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【Mのお陰】

 オフィス。

「Mッチー、最近どう?」と隣の席に座る同期社員がMに訊ねる。

「どうって何がスか?」とMは訊ね返す。

「色々。忙しくて気が立ってないか?」

「まあ、多少気は立ってるかも知れませんが、忙しさのせいじゃないですよ」

「自分を見失うなよ」とどこか心配顔の同期社員。

「とっくにないですよ、自分なんて」と自嘲気味に答えるM。

「大丈夫、MっちゃんはMっちゃんなんだよね」と向かいの席に座る編集課の女性課長が割って入る。

「どういう事ですか?」とMは女性課長に顔を向ける。

「Mっちゃんは正義感が強いし、勇ましいって事」と女性課長が胸を張る。

「……」何と返していいか分からず無言のままのM。

「みんなMさんには期待してるんだから、変な気起こさないでよね」と女性課長の横で立ったまま原稿を眺めていた編集長も話に加わる。

「変な気って何です?誰かにそう言えって言われたんですか?」とMは質問する。

「誰によ」編集長の答えは素っ気ない。

「いや、分からないですけど…」Mは不気味さを感じる。会話が不自然な気がするのは気のせいか。

「私の子供も最近明るくなってきたし、Mさんも入社した頃に比べるとハツラツとしてるなと思ってさ」と明るい表情でそう口にする編集長。

「そう見えます?」意外そうな口調で訊ねるM。

「うん、見える。高度成長期とか、そんな印象」と真面目な口調で返す編集長。

「言えてるかも」そう言って横で笑う同期社員。きょとんとした表情を見せるM。

「編集長のお子さん、最近会社に電話してこないですね。今はちゃんと学校に行ってるんですか?」とMは話題を変える。

「ううん。学校には行ってないけど、でも友達はいるみたい。よく遊んでる。私もなるべく優しく接するようにしてるから、少しずつね」と答える編集長の目はどこか優しげだ。

「明るくなってきたなら良かったですね」Mは心からそう思い、口にする。

「うん。Mさんのお陰よ」と編集長がMに目を向ける。

「はい?何で僕のお陰なんです?」と不思議そうな顔を編集長に向けるM。

「ん?何となくだけど」と微笑みながら手に持っている原稿に目を落とす編集長。

「Mっちゃんのお陰で会社も変わってきたからね」と編集課の女性課長。

「本当ですか?」とM。

「Mッチー何気にやるからな」と同期社員が持ち上げる。

「何をです?」と驚きの口調で訊ねるM。

「またとぼけやがって」と同期社員がMを肘でつつく。

「この先のMさんの考えが知りたい」と編集長が原稿から顔を上げる。

「僕の考え?」

「そう、Mさんが今何を考えて、今後どうするのか」

「何でですか?」

「ん?何となくだけど。ホームページも閉じちゃったみたいだし、気になるから」

「誰かにそう聞くように言われたんですか?」不思議そうにそう訊ねるM。

「誰によ」

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