第10話 編集の現場(ロールバック層)~核心の輪郭~ [3/4]
黒い穴の奥から聞こえた“昨日の声”は、
A君の胸の奥を鋭く刺した。
――「A君、昨日さ……」
その声は確かに“昨日の誰か”の声だった。
しかし、誰の声なのかはまだ分からない。
A君「……俺……
昨日……誰と……?」
A君が黒い穴に近づくと、
空間全体が低く唸った。
〈!-- 整合性:再計算中 --〉
B君「……おい……
なんか嫌な音してるんだけど……」
O君《A君の“昨日”に触れようとしてるから……
世界が揺れてる》
AB君【A君……
ゆっくり……
焦らないで】
黒い穴の縁は、
まるで“生きている”かのように脈動していた。
A君が手を伸ばすと、
穴の表面が波紋のように揺れた。
A君「……触れられる……?」
O君《触れられるけど……
“触れた瞬間に何が起きるか”は分からない》
B君「分からないって……
お前……!」
O君《A君の“昨日”は……
世界の整合性に関わってる》
AB君【だから……
世界が“拒否反応”を起こす可能性がある】
その時、
unknown-node-02 の影が動いた。
影は黒い穴の前に立ち、
空間に新しいログを走らせる。
〈!-- rollback-core: protected --〉
〈!-- access-level: restricted --〉
B君「……アクセス制限……?」
O君《unknown-node-02 が……
“核心への直接アクセス”を制限してる》
A君「なんで……
俺の記憶なのに……?」
AB君【A君……
“記憶の所有権”は……
必ずしも“本人だけのもの”じゃない】
A君「……え……?」
O君《A君の記憶は……
“世界の整合性”にも関わってる》
A君は息を呑んだ。
A君「……俺の記憶が……
世界に影響してる……?」
unknown-node-02 の影が、
A君の方へゆっくりと向き直った。
その動きは、
まるで“観測対象を切り替える”ようだった。
〈!-- 整合性:警告(軽度) --〉
B君「……警告!?
軽度って……
軽度でこれなの……?」
O君《A君が“核心”に近づきすぎてる》
AB君【でも……
ここを越えないと……
A君の昨日は戻らない】
A君は黒い穴を見つめた。
穴の奥には、
“昨日の教室”の断片が揺れている。
黒板。
机。
窓の光。
そして――
誰かの後ろ姿。
A君「……あれ……
誰だ……?」
その瞬間、
空間が大きく揺れた。
〈!-- rollback-core: destabilized --〉
〈!-- 整合性:警告(中度) --〉
B君「うわああああああ!!
なんか揺れてる!!」
O君《A君!!
核心に触れようとすると……
世界が“拒否”する!!》
AB君【A君……
でも……
ここを越えないと……】
A君「……俺は……
昨日を……
取り戻したい……!」
A君が黒い穴に手を伸ばした瞬間――
unknown-node-02 の影が、
A君の手を“遮るように”動いた。
〈!-- access-denied --〉
〈!-- 整合性:重大警告 --〉
空間が激しく揺れ、
ログが乱れ飛ぶ。
B君「やばいやばいやばいやばい!!」
O君《unknown-node-02 が……
“核心へのアクセス”を拒否してる!!》
AB君【A君……
これ以上は……
“世界が壊れる”】
A君は震える手を握りしめた。
A君「……でも……
俺の昨日は……
俺のものだ……!」
その言葉に、
unknown-node-02 の影がわずかに揺れた。
まるで――
“判断を保留した”ように。
〈!-- access: pending --〉
O君《……A君の意志が……
unknown-node-02 の判断を揺らしてる》
B君「揺らしてるって……
そんなことあるの……?」
AB君【A君の“意志”は……
整合性より強い時がある】
黒い穴の奥で、
“昨日の声”がもう一度響いた。
――「A君、昨日さ……」
A君「……っ……!
思い出したい……
俺は……!」
空間が震え、
ログが乱れ、
unknown-node-02 の影が揺れる。
〈!-- access: pending --〉
〈!-- 整合性:重大警告 --〉
〈!-- rollback-core:不安定 --〉
O君《A君……
これ以上は……
“選択”が必要になる》
AB君【A君……
“戻すか”
“守るか”】
黒い穴が、
ゆっくりと閉じ始めた。
まるで――
“決断を待っている”かのように。




