第7話 B君の消えた一日(代替生成)~B君の冗談と、“本当に始まるメンテナンス”~ [1/4]
放課後の教室は、昼間の喧騒が嘘のように静かだった。
夕陽が窓から差し込み、机の影を長く伸ばしている。
蛍光灯はつけていない。
オレンジ色の光だけが、4人の姿を淡く照らしていた。
A君はまだ少し顔色が悪い。
昨日の“補完”の影響が残っているのだろう。
O君は黒板の前で腕を組み、何かを考え込んでいる。
AB君はノートを開いたまま、視線を宙に漂わせていた。
そんな空気の中で――
B君だけが、いつも通りだった。
B君「なぁ……昨日のA、完全に“メンテ中のプレイヤー”だったよな」
A君「……お前、よくそんなこと言えるな」
B君「いやいや、だってさ」
B君は指を折りながら、妙に楽しそうに続けた。
B君「Aはログインしたまま強制アップデートされてるし、
unknown-node-02 は“緊急メンテのお知らせ”みたいな声出すし、
ABは裏事情知ってるデバッガーだし、
Oは規約で縛られてるGMだし」
A君「……お前、まとめるの上手すぎだろ」
O君《……否定はできない》
AB君【構造的には、あながち間違ってない】
B君「だろ?
で、俺は一般プレイヤー。
“なんでAだけメンテされてんの?”って混乱する役」
A君「お前……自分で言うなよ……」
放課後の教室に、少しだけ笑いが戻った。
夕陽が机の上で揺れ、影がゆっくりと伸びていく。
――その瞬間だった。
B君の表情が、ふっと曇った。
B君「……あれ?」
A君「どうした?」
B君「昨日……俺、何してたっけ?」
A君とO君とAB君が、同時に顔を上げた。
A君「昨日?
普通に一緒にいたじゃん。
俺の補完の話もしたし」
O君《うん。
B君はずっと教室にいた》
AB君【僕も会話を覚えてる】
しかし――
B君は首を横に振った。
B君「……いや、覚えてない。
昨日の記憶が……まるっと無い」
A君「え……?」
B君「俺……昨日、何してたんだ?」
その声は冗談ではなかった。
本気で困惑している声だった。
A君は思わず立ち上がった。
A君「おい、やめろよ……
昨日は普通に話してただろ?」
B君「……覚えてないんだよ。
昨日の朝から……全部」
夕陽がB君の横顔を照らし、
その影が机の上に落ちる。
O君がゆっくりとB君に近づいた。
O君《B君……
本当に何も?》
B君「うん……
なんか……“昨日”っていう感覚がないんだ」
AB君がノートを閉じ、静かに言った。
AB君【……B君の“昨日”が、
世界から消えてる】
A君「消えてる……?」
B君「いやいや、そんなわけ――」
その時だった。
教室の空気が、
ほんの一瞬だけ“白くノイズ”を走らせた。
蛍光灯がついていないのに、
天井のあたりが一瞬だけ“光ったように”見えた。
〈!-- 代替記憶:生成完了。 -->
B君の身体がびくりと震えた。
B君「……っ……!」
A君「B!!」
B君は机に手をつき、深く息を吐いた。
B君「今……なんか……
頭の奥で“何かがはまる音”がした……」
O君《……始まった》
A君「始まったって……何が?」
AB君【B君……
君の“昨日”は……
“作り直された”】
B君「作り直し……?」
A君「おい……冗談だろ……?」
B君は震える声で言った。
B君「俺の“昨日”って……
誰が作ったんだ……?」
その問いに、
unknown-node-02 の“無機質な声”が重なる。
〈!-- 整合性:周辺領域、補正中。 -->
夕陽が揺れ、
教室の空気が静かに震えた。
――B君の“消えた一日”は、
世界の整合性のために“代替生成”されていた。




