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魔力は垂れ流すもの!  作者: 南国ブラックベア
16/17

付与不適合

「どうしたッスかアニキ? なんだか浮かない顔してるッスよ」

「ウィルか」


 授業の前、自分の机で腕組みをしつつ先日の出来事をまとめていた。

 エドウィンは死んで、ヴォルトの安全は確保されたと言っていい。しかし問題なのは、なぜあの場にヴィクトル様が現れたかだ。

 もちろんだが、俺たち一家は誰も情報を漏らしてはいない。可能性があるとすれば、国が極秘裏にエドウィンを調査していた、これしか有り得ないんだ。

 ヴィクトル様は去り際に「(うみ)の排除に協力してくれて感謝する」とも言っていたし、まさか俺たちの行動が読まれてた? う~ん、謎だ……。


「な~にバースト、今日はやけに大人しいのね」

「ファーナか。いつもは騒がしいって言いたいのか?」

「むしろ騒がしいのはファーナの方ッス」

「確かにな」

「はぁ? あたしのどこが騒がしいってのよ! どっからどう見てもおしとやかな美少女でしょうが!」

「「「さっそく騒がしいわけだが」」」

「うるさ~~~い! アンタら3人とも謝んなさい!」


 キィィ……


「はいはい、お静かに。廊下まで聴こえてますよ」


 俺とウィルとヴォルトで呆れかえっていると、サボりの常習犯トーマス先生が肩を竦めて現れる。


「それで本日の授業ですが……お喜びください皆さん、皆さんの大好きな自習になりましたよ!」

「「「ふざけんな!」」」


 ま~たサボりかよ。たまには教師らしいところを見てみたいもんだ。


「すみませんねぇ。今回はサボりじゃないんですよ?」

「「「嘘つけ!」」」

「いえいえ、本当です。陛下から登城命令が下りましてね、本日中に顔を出せと言われているのですよ」

「「「嘘くせぇ」」」

「だから本当ですってば!」


 だったら嬉しそうに言うなっつ~の。


「てかさ、アレだろ? サボり過ぎていよいよクビとかじゃね?」

「「「ああ~」」」

「バ、バカ言っちゃいけませんよ、これでも真面目な魔術師で通っていたんですから」


 ――の割には焦ってるようで。


「そもそもクビにするのに呼びつけたりはしないでしょう。まったく、誰のせいで呼ばれたと思ってるんだか……」チラチラ


 そこで俺を見るなよ。俺が関係してるみたいじゃないか。


「とにかく、今日1日は戻れないと思いますので、バーストくん、臨時教師をお願いしますね」

「は~い――」




「――俺っ!?」

「はい。バルドスから聞いてますよ? 最近ますます魔力のコントロールが上手くなったと」


 そうか? いや、実戦で何度もつかってるし、そうなのかもな。というかバルドスって誰だっけ?(←ギルマスだよ!)



★★★★★



「何でか知らんけど、俺が教えることになった」

「待ってましたよアニキ~! ささ、早いとこ魔法でバーンする方法を教えてくださいッス!」

「おけおけ。まずは竜を見つける、血液を採取、飲んで生き残ったら見事覚醒、分かったか?」

「「「絶対に無理!」」」


 無理と言われようが、これ以外の手段を知らないんだよなぁ。


「……バースト、みんなにも武器となるものを与えればいいと思う。私みたいに」

「エリーみたいに?」


 でもエリーの場合は元となる魔力が豊富だったからこそ出来た芸当だ。ウィルたちとは違う。


「う~ん……」

「お願いしますよアニキ~。いっつも靴とかに掛けてるじゃないッスか~。同じように掛けてくださいよぅ」

「付与魔法をか? どれ……」


 ものは試しとウィルの剣に地属性を付与してみた。


「見た目はなんにも変わらないッスよ?」

「だが地属性が付与されたのは間違いない。試しに教卓を斬ってみ」

「はいッス!」


 バン!


「いてぇッス、弾かれたッス、しかも剣が重くなってる気もするッス!」


 う~ん、切れ味が良くなったようには見えないなぁ。それに元から太刀筋(たちすじ)が良くないウィルだし判断が難しい。


「あ、見てよバースト、この教卓の隅っこのところ。何か書いてあるよ?」

「ん? どれどれ……」


 【簡単に壊されてはたまりませんので、マジカルコーティングで強化してあります。出来るだけ大事に扱って下さいね、特にバーストくん】だと? 俺が壊すのを前提にしてるとか失礼な担任だ。(←実際に壊そうとしてたよね?)


「教卓が加工されてるのか。ならコレを壊せば強化が成功した証明になるな。ウィル、もう1度剣を貸してくれ」

「はいッス、何度でも貸すッス!」


 サボり魔にバカにされたようでムカついたので、さっきよりも多くの魔力を込めてやることに。


「さぁ、新たな力を得し者よ、今こそその力を解放し――」

「誰の真似なのん?」

「――異世界勇者の伝説に出てくる神様の台詞。てか邪魔しないように、……コホン。さぁ今こそ力を解放し、サボり魔の教卓をズタズタに切り裂いてしま――」



 パキン!



「あ……」


 魔力の許容量を越えたのか、ウィルの剣はポキリと折れてしまった。


「んんぎゃぁぁぁ!? ア、アニキーーーッ、何てことするッスか! これじゃ依頼を受けれないッス!」(←どうせお前は誘われないだろ)

「あ~、すまんすまん。まさか壊れるとは思わなくてさ」

「もう、仕方ないのん。ウチの系列で武器を扱ってる店があるから、そこで買わせてあげるのん」


 魔力付与は一時中断し、ウィルのための新しい剣を選びにリスティの後に付いていくことにした。



★★★★★



「へぃらっしゃい! うちの武器屋を選んでくれるたぁ見る目があるねぇ――って、リスティのお嬢様じゃないですかぃ!」

「そうなのん、クラスメイトのために剣を見に来たのん」

「そういう事なら任せてくだせぇ。うちの武器はどれもが新鮮! なんてったって鮮度が命! さぁ、手に取ってご覧くだせぇ!」


 八百屋じゃないよなここ?


「あ、コレなんかいいんじゃないッスか? 見るからにカッコいいッスよ! コレにしましょうよぅ!」

「さすが坊ちゃんお目が高い! この剣は第一級の宮廷魔術師が装飾を施した1品で、そこらの剣とは色艶(いろつや)が段違い。これで明日から坊ちゃんも勇者候補でさぁ!」


 ――にしては魔力を感じないな。これじゃすぐに壊れそうだ。


「他のはないか? もっと魔力の許容量が高い剣がいいんだが」

「魔力のきょ、許容量ですかぃ?」

「そうさ。一流のドワーフが造ったのがそれさ」


 これはサボり魔の担任から聞いた話で、ドワーフが鍛え上げた剣は魔力付与がしやすいのだと言う。目利きの剣士なら見分けもつくんだろうけど、残念ながらその辺は素人だからな。ちなみに魔力付与をしやすい物は周囲の魔力が自然に入り込むという特徴を持つ。


「この中で魔力を感知できる剣は……お、コレだな」


 スチャ


 樽の中に乱雑に突っ込まれていた剣で1本だけ魔力を感じたものを手に取った。


「ありゃありゃ、いいんですかいそんな剣で。ソイツぁどこにでもある剣で珍しくもなんともねぇでさぁ」

「そうッスよアニキ、俺はこぅちのがいいッス!」

「そこまで言うなら2つとも買おう」

「まいどありぃ!」


 ……で、路地裏に回って付与の開始だ。


「まずは店主とウィルが絶賛する剣な」

「金貨2枚なのん」


 そう、魔術師が関わったってだけで値段が跳ね上がった理不尽な剣だ。さっそく地属性を付与してみると……


「ダメだ、これ以上付与したらブッ壊れちまう。持ってみ」

「え~、何がそんなにダメなんス――って何スかこの重量感は!? メチャクチャ重たくなってるッスよ!」


 1つの属性を付与しただけですでに許容量の限界に近く、両手で持つのがやっとな重さに。しかもこれ、あと数時間は消えないし、徐々に膨張して更に重くなるから面倒なことこの上ない。


「これじゃ使えないッス……」

「だよな」


 残念に終わった重たいだけの剣をそのへんに放り投げ、いよいよ本命のお披露目だ。


「コレが俺の選んだ剣だ」

「銀貨10枚なのん」


 さっきと同じように地属性を付与。やはり許容量が大きいのか、重さは全然変わらない。うん、これなら他にも付与できそうだ。


「剣全体が地属性だが、部位ごとの属性も付与できるか試してみよう」


 握りの部分に風属性、刃の部分に火属性を付与してみた。


「ウィル、コレを斬ってみろ、ほれ」

「ちょ、石煉瓦(いしれんが)の破片じゃないッスか。そんな放り投げなくても――」



 スバァ!



「うえぇ!? 真っ二つに斬れたッス! しかも凄~く軽くて振りやすいッスよ!」


 予想通りだ。風属性により振るという動きを加速させ、火属性での発火作用で硬い物でも斬れるようにサポートした結果だ。


「さすがッス、さすがアニキッス! もう一生もんの宝ッスよ!」

「喜んでくれて何よりだ」


 恐らく数日で効果が切れるだろうけど、言いにくいから黙っておこう。


「む? そういえばもう1本の剣はどうした? さっきから見当たらないが」


 ヴォルトに言われて気が付いた。確かに無くなってるけど誰かに盗まれたか? けどあの剣は恐らく失敗作だし盗まれても問題ない。時間が経つにつれて重さが増すというデメリットしかない剣に成り下がったからなぁ。それに限界を越えると……



★★★★★



「へへ、どうだ、大成功だろう?」

「さすがっす! あのガキ共は全然俺たちに気付いてなかったっすよ!」


 俺の名前はロイバー、いずれは天下に名を(とどろ)かせる予定でいる大泥棒ってやつさ。後ろにいるのはカリスマ溢れる俺を慕っている弟分のラドロ。今日もご立派な剣を持ってやがったガキ共がいたんで隙を見てパクってきたところよ。


「ところでアニキ、このクッソ重たい剣をどこまで運ぶつもりで?」

「んなもん、いつもの買い取り屋に決まってんだろ」

「あそこまで運ぶんすかぁ!? 重くて腰がひん曲がりそうっすよぉ」

「るせぇ、ゴチャゴチャ言ってねぇでキビキビと運びやがれ」


 ったく、最近の若い連中は根性ってもんが足りねぇ。(←何歳だよお前)


「せめて一緒に持ちましょうよ~」


 チッ、しゃ~ない。俺も手伝ってやるか。


「あらよっ――」



 ズキッ!



「んがっ! グググ……」

「だ、大丈夫っすかアニキ?」

「バ、バッキャロウ、こんなもんが重てぇうちに入るかってんだ!」

「くぅ~、さすがアニキ、そこにしびれもしないし憧れもしないけど最高っす!」


 と、強がってはみたものの、何だってんだこの重さは? 腰が砕けるかと思ったぜ。


「ふぃ~……」

「どうしたっすかアニキ?」

「な、なんでもねぇ、行くぜ!」

「へぃ!」


 ええぃクソッ! さっさと買い取り屋に持ち込まねぇと腰がヤベェ。


「キャキャキャ!」

「うわ~ぃ、露店だ露店だ~!」

「こ~ら、走っちゃダメよ~」


 チッ、うるせぇガキ共が。こっちはこんなに苦労してるってのに何も知ら――



 ドンッ!



「イタァ!」

「ぐおぉぉぉ!?」


 このガキ、よそ見しながら脇腹に突っ込んで来やがった!


「だ、大丈夫ですか!? すみません、うちの子たちが――」

「院長センセ~、早く早く~!」

「あ、こら待ちなさ~い!」

「院長センセ~、ウィル兄ちゃんより遅いぞ~!」


「…………」


 あっぶねぇ、もう少しで倒れるとこだったじゃねぇか。ガキにぶつかった程度で倒れるとか一生の恥だ、今日ほどガキの体当たりが恨めしいと思った日はねぇ!


「ア、アニキ……」

「し、心配すんな。んなもん、どうってこたぁねぇ」

「そうですかい? 少し休んだほうが……」

「バッキャロゥ! たかが剣が重たいなんてこたぁ――」



 ドッ!



「フゲェ!?」

「道の真ん中で邪魔だぞ愚民が。このボクチンがモルゴメス・モンゴメリーと知っての狼藉(ろうぜき)か?」


 今度はなんだ、貴族のガキか! テメェからぶつかったくせに何て態度だ。このクソみたいな剣を担いでなきゃブン殴ってるところだぜ。


「失礼ですが坊ちゃま、ここで時間を浪費しては約束の時間に間に合わなく……」

「む、仕方ないな。――おいオッサン、命拾いしたな? 今日のところは見逃してやる。懐の深いボクチンに感謝するんだな」

「…………」


 ええぃクソが! 今度見つけたら只じゃおかねぇ!


「ア、アニキ……」

「分かってる!」


 俺だって好きで立往生してるわけじゃねぇ。どういうわけか、どんどん剣が重くなってる気がするんだ。


「アニキィ!」

「分かってるって言ってんだろ! んな大声出さなくたって――」

「アニキ危ねぇぇぇ!」



 ボグッ!



「グボォォォ!?」


 何なんだよいったい、今度は後頭部に強い衝撃が!


「おやおや、何か当たったか?」

「イルフィーナ様、そこの平民にハルバードが当たったんです!」

「なんと!」


 なんとじゃねぇよ! んな物騒なもんを横にして担ぐんじゃねぇ!


「イルフィーナ様、移動中はハルバードをお下げくださいと何度も……」

「むぅ……。すまないな、名も知らぬ中年男よ。我が不注意、全身全霊を持ってお詫び申し上げる」



 ガン!



「ンガッ!」


 頭下げるのと同時にハルバードを傾けんじゃねぇ!


「ですからイルフィーナ様、ハルバードを持ったままでは危険だとあれほど……」

「おやおや、これは改良の余地があるな。新しい構えを模索してみよう」

「話を聞いてましたか?」


 軽く謝った程度でどっか行きやがった。なんだって俺だけこんな目に……。


「アニキ、やっぱ俺も手伝いますよ」

「おぅ、そうしてく――」



「――ちょっと待て。何で今まで俺1人で担がされてんだ?」

「え? 何でって、俺の代わりに運んでくれるんすよね?」

「バッキャロゥ! 俺がテメェを手伝うつったんだろうが! 何で俺1人に任せきりなんだよ!」

「そ、そうだったんすか?」

「ったりめぇだ! 分かったらテメェも手を貸せ!」


 俺の肩とラドロの肩でクッソ重たい剣を担ぎ上げる。端から見りゃおかしな儀式に見えるだろうな。これじゃさっきのハルバード女を笑えねぇぜ。


「よ、よし、いいか? イッチニのリズムで運ぶぞ」

「分かったっす!」

「じゃ行くぜ、イッチニ――」



 グギッ!



「――ンギャァァァァァァ!? こ、腰がぁぁぁぁぁぁ」

「アニキィィィ!」



 こんな時にギックリ腰か!? いや違う、剣の重さが増したんだ。こんなんじゃ剣を運ぶどころじゃ――



「あら~? そこの人たち大丈夫ですか~?」


 になみに俺とラドロが剣の下敷きになってる格好だ。


「あらあら~、重そうな剣ですね~。そんなに重いんですか~」



 ヒョイ!



「あららら~? 思ったより軽すぎませ~ん?」

「「えええっ!?」」


 何なんだ、何なんだよこの獣人女、片手で軽々と持ち上げたぞ!

 あ、そういや何となく見たことがあるぞこの女。確か冒険者ギルドで……ああ!


「テメェは受付の!」

「はい~、ハレーと申します~」

「「ヒィィィィィィ!」」


 俺たちは剣をその場に放り出し、全力で逃げ出した。こんなバケモノ、相手にしてられっか!


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