第10話 編集の現場(ロールバック層)~編集の現場~ [1/4]
A君の視界が真っ白に染まったあと、
ゆっくりと“別の空間”が立ち上がってきた。
そこは――
教室でも廊下でもなかった。
白い床。
黒い壁。
天井は存在せず、
代わりに“ログのような文字列”が空中を流れている。
〈!-- rollback-sector: 02-C/restore --〉
〈!-- memory-restore: progress 41% --〉
〈!-- owner: A --〉
B君「……うわ……
ここ……完全に“現実じゃない”やつだ……」
B君の声は、空間に吸い込まれるように響いた。
音が遅れて返ってくる。
O君《ここは……
A君の“ロールバック層”》
A君「ロールバック……?」
AB君【記憶の“編集”が行われる場所】
A君は息を呑んだ。
目の前には、
“編集ログ”のようなものが浮かんでいた。
〈!-- ロールバック:実行。 -->
〈!-- rollback-target: A/02-C --〉
〈!-- reason: 整合性エラー --〉
A君「……これ……
俺の記憶が……巻き戻されたログ……?」
O君《うん。
A君の“昨日”は……
世界の整合性を保つために巻き戻された》
B君「いやいやいや……
世界の整合性って何だよ……
そんな理由で人の記憶いじるの……?」
O君《unknown-node-02 は……
“世界優先”で動く》
A君「世界……優先……?」
AB君【人間の感情や記憶より……
“世界の整合性”が上位にある】
その時、空間の奥で影が揺れた。
unknown-node-02 の影だ。
影はゆっくりと近づいてくる。
しかし、形は曖昧で、
人のようで人ではない。
B君「……来た……
あいつ……」
O君《大丈夫。
敵じゃない》
AB君【ただ……
“観測している”だけ】
unknown-node-02 の影が、
A君の前で静止した。
そして――
空間に新しいログが走った。
〈!-- rollback-log: display --〉
黒い壁に、
“昨日の編集履歴”が映し出される。
〈edit 02-C〉
・A君の昨日の行動ログ → 整合性エラー
・B君の昨日の記憶 → 巻き戻し
・A君の主観領域 → 隔離
・補完記憶 → 生成
・ロールバック → 実行済み
A君「……これ……
俺の……昨日が……?」
B君「俺の昨日も……巻き戻されてたのかよ……!」
O君《うん。
B君の“昨日の欠落”は……
このロールバックの副作用》
AB君【……やっぱり……
僕の“二重化”も……
ここに繋がってる】
A君「AB……?」
AB君【僕は……
“二つの記憶”を持ってる】
AB君は胸に手を当てた。
AB君【本来の記憶と……
ロールバック後の記憶】
B君「……だから二重化してたのか……?」
AB君【うん……
僕は……
“編集の途中で分岐した存在”】
その言葉に、
A君の胸が強く締めつけられた。
A君「……俺のせいで……?」
AB君【違うよ。
A君のせいじゃない】
O君《ロールバックは……
“世界の判断”》
unknown-node-02 の影が、
静かにA君を見つめた。
その視線は冷たくも温かくもない。
ただ“観測者”の目。
〈!-- rollback-sector: 02-C/restore 58% --〉
ログが進む。
B君「……なぁ……
これ……
Aの昨日……戻るのか……?」
O君《戻る。
でも……
“全部”じゃない》
A君「全部じゃ……ない……?」
AB君【ロールバック層は……
“編集の現場”】
O君《戻すかどうかは……
unknown-node-02 の判断》
その瞬間、
unknown-node-02 の影がわずかに動いた。
空間に新しいログが走る。
〈!-- rollback-authorization: pending --〉
〈!-- request-source: A --〉
A君「……俺……
昨日を……取り戻したい」
その言葉に、
空間が静かに震えた。
〈!-- rollback-authorization: evaluating --〉
unknown-node-02 の影が、
A君の“意志”を観測している。
B君「……A……
お前……」
A君「俺の昨日は……
俺のものだ」
その瞬間――
ログが変わった。
〈!-- rollback-authorization: granted --〉
O君《……A君……
“本当の昨日”が……
戻るよ》
空間が大きく揺れた。
ロールバック層が、
A君の“昨日”を復元し始めた。




