始めてる》
AB君【A君……
深呼吸して】
A君は息を吸い、
胸の奥の痛みを押し込むように目を閉じた。
A君「……俺の昨日……
返ってこい……」
その言葉に応えるように、
空間が“柔らかく”揺れた。
先ほどまでの警告の揺れとは違う。
これは――
“受け入れの揺れ”。
〈!-- 所有権:暫定承認 --〉
〈!-- 整合性:再計算中(低負荷) --〉
O君《……世界が……
“許容”してる》
B君「許容って……
戻していいってことか?」
O君《“完全に”じゃない。
でも……
A君の意志と、4人の選択を
unknown-node-02 が“整合性に組み込んだ”》
AB君【だから……
今だけは……
“戻せる”】
O君《A君……
今から起きることは……
“思い出す”というより……
“戻る”に近い》
A君「戻る……?」
AB君【A君の昨日は……
“削られた”んじゃなくて……
“巻き戻された”】
O君《だから……
復元は“再生”に近い》
A君は胸の奥がざわつくのを感じた。
怖いわけじゃない。
ただ――
“戻る”という言葉が、
自分の中の何かを強く揺らした。
A君「……俺……
本当に……昨日に触れられるんだな……」
B君「触れられるよ。
だって……
俺たち4人で選んだんだから」
その言葉に、
A君の胸が少しだけ軽くなった。
その時、
unknown-node-02 の影が動いた。
影はゆっくりとA君の前に立ち、
空間にログを走らせる。
〈!-- rollback-core:最終フェーズ --〉
〈!-- 観測モード:終了準備 --〉
A君「……unknown-node-02……?」
影は何も言わない。
ただ、A君を“観測”している。
その観測は、
敵意でも、好意でもない。
ただ“世界の目”。
B君「……なんか……
消えそうじゃないか……?」
O君《うん……
unknown-node-02 は……
“役目を終えた”》
AB君【A君の記憶が戻れば……
この層に“留まる理由”がなくなる】
影がゆっくりと薄くなる。
輪郭が揺れ、
まるで“世界から切り離されていく”ようだった。
A君「……ありがとう……
俺の昨日を……守ってくれて……?」
影は答えない。
ただ、最後のログを残した。
〈!-- rollback-core:実行 --〉
〈!-- 観測:終了 --〉
unknown-node-02 の影が、
光の中に溶けるように消えた。
その瞬間――
A君の視界が白く弾けた。
光が、
昨日の断片を連れてくる。
黒板。
机。
窓の光。
誰かの声。
誰かの後ろ姿。
――「A君、昨日さ……」
A君「……っ……!」
胸の奥が熱くなる。
痛みでも恐怖でもない。
“戻ってくる感覚”。
B君「A!!」
O君《大丈夫……
これは“復元の痛み”》
AB君【A君……
もうすぐ……
“昨日”に触れられる】
光がさらに強くなり、
A君の意識は“昨日”へと沈んでいった。
――そして、
A君は“本当の昨日”を見た。




