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また逢う日まで パズルシリーズ  作者: 澪ナギ


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2/2

次は四人で。終わりのないパズルのピースを埋めよう

「……」

「…」


 カリナから話を聞いていたから、今置かれている状況は夢なんだとわかった。


「……」

「…」


 真っ白い空間。まるでセイレンの間みたいな場所で、目の前には今熱を出しているはずの女の子。


 この場では普通にしているその子と向き合って、思うこと。




 これ俺も見るの??



 この夢俺も見るんだ? カリナのこう、心配で夢に見ちゃったとかじゃないんだ??



「……」

「あそぼー」

「……おー」


 まるでそうだよ、って言うように、目の前の子は俺に近づいてきて手を取る。

 それにされるがままなのはいつのもこと。周りを見渡して、夢の中の俺もカリナ同様あそんできたんだろう、たくさんのおもちゃを見た。


 そうして、自然と。


「今度はなにしてあそぶ?」


 そんな言葉が出ていた。

 まるで、今この瞬間まで”俺”があそんできたかのように。


 それに違和感を覚えたのは、数秒後で。


「……」

「レグナ?」

「んや?」


 ちょっとこれ質の悪い夢かもなって、苦笑いをこぼす。


 クリスティアが「次はね」って言っている中で、辺りをもっかい見渡した。



 真っ白な部屋。

 クリスティアが広げたおもちゃ以外はなにもない、声が少し響く、そんな空間。



 ここには、覚えがある。

 運命の日が来て死んだら、俺たちが帰ってくる場所。普段はひとりひとりだけど、たまに他のとこにあそびに行くから、クリスティアがいることに違和感なんてない。


「……」

「レグナー」

「んー」

「次これ」

「パズル?」

「うん」


 桜の、いつかの人生でカリナが贈ったもの。あぁ、あれ気に入ってたからセイレンに頼んでここにも置いたんだっけ、なんて。



 自然とそんな風に考えた。



 そして、またこれも当然のように、思う。






 ――これが終わったら、行かなきゃ、なんて。




「……」

「これ、や?」

「んや、そういうんじゃないよ」


 当たり前に思ったことに、突然我に返ることを繰り返す。

 どっちが本当なんだっけって、境界線があいまいになっていくのを感じながらパズルのピースを手に取った。



「……」

「これこっち」

「さすがクリス、よくわかるね」

「でしょー」


 端っこのピースから埋めていって、笑いながらパズルを完成させていく。


「これここ?」

「そー」

「んじゃこれこっちか」

「…せいかい」


 ぽんぽん嵌めていくと、クリスティアは少しだけ寂しそうな声をした。


 そこで、気づく。

 クリスティアの、パズルを埋めていくペースが少し遅いことに。




 あぁ、これ。



 わざと時間がかかるようにしてんのかな、って。



 そうしたら、カリナが教えてくれた”お別れ”までの時間が稼げるから。

 それがわかって、俺はそんなお別れなんてする気ないけどねと、心に思う。



 けれど、口からは出なくて。



「……」

「…」


 パズルが少しずつ埋まっていくにつれて、二人とも口数が減っていく。



「……」

「…」


 そうして、しばらくして。


「……これが最後かな」



 ぱち、ぱちと。

 二人で埋めていったパズルは、終わりを迎えた。


 俺が持っている最後のピース。それをクリスティアに掲げたら、彼女は寂しそうに笑う。俺もそんな顔してんのかな。



 笑ってるのに、笑えてる感じがしないや。



 まぁ別に、これを嵌めなければ終わることなんてないんだし。これを、適当に手で弄んでれば――。



「……」



 そう、思うのに。



 さすが夢って言うべきかな。



 体が、そこから勝手に動き出した気がした。



「…埋めちゃう?」



 寂しそうに言うクリスティアに、首を横に振ろうとした。けれど言うことは聞かずに、縦に頷いて。

 ピースを持った手が、パズルへと伸びていく。



 そうして、ゆっくりと伸びていって。



 止まれという心に相反して、ぱちんと。パズルのピースが嵌まった。



「……」

「…」


 勝手に、口が開く。


「んじゃ、俺行かなくちゃ」


 どこにだよ、って思うのに、体は立ち上がった。


 見下ろしたクリスティアは、どうにか頑張って微笑みを作ってる。それに、ぐっと心が締め付けられながら、振り返った。



「……これで、終わりだね」



 目の先には、列車。

 あれに乗って。




 俺はこの人生を終えるんだ。




 心と体が一致したような感じがして、歩き出す。


 一歩、また一歩。


 その途中で、はっと我に返って。



 これは夢だろと、自分に言い聞かせる。



 そう、夢だ。カリナが話していた夢。


 俺は別に人生を終える気なんてない。

 このまま四人で歩いていく。それは、あの日決め直してからずっと、もう変わっていない。



 だから、クリスティアにそれを伝えようと、今は後ろになった彼女に振り返った。




 その、先に。



「…、っ」



 今にも、泣き出しそうに。目に大粒の涙をためたクリスティアがいた。



 いつものワンピースの裾をぎゅっと握って。

 どうにか頑張って、俺を呼ばないようにして。


 それでも、一歩たまに歩み出て、また戻る。




 ―――あぁ。




 これ結構、堪えるわ。



 夢であっても、その姿に喉が痛くなって、目に何かこみあげてくる。



 足はまだ、列車の方に歩みだそうとする。けれどどうにか、どうにかそれを振り切って。




 走り出した。




 それを見たクリスティアは顔をくしゃりとゆがめて、口を開く。



「、れぐ、な」

「クリス」


「レグナ、っ、ぅ」


 歩み寄っていけば。


「ぅ、あ、」


 ついには声をあげて泣き出してしまったクリスティアの前にしゃがんで、手を伸ばした。



 目元をぬぐってやりながら、こぼれてしまう涙を構わずに、彼女の肩に頭を寄せる。


「レグナ、ごめんね」

「……なんで謝るの」

「さよなら、しなきゃいけないのに」


 そうだね、と。

 自然とこぼれていた。


「みんな、決めてるのに」

「うん」


 おねがい。


「もう一回だけ、あそぼ?」


 いいよ、っていつもなら言ってるのに。今日はそれがつっかえて出なかった。



 代わりに出たのは、



「……これで最後だよ」



 なんて、思ってもいない言葉。

 それでも、クリスティアは頷いて。



 顔を上げたら、やっと笑ってくれた小さな親友に、俺も笑って。


 手を引かれるまま、クリスティアと歩き出した。




「……」

「……大丈夫か」


 次に気づいた時には、見慣れた天井と、見慣れた親友だった。


 そこで、ほっと息をつく。


「夢だわ……」

「カリナも見ていたと聞いたが」

「そのカリナが言っていた夢を俺も見たわ……」

「どんな偶然だ……」


 起き上がって、さっきの現実味を帯びた夢を思い出して。思わずうつむいて顔を覆った。


「平気か」

「メンタル結構やられる」

「俺達がクリスティアと別れを選ぶ夢だったか」

「そ。そんで、クリスティアが泣きながらもう一回あそぼって言ってくる」

「それは堪えるな」


 笑って言う親友に、俺もようやっと少し笑って。


「リアスも見るかな」

「どうだろうな。夢であっても無事に逢えるというのはいいんだが。内容的にあまり今は見たくないな」

「フラグ?」

「今だけは本当にやめてほしい。見たら恨むからな」

「夢は俺もコントロールできないよ」


 肩を竦めて。

 順番で寝に来たリアスと入れ替わるようにベッドから立ち上がる。


 そうして、振り返って。



「リアス」

「ん?」


 親友へ、一言。



「クリスと、あそんであげてね」


 そう言えば、一度きょとんとしてから親友は笑う。



「当然」


 それを聞いて。

 リアスなら多分大丈夫かなと、親友に笑ってから。



 きっとあと少しで目覚めるであろう小さな親友が、少しでも楽になるよう手を尽くすため、部屋を出た。




『次は四人で。終わりのないパズルのピースを埋めよう』/レグナ






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