第6話 unknown-node-02 の声(保守ノード)~夢の底で聞こえる“保守ノードの声”~ [1/4]
A君は、その夜、妙に浅い眠りの中にいた。
夢を見ているのか、
ただ意識が沈んでいるだけなのか、
境界が曖昧なまま、視界がゆっくりと開いていく。
そこは教室ではなかった。
家でも、街でもない。
――白い空間。
床も壁も天井もない。
ただ、白い“面”がどこまでも続いている。
A君(……ここ、どこだ?)
声は出なかった。
出そうとした瞬間、音が吸い込まれるように消えた。
その時だった。
――カチ、カチ、カチ。
何かが“起動する”ような音が、
白い空間の奥から響いてきた。
A君(……誰か、いるのか?)
返事はない。
ただ、音だけが近づいてくる。
そして――
視界の中心に“黒い点”が現れた。
点はゆっくりと形を変え、
やがて“文字”になった。
――「戻ス」。
A君(……戻す?)
次の瞬間、別の文字が浮かぶ。
――「整エル」。
さらに続く。
――「正ス」。
――「揃エル」。
どれも、どこか“機械的”で、
人間の言語とは違うリズムを持っていた。
A君(……何だよ、これ……)
文字はA君の周囲を回り始めた。
まるで“検査”されているように。
その時、
白い空間の奥から“声”が響いた。
<!-- 保守、開始。-->
A君(……誰だ!?)
<!-- 欠落、検出。-->
A君(欠落……?)
<!-- 巻戻シ、確認。-->
A君(巻き戻し……Bのことか?)
<!-- 観測者、揺レ。-->
A君(観測者……AB……?)
声は淡々としているのに、
どこか“冷たい意志”を感じさせた。
<!-- 整エル。正ス。揃エル。-->
A君(やめろ……!)
叫ぼうとした瞬間、
白い空間が“ひび割れた”。
視界が崩れ、
A君は落ちていく。
――深い、深い、ログの底へ。
そして――
A君「……っ!」
A君は布団の中で跳ね起きた。
心臓が激しく脈打っている。
A君「……夢、か……?」
だが、夢にしてはあまりにも“鮮明”だった。
あの言葉。
あの声。
あの白い空間。
どれも、現実のように残っている。
翌日、教室。
B君「おはよー……って、A。顔色悪っ」
A君「……変な夢を見たんだよ」
O君《夢……?》
A君「白い空間で……
“戻ス”“整エル”“正ス”“揃エル”って文字が……
勝手に浮かんで……」
その瞬間、
黒板の前にいたAB君が、
ピタリと動きを止めた。
A君「AB……?」
AB君はゆっくりと振り向き、
白いチョークを握りしめたまま言った。
AB君【……それ、“保守ノードの言語”だ】
B君「保守……ノード?」
O君《unknown-node-02……》
A君「知ってるのか?」
AB君は黒板に向かい、
白いチョークで一文字書いた。
――「保」。
AB君【“戻ス/整エル/正ス/揃エル”は、
“世界の整合性を保つノード”の言語】
A君「世界の……整合性……?」
O君《A君の夢は……夢じゃない》
A君「え?」
O君《“ログ領域”にアクセスしたんだよ》
B君「ログ……?」
AB君【“記録の底”だ。
僕たちが触れられないはずの領域】
A君「なんで俺が……?」
AB君はA君を見つめた。
その瞳は、どこか“二つの記憶”を重ねているようだった。
AB君【A君……
君の“欠落”は、
保守ノードが“戻そうとしている”】
A君「戻す……?」
O君《unknown-node-02は、
“壊れた部分を修復するノード”》
B君「じゃあ……Aの欠落を?」
AB君【“正ス”対象だ】
教室の空気が、静かに震えた。
――A君の夢は、
世界の“保守ノード”からの通知だった。




