第10話 編集の現場(ロールバック層)~決断の前夜~ [4/4]
黒い穴がゆっくりと閉じ始めた。
まるで――
“決断を待っている”かのように。
A君「……待って……!
まだ……!」
A君が手を伸ばすと、
空間全体が低く唸った。
〈!-- 整合性:警告(重大) --〉
〈!-- rollback-core:不安定 --〉
B君「うわっ……!
また揺れてる……!
これ絶対ヤバいやつだって!!」
O君《A君……
“核心”に触れようとすると……
世界が拒否する》
AB君【A君……
でも……
ここを越えないと……
“昨日”は戻らない】
黒い穴の奥で、
“昨日の声”がまた響いた。
――「A君、昨日さ……」
A君「……誰なんだよ……
俺に……何を言ったんだよ……!」
A君の叫びに呼応するように、
unknown-node-02 の影が揺れた。
影は黒い穴の前に立ち、
空間にログを走らせる。
〈!-- access: pending --〉
〈!-- rollback-core:保護モード --〉
〈!-- 整合性:優先度↑ --〉
O君《unknown-node-02 が……
“世界優先”に切り替えた》
B君「世界優先って……
Aの記憶より世界の方が大事ってこと……?」
AB君【unknown-node-02 は……
“世界の整合性”を守る存在】
A君「……じゃあ……
俺の昨日は……?」
O君《A君の意志が強ければ……
例外的に“戻せる”》
B君「じゃあ戻そうよ!!
Aの記憶なんだし!!」
その瞬間、
空間に鋭いログが走った。
〈!-- 整合性:警告。 -->
〈!-- 整合性:警告。 -->
〈!-- 整合性:警告。 -->
同じログが三連続で表示される。
B君「……な、なんだよこれ……
なんで“警告”が増えてんだよ……!」
O君《B君……
“戻す”って言葉に反応した》
AB君【世界が……
“拒否”してる】
A君「……俺の記憶なのに……
なんで……?」
unknown-node-02 の影が、
A君の方へ向き直った。
その動きは、
まるで“観測対象の優先度を切り替える”ようだった。
〈!-- access-level:再評価 --〉
〈!-- request-source:A --〉
A君「……俺は……
昨日を……取り戻したい……」
その言葉に、
黒い穴がわずかに開いた。
しかし――
同時に空間が激しく揺れた。
〈!-- 整合性:重大警告 --〉
〈!-- rollback-core:危険域 --〉
B君「やばいやばいやばい!!
これ以上やったら世界壊れるって!!」
O君《A君……
“戻すか”
“守るか”
どちらかを選ばないと……》
AB君【A君……
君の“意志”が……
世界を揺らしてる】
黒い穴の奥で、
“昨日の影”が揺れた。
誰かの後ろ姿。
誰かの声。
誰かの言葉。
――「A君、昨日さ……」
A君「……っ……!」
A君は胸を押さえた。
A君「……思い出したい……
でも……
世界が……」
unknown-node-02 の影が、
A君の前に立った。
影は静かに手を伸ばし、
空間にログを走らせる。
〈!-- rollback-core:保留 --〉
〈!-- access:停止 --〉
〈!-- 整合性:安定化処理 --〉
黒い穴が完全に閉じた。
B君「……閉じた……?」
O君《unknown-node-02 が……
“判断を保留した”》
AB君【A君の意志と……
世界の整合性が……
拮抗してる】
A君「……俺の……
昨日は……?」
O君《“戻せる状態”にはなった》
AB君【でも……
“戻していいか”は……
まだ決まってない】
空間に最後のログが浮かんだ。
〈!-- decision-required --〉
〈!-- 所有権:未確定 --〉
B君「……決めろってこと……?」
O君《うん……
A君だけじゃなく……
4人全員で》
AB君【“記憶を戻すか”
“世界を守るか”】
空間が静まり返った。
A君は拳を握りしめた。
A君「……俺の記憶は……
俺のものだ……」
その言葉が、
次の物語の始まりだった。




