第7話 B君の消えた一日(代替生成)~“書き換え後の昨日”と、世界の沈黙~ [4/4]
〈!-- 代替記憶:適用完了。 -->
その通知が消えたあと、教室は一瞬だけ“無音”になった。
夕陽は完全に沈み、教室は薄暗い影に包まれている。
窓の外の街灯が、机の縁をかすかに照らしていた。
B君はゆっくりと顔を上げた。
B君「……ああ。
昨日のこと、思い出したよ」
その声は穏やかだった。
しかし、どこか“別の何か”を含んでいるように聞こえた。
A君「本当に……?」
B君「うん。
昨日の俺は……
ちゃんとここにいた」
A君は胸を撫で下ろしかけて――
すぐに違和感に気づいた。
A君「……昨日のどこに座ってた?」
B君「え?
そこだよ、Aの右斜め前」
A君は息を呑んだ。
A君「……B。
お前の席、そこじゃないだろ」
B君はきょとんとした顔をした。
B君「え?
いや、俺はずっとそこだけど?」
O君とAB君が同時に顔を上げた。
O君
AB君【“昨日の位置情報”が……
別の世界線のものだ】
B君「え、どういう……?」
B君は自分の席を見回した。
しかし、そこには“昨日の自分”の痕跡がない。
代わりに――
B君の机の中には、見覚えのないプリントが入っていた。
B君「……これ、俺の字じゃない」
プリントの端には、
“B君の筆跡に似せた文字”でこう書かれていた。
――「昨日の復習:AとOとABと会話」
A君「……昨日の俺たち、そんな復習してない」
O君《うん。
そんなプリント、配ってない》
AB君【これは……
“代替記憶の補強データ”だ】
B君「補強……?」
AB君【代替記憶を“本物に見せるため”の
周辺データ】
A君「……つまり、昨日の記憶を“本物っぽく”するために
unknown-node-02 が作ったってことか?」
O君《可能性は高い》
B君は震える声で言った。
B君「じゃあ……俺の昨日って……
本当に“俺の昨日”じゃないのか……?」
その問いに、誰も答えられなかった。
その時――
教室の空気が、また一瞬だけ揺れた。
〈!-- 整合性:周辺領域、安定化。 -->
黒板の文字が一瞬だけ“別の配置”に見えた。
しかしすぐに元に戻る。
A君「……今の、見えた?」
O君《うん。
“整合性の再計算”が終わった》
AB君【世界が……
“B君の昨日”を確定させた】
B君はゆっくりと息を吐いた。
B君「……俺の昨日は……
“そういうことになってる”ってわけか」
A君「B……」
B君「大丈夫だよ、A。
昨日の俺は……
ちゃんとここにいたんだ」
その言葉は優しかった。
しかし――
A君は背筋が冷たくなるのを感じた。
B君の“昨日の記憶”は確かに戻っている。
だが――
**それは本当に“この世界の昨日”なのか?**
A君は思わず息を呑んだ。
A君「……B。
お前の昨日って……
本当に……“お前の昨日”なのか?」
B君は微笑んだ。
B君「もちろんだよ。
だって――
“世界がそう決めた”んだから」
その瞬間、
unknown-node-02 の無機質な声が、
闇に沈んだ教室に静かに落ちた。
〈!-- 整合性:安定。 -->
――世界は、
B君の“昨日”を確定させた。
その内容が正しいかどうかは、
もう誰にも分からなかった。




