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【近未来三】

 ゴルフ場。快晴の青空の下、社長と某国首脳がコースを回っている。某国首脳の腕前はかなりのものだと、招待されたプロゴルファーが絶賛する。俺も褒めろよ、俺はそうでもないか、と社長が冗談を口にする。みんなが笑い、プロゴルファーの言葉に気分を良くしたのか、某国首脳にも笑みがこぼれる。終始穏やかな雰囲気でゲームは進んでいく。第六コース、パースリー、某国首脳の放った一打目が、ピンそば三十センチ辺りのところに止まる。ホールインワンかと思われた打球が上がり、ピンに伸びて転がっていく時、周りにいる誰もが驚嘆の声を上げ、惜しくもカップに入らなかった時は誰もが惜しみの声を発し、そして誰もが某国首脳のナイスショットを拍手と喝采で讃えた。某国首脳は悔しさを表現したが、皆の称賛の声に手を挙げて応えた。

 二打目を打つため、ティーグラウンドを後にする際、某国首脳の隣に歩み寄り、「実に惜しかったですね」と社長が声を掛ける。

「あとこのくらいだったのですが」と某国首脳がボールからピンまでの距離を両手で表現し、悔しそうな表情を作る。

「それだけの腕前ですと、本当にゴルフが好きで、たくさん練習したのでしょうね」

「ゴルフは好きですが、今日はたまたま調子がいいだけです」

「ご謙遜を。でも今日は天候にも恵まれて、あなたとこうしてコースを回れて、最高の気分です。あなたにも楽しんでいただけたら幸いです」

「今日はご招待いただきありがとう。私の気分も、晴れやかです」

「それは良かった」太陽の光に目を細め、並んで歩く両国首脳。社長が伸びをするように両手を上げ、深呼吸をする。それにつられたように某国首脳も大きく息を吸い込む。のどかな昼下がり。

「この世界中の誰もが、今の我々のように穏やかな気持ちで仕事に取り組み、話し合い、心を通わせながら、自分の為、そして誰かの為に、それぞれのやりたい事、やるべき事を一生懸命になって、存分に楽しみながら、希望を胸に抱きつつ、充実した日々を過ごしていけたなら、こんなに素晴らしい事はないと思いませんか」微笑を絶やさぬまま某国首脳の横顔に目を向け、言葉を投げかける社長。社長の顔に目をやり、数秒目を合わせたのち、青空を見上げ、日の降り注ぐ緑のフィールドに目を落とし、某国首脳が静かに答える。

「そうかも、知れません」

 そしてゆっくりと前を向き、

「あなたの…、言う通りかも知れない」

 最後に真剣な表情で社長の目を見つめながら、述べる。

「私も色々、考えました。いや、考えさせられた。あなたと幾度も会談を重ねる内に、色々な事を、毎日のように…。あなたの語る、その言葉の意味と、それにまつわるあらゆる事象、事柄、物事について」

 二人はお互いの目を見据えるようにして向かい合いながら歩みを止める。そして某国首脳がゆっくりと口を開く。

「時間は、かかるかも知れない。今すぐには、無理かも知れない。それでも、我々は変わらなければならないと思います」静かな口調の某国首脳。「誰もが、変わる必要があるのかも知れません。共に、より良き未来を築く為に」某国首脳の表情に、真剣さが増す。

「それを、成長というそうですよ」

 社長が言葉を引き継ぐ。

「誰もが成長してゆくその先にこそ、我々が望んでいるような、真の豊かさなんてものが見えてくるのかも知れません」

 俯くように視線をさ迷わせながら、何かを熟考する素振りを見せる某国首脳。社長が続ける。

「我々もまた、未熟です。できない事、分からない事がいくらでもある。これからも、失敗を繰り返すでしょう。過ちだって繰り返すかも知れない。でも、だからこそ、我々のような立場に置かれている人間の方こそが、まず、自分の果たすべき役割をシッカリと理解した上で、できる事の限りを尽くしていく事で、この世に生きる全ての人々に対して、その指針を示せるように、関わる全ての人たちと一緒になって、義務と責任を果たせるよう、共に、成長していかなければならないのかも知れません」

 某国首脳は、顔を上げて社長の目を覗き込む。その視線を受け止め、目を逸らさぬまま社長は続ける。

「それによって、どんな未来が訪れるのか。これは、私の興味です。好奇心です。冒険心でもあります。私は、見てみたい。その先に訪れる、未来を。私は、観たいんです。その先の、もっともっと先の未来の景色を、想像して、楽しみたいんです」

 しばし沈黙が訪れる。

 そして、更に言葉を投げかける社長。

「その為には、あなたの協力が必要なのです。この世に生きる、全ての人々の協力が、必要なのです」

 そしてまた沈黙。

 某国首脳は視線を少しだけ外すと、僅かに笑みを湛えながら、口を開く。

「なるほど…。よおく、分かりました。あなたという、人間が。そしてあなたという人間の語る、その言葉の真意と、あなたという人間の思い描く、その先の、未来が」

 そして、ゆっくりと右手を差し出しながら、宣う。

「あなたに、賛同します。こんなに胸がワクワクしたのは、久し振りだ」

 ゲッチュー。社長はその右手をシッカリと両手で握り締め、大きく息を吸い込みながら、心の中で会心のガッツポーズを決めた。

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