第6話 unknown-node-02 の声(保守ノード)~揃えられる記憶と、“世界の整合性処理”~ [4/4]
A君の視界に“別の教室”が重なったあと、
教室の空気はさらに不安定になっていた。
蛍光灯の光がわずかに揺れ、
黒板の文字が一瞬だけ“別の配置”に見える。
B君「なぁ……これ、本当に大丈夫なのかよ……」
A君「……分からない。
でも……何かが“戻ってくる”感じがする」
A君は自分の頭を押さえた。
脳の奥で、何かが“縫い直される音”がする。
AB君【A君……
君の“欠落”は、
ほとんど補完されてる】
A君「ほとんど……?」
O君《補完が進むと……
“本来の記憶”と“補完された記憶”が
同じ場所を取り合う》
A君「取り合う……?」
AB君【うん。
どちらも“正しい”から】
その瞬間、A君の視界がまた揺れた。
今度は――
“知らないはずの友達の顔”が一瞬だけ浮かんだ。
A君「……誰だ……今の……?」
B君「誰って……誰が見えたんだよ!」
A君「分からない……
でも……“知ってた気がする”……」
A君の声が震える。
A君「俺……誰を忘れてたんだ……?」
その問いに、
O君は答えようとして――
喉の奥で言葉が止まった。
O君《……言えない》
B君「またかよ……!」
O君は苦しそうに目を伏せた。
“語れない領域”が、A君の欠落に触れている。
その時――
〈!-- 補完率:七八%。 -->
A君「……っ!」
B君「今の……数字……?」
O君《補完の“進行度”だ》
AB君【A君……
君の記憶は、
もう“ほぼ揃ってる”】
A君「揃ってる……?」
A君は胸に手を当てた。
鼓動が二重に聞こえる。
A君「……俺……二人いるみたいだ……」
B君「二人……?」
A君「“思い出してる俺”と……
“思い出してない俺”が……
同時にいる……」
AB君がわずかに息を呑んだ。
AB君【……A君……
それ、“揃え方”が……おかしい】
A君「おかしい……?」
AB君【本来の補完は……
“欠けた部分だけ”を埋めるはず】
O君《でも……unknown-node-02 は……》
O君は言いかけて、
また言葉を失った。
O君《……言えない》
B君「なんなんだよ……!」
A君の視界がさらに揺れた。
今度は――
“別のA君の記憶”が一瞬だけ流れ込んだ。
知らない教室。
知らない席順。
知らない会話。
A君「……っ……!
これ……俺じゃない……!」
AB君【A君……
君の“欠落”は……
“別のデータ”で埋められてる】
A君「別の……?」
O君《unknown-node-02 は……
“整合性”を優先する》
A君「整合性……?」
O君《A君の“本来の記憶”よりも……
“世界が破綻しない記憶”を選ぶ》
A君の顔が青ざめた。
A君「じゃあ……俺の記憶は……
本物じゃなくなるのか……?」
AB君【“本物”の定義が……
世界側に移る】
A君「……っ……!」
その瞬間、
A君の耳元で、最後の通知が落ちた。
〈!-- 揃エル:完了。 -->
A君の身体が大きく震えた。
B君「A!!」
A君「……俺……
何を……思い出したんだ……?」
A君の瞳が揺れる。
“二つの記憶”が重なり、
どちらも“本物”として存在している。
AB君【A君……
君の“欠落”は……
もう“戻された”】
O君《そして……
“揃えられた”》
教室の空気が静かに震えた。
――A君の記憶は、
世界の整合性によって“再配置”された。
その結果が、
“正しい”のかどうかは――
まだ誰にも分からなかった。




