表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2弾 忘れ物の話をしていたら、なぜか記憶の書き換えの話になった件 ~記憶の所有権とロールバック領域を巡る僕らの放課後~  作者: とまCo
第2話 空白の数分(編集の痕跡)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/42

第2話 空白の数分(編集の痕跡)~空白の数分を確かめる~ [1/3]

 放課後の教室。昨日と同じ光景のはずなのに、A君の表情だけがどこか落ち着かない。

 机に置いた腕時計をじっと見つめながら、A君は小さく息を吐いた。


A君『……また、さっきの時間が思い出せないんだよ』


B君「またって……昨日の“数分抜けた”ってやつ?」


O君《今日はどのくらい?》


A君『三分くらい……かな。気づいたら、黒板の前に立ってた』


B君「え、立ってたの覚えてないの?」


A君『うん。気づいたらそこにいた。移動した記憶が無い』


 A君は黒板の前を指さした。

 その指先は震えてはいないが、どこか頼りなかった。


O君《……やっぱり普通じゃないね》


 O君はA君の腕時計を覗き込むようにして、時間を確認した。


O君《A君が“気づいた時刻”と、“最後に覚えてる時刻”の差が三分……》


B君「つまり、その三分間が“空白”ってことか」


A君『そう。何してたのか、本当に分からない』


 黒板の前にいたAB君が、白いチョークを手に取った。

 黒板の中央に、白で一文字。


 ――「空白」。


AB君【A君の“空白の数分”は、事実として存在している】


B君「事実って……Aの主観じゃなくて?」


AB君【主観も事実だよ。A君が“無い”と感じているなら、それは事実】


 AB君は白い「空白」の横に、黄緑のチョークで線を引いた。


 ――「欠落(時間)」。


O君《昨日は“記憶の欠落”だったけど、今日は“時間の欠落”だね》


A君『……違うの?』


O君《似てるけど、ちょっと違う》


 O君は指を折りながら、ゆっくりと説明を始めた。


O君《忘却には種類があるんだよ》


B君「種類?」


O君《うん。例えば――》


 O君は黒板の端に歩いていき、AB君の隣に立った。


O君《① 思い出せない忘却

  ② 最初から無い欠落

  ③ “飛ばされた”時間の空白》


A君『……俺のは③ってこと?』


O君《今のところはね》


B君「なんかさ……Aの記憶、誰かに触られてるみたいじゃね?」


 その言葉に、教室の空気が一瞬だけ止まった。


A君『触られてる……?』


B君「だってさ、自然に三分だけ抜けるとか無くね?

  昨日の“図書室の記憶”も変だったし」


O君《確かに、自然現象では説明しにくいね》


 AB君は黄緑のチョークを持ち替え、黒板に新しい文字を書いた。


 ――「整合性」。


AB君【A君の欠落は、“整合性維持”のための微調整だよ】


A君『整合性……?』


B君「世界の、ってやつか?」


AB君【そう。世界は矛盾を嫌うからね】


O君《つまり、A君の記憶が“世界の都合で調整されてる”ってこと?》


AB君【可能性の一つとしては、ね】


A君『……俺の記憶、勝手にいじられてるってこと?』


AB君【“いじられている”というより……

   “整えられている”と言った方が近いかな】


B君「いやいや、それもうホラーだろ」


A君『でも……本当にそんな感じなんだよ。

  自分の記憶なのに、自分のじゃないみたいで……』


 A君は腕時計を握りしめた。

 その指先には、焦りと戸惑いが混ざっていた。


O君《A君、もう一回だけ確認していい?》


A君『うん』


O君《“空白の三分間”の前後は覚えてる?》


A君『前は覚えてる。

  でも……後は、気づいたら黒板の前にいた』


B君「じゃあ、その間に何があったかは完全に“無い”ってことか」


A君『……うん。無い』


 AB君は白いチョークで、黒板にもう一度「空白」と書き直した。

 その横に、黄緑で小さく補足を書く。


 ――「編集の痕跡」。


AB君【A君の空白は、編集の痕跡だよ】


A君『編集……』


O君《昨日と同じだね》


B君「じゃあさ、Aの記憶……本当に誰かに触られてんじゃね?」


 A君は息を呑んだ。

 その表情は、恐怖よりも“理解が追いつかない”という色だった。


A君『……俺、どうなってるんだろう』


O君《まだ断定はできないけど……

  A君の中で何かが起きてるのは確かだよ》


B君「とりあえず、今日の三分……一緒に検証しようぜ」


 A君は小さく頷いた。

 その瞳には、不安と、わずかな期待が混ざっていた。


 ――空白の数分は、静かにその輪郭を見せ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ