表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/62

【問題意識・危機意識】

 そんな事Mの考える事じゃねぇけどな。

 でもそろそろホントに考えないとこの会社やべぇよ。

 上が機能してないんだよ。

 会社全体が機能不全に近い。

 体制も整っていなさ過ぎだしな。

 確かに。

 最近Mは成長してるな。

 ホントかよ。

 言う事だけは。

 ダメじゃん。


 会議室に全社員が集められている。不在の社長の代わりに、演説をふるうのは本部長だ。

「今日みんなに集まってもらったのは、今後の売上の話だ。このままでは会社の経営が立ちいかなくなる事はみんな薄々気付いていると思うが、今後は営業以外の人間にも、営業に出てもらう。制作以外の人間は、全員営業も兼任してもらう」

 何を今更。これまでも全員が色んな仕事を兼任して、営業から雑用まで何でもこなしてきたじゃないか。そんな白けた空気が漂う。本部長の演説は続く。

「みんなこれまでも無理して仕事をこなしてきたという事は知っている。でも、これからは更にみんなで一丸となって売上を上げていかなければならない状況までこの会社は追い込まれている」

 この言葉に、一瞬社員の間に緊張が走ったようにMには感じられた。みんな会社の経営が芳しくないだろう事は薄々気付いていたが、上層部の人間に言葉にされて、初めてハッキリと意識させられたのかも知れない。

「一丸となるのは構いませんが、これまでも制作の人間以外は全員営業にも出ています。それにみんなこれ以上ないくらい仕事の負担を抱えて、いっぱいいっぱいの状態です。それはご存知ですか?」編集長が社員を代表して質問する。

「知っていますよ」本部長が答える。

「全員がこれ以上ないくらい仕事の負担を抱えて今の状況なんです。その現状把握と言いますか、それについての問題意識、危機意識はありますか?」

「危機意識は持っているつもりです」

「じゃあ何とかしてください。どう考えても人手が不足しているんです。人を増やしたところで長続きしないし、こっちも丁寧に面倒見ている暇がない。社長はどんどん事業を拡大しようとするし、足固めってものができないんです」

「新しい事業を始めたばかりで、まだ軌道にも乗ってないのにすぐに新しい事を始めようとする。うちのポスティング事業なんか金を生まないのに、それに社員が膨大な時間を取られてる。社長は何を考えて事業を拡大してるんですか?」Mの同期社員が口を添える。

 小刻みに頷きながら本部長が腕を組み、考える姿勢をとる。部長が呟くように言葉を発する。

「社長がワンマン過ぎるんだ。俺や専務の言う事にすら耳を貸さない」専務は無言で目をつむっている。

「専務も部長も社長の友達でしょ?専務は社長と一緒にこの会社を立ち上げたんでしょ?何とかしてよ」

「そもそも専務は毎日何をやっているんですか?」

 目をつむり、腕を組んで俯いたまま専務がボソリと口にする。

「経理的な事を任されている。お金の事、全般だ。後は雑誌の配送の手配とか、備品の管理とか」

「それって、専務の仕事じゃなくて経理とか総務ですよね。専務の仕事って何なんですか?」

「部長は何をやってるんですか?」

「毎日営業に飛び回ってるじゃないか」

「それはみんなやってます。部長の仕事をしてください。部下を育てるとか、まとめるとか」

「ハッキリ言って制作はもうギリギリの状態です。これ以上売上が伸びたとして、その分増える広告原稿を作っている時間がありません。人を増やしてくれない事には」

「ただ増やしても即戦力にならなければゆっくり教えてる時間もないけどね」

 次々と飛び出す社員たちの言葉に、収拾がつかなくなる。

「わかった。取り敢えず今の事業が軌道に乗って形になるまで、新規事業は起こさせない。制作の人間も募集をかけるなり外注を使うなり、工夫する」

 その本部長の宣言に、疑いの目を向ける社員たち。ホントかよ。社長が変わらなければ何も変わらないよ。社長を変えてくれよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ