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魔力は垂れ流すもの!  作者: 南国ブラックベア
11/17

食用旺盛晩餐会

「あらあら、な~んて素敵なお邸なのかしら。見晴らしも良いし、お招きいただいた事に感謝ですわねぇ」

「うむ。規模や景観にとどまらず、内装に至っては高位の魔法士が手を加えた形跡がある。見た目も良く壊れにくいとは正にこの事だろう」


 バルコニーで風に当たりつつ目を細めているフレ姉さんにアド兄が同調する。帝都からほんの少し離れた丘の上だ、帝都が一望出来る点も素晴らしい。

 邸にしてもそうだ。見た目も拘りました感が非常に強く、成金貴族の要望がところ狭しと敷き詰められている。備え付けの灯りとかダイヤのマジックアイテムだぜ? こんなん盗め言ってるようなもんだろ。(←盗むなよ?)


「出来ることならエリーも連れて来たかったなぁ」

「そりゃ無理ってもんだぜバースト。招待してきたのは()()ポラットス子爵だ。貴族至上主義で平民以下はゴミとしてこき下ろすような奴だしな」


 グレイ兄ちゃんの言う通りだな。

 説明が遅れたが、俺たち一家を含む多くの貴族がポラットス子爵が主催する晩餐会に呼ばれたんだ。表向きは派閥の結束を強めるためだ……とか?

 そもそもうちは派閥じゃないし、招待された理由が不明すぎる。


「つまり何か裏があると?」

「ああ。だから両親2人からも気を付けろって言われてる。ちゃ~んとバーストを護れってな」

「そりゃありがたいけどグレ兄、剣を没収されてんのにどうやって戦う気だ?」


 当然ながら、邸の中に武器は持ち込めない。殆どの貴族が外で待機している使用人に預けている。


「なぁに、いざとなりゃ素手でどうにかしてやるさ。そのために俺が選ばれたんだからな。だからフレデリカとアドセルトは自由にしてていいぜ? ……はむ――くぅぅぅ、美味ぇぇぇ!」

「「「…………」」」


 どうやらグレ兄ちゃん、いざって時には骨付き肉で戦うつもりらしい。


「はぁ……。で、肝心の両親は?」

「それなら……」


 グレ兄の指先を辿ると、他の貴族と共にグラスを傾けている2人を発見。傍らにはイル姉さんとラミ姉さんも。


「お見合いの話とか進めてるのかな?」

「ハハ、ないない。我が家の()()()は美人揃いだから無理に押し進める必要はないんだよ」


 確かに。身なりに無頓着なイル姉でさえモテてるもんな。

 ん? 三姉妹?


「ふ~ん三姉妹ね。グレイバムがあたしをどう見てるのかよ~~~く分かったわ」


 さすが地獄耳のアイリ。どっからでも駆け付けてくださる。


「ンゲッ、アイリいつの間に!」

「たった今よ。ちょっと話があるからこっちに来なさい」

「おいバカ止めろ、俺が離れたらバーストの護衛は――」

「ここにはアドセルトやフレデリカ姉様もいるじゃない。1人いれば充分よ。ほら、チャキチャキ歩く!」

「離せっての! せめて肉を食い終わるまで――」


 哀れ、グレイ兄ちゃんは連行されて行きましたと。


「ふぅ……、相変わらずですわねグレイバムは。まぁ彼がいなくとも護衛に支障はありませんけれど」

「気を抜くなよフレデリカ。人目が有るからと言って安全とは限らん」

「承知してますわよ」


 ま~た2人は真剣な顔しちゃって。


「警戒し過ぎだろ。せっかくの晩餐会なんだし、素直に楽しんだら?」

「楽しむ? ならゲストの他愛もない話でも聞いてみるか? 見ろ、そろそろ始まるみたいだぞ」


 会場の真ん中に目をやると、ポラットス子爵が大きく咳払いをして注目を集めたところだった。


「皆々様、本日はよくお集まりいただきました。これでまた改革派の結束が強まったと言えるでしょう。今後とも変わらぬ関係を維持しようじゃありませんか」


 改革派……ランタール帝国の四大派閥の1つで、【より強く、より豊かに】を掲げている派閥だ。貴族から平民に至るまで全ての国民の生活水準を高め、より効果的な兵士の育成にも力を注いでいると言われている。


「つまんね~演説。勝手にやってろって感じだけどね」

「フッ、言うじゃないかバースト。だがまったくもってその通りだ。何が楽しくて派閥の集会に来なくてはならなかったのか理解に苦しむ」

「あらあら、そんなに酷評なさってはポラットス子爵がお可哀想ですわ」

「だが事実だ。我がキルロード家は本家も含め全て無派閥。招待されたところで派閥に組する気は毛頭ない。父上だって同じ考えだろう」


 そりゃ武家だからな。純粋に武力が高い分、どこかに組すればバランスが傾く。所属の派閥からは歓迎させる一方で敵対派閥からは目の上のこぶのように見られること間違いない。


「む? あの人物は……」


 アド兄が(いぶか)しげに首を傾げる。視線の先にはポラットス子爵ともう1人、別の貴族が立っていた。


「さて、本日は特別ゲストとして、慎重派の(かなめ)とも言える人物――エドウィン伯爵にお越しいただきました」


 まさかの敵対派閥の貴族がゲストとして登場したため、会場のあちこちでざわめきが起こる。


「おいおい嘘だろ? 何だって敵対派閥のやつを呼んだんだ」

「どういうつもりだ、まさかポラットスめ、我々を裏切るつもりか?」

「説明しろポラットス! どうして慎重派のエドウィン伯爵がここにいる!?」


 慎重派……ランタール帝国の四大派閥の1つで、【平和的な安定を望む】を掲げている派閥だ。現に慎重派筆頭のヴィクトル様は平民の不満を解消するため日々施しを行っていると聞く。現にスラムの住民たちも急激に減っていると好評だ。

 ちなみにヴィクトル様は現ランタール11世の三男にあたる。


「落ち着きたまえ諸君。私が……このエドウィンがここに来たのには理由がある。それはランタール帝国の未来を考えているのはどの派閥も同じということ、それを伝えるために馳せ参じたのだよ」


 敵情視察か? それとも別の目的があるのか。目下の子爵に圧力を掛けてまでご苦労なこった。


「あらあら、妙ですわね? 敵対派閥の貴族が単身で乗り込んで来るだなんて」

「確かに妙だ。相手を不快にするだけで何も獲られはしないと思うが」



 バァァァン!



「ん、何だ?」


 俺も2人と同様に思っていると会場の扉が勢いよく開かれ、さらにざわつきが大きくなる。何事かと扉に視線が集まると、外に立っていた中年の男がフラフラと入室してきた。


「ん? 彼は……貴族ではないように見えるが」

「も、申し訳ございませんエドウィン伯爵、無礼な一般人が紛れ込んでしまったようでして……おい、さっさと摘まみ出せ!」


 ポラットス子爵の一言で近くにいた警備兵が取り押さえにかかる――が!


「ギャァァァ!? う、腕がぁぁぁ!」

「クッ! 止めろ、離せ、離――ぐげぇぇぇぇぇぇ!?」


「グオォォォォォォ!」


 中年男は尋常ならざる力で警備兵の腕をへし折ってしまう。そして勢い付いた雄叫びに、会場は一気に大パニックに!


「「「キャァァァァァァ!」」」

「ま、まさか敵か、敵国の刺客か!」

「言ってる場合か、早く逃げなければ!」


 右往左往する貴族たち。その間も目を血走らせた中年男は無差別に貴族を襲っていた。


「なななな何なんだコイツは! 何だってこんな輩が紛れ込んでいる!」

「フン、大変なことをしてくれましたなぁポラットス子爵」

「エ、エドウィン伯爵、いったい……何の事でしょうか?」

「この期に及んでとぼける気か? 私が来ることを知っていて刺客を使って抹殺するつもりだったのだろう?」

「め、滅相もない! 断じて私は――」

「言い訳はいい、この事は陛下にも伝えさせてもらおう」

「そんな!?」


 中年男が他に気を取られている隙にエドウィン伯爵はそそくさと退出して行く。


「こらアンタたち、ボサッとしてないでさっさと逃げるよ!」

「母ちゃん!?」

「これは只の襲撃じゃない気がする。早くバルコニーから飛び降りな!」


 母ちゃんが父上を抱えて地上へと着地。お姫様抱っこは恥ずかしいぞ父上――なぁんて茶化してる場合じゃないな、フレ姉とアド兄もすでに降りてるし、俺も――



 ズガァァァン!



「な!? 天井から新手!」


 中年男とは別個体の男たちが天井を突き破って出現。それに驚いた近くの貴族たちが一斉に尻餅をつく。


「「「グオォォォ!」」」


「ひぃぃぃ!?」

「た、助けて……」



 ザスッ! ザスッ!



 そこへハルバードを持ったイル姉が颯爽(さっそう)と登場。一気に蹴散らしてくれた。


「さぁ、今のうちに早く脱出を!」

「は、はいぃぃぃ!」

「逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ!」


 言われるがまま貴族たちは床を這って逃走していく。


「イル姉、どこでハルバードを?」

「ルドラスが持ってきてくれたよ。アイツには警備兵に紛れて邸を観察してもらっていたんだ」

「なんだ、最初から警戒してたのか」

「当たり前だ。それより我々も早く脱出するぞ!」


 俺たち2人が飛び降りた時にはすでに家族全員が揃っており、すぐに各々で別れて馬車へと乗り込む。俺が乗った最後尾の馬車にはラミ姉とグレ兄が乗っていた。


「ふぃ~、脱出成功ってか? ダンジョンからの脱出みてぇで面白ぇもんだな!」

「そう思っているのは貴方だけよグレイバム。それに逃げ切れたかどうかはまだ分からないし」

「おいおい、これ以上何か有るって言いたいのか? さすがに物量多いぜ」



 ピクン!



 グレ兄に賛同したかったが、どうやらそう簡単に幕引きとはならないようだ。最近感じたばかりの魔力を感じる。


「あ~、2人とも申し訳ない。先に謝っとく。どうやら俺宛の特別ゲストが来ちゃったみたいでさ」

「「特別ゲスト?」」


 首を傾げる2人に馬車の後方を見るよう促す。すると……


「馬だと!? 誰か付いて来てんのか!」

「遠目でハッキリしませんが、アレはボーガン……でしょうか?」

「そうみたいだよ? 撃ったところを見てないから実力は分からないけどね。でも自称やり手らしくてさ、一度は俺に負けたんたけど再戦を申し込んできたみたい」


 ボーガンを使う知り合いなんて1人しかいない。


「また会ったな小僧ぉ! 今度こそ決着をつけてやるぜぇ!」

「やっぱりスナイパーJか」


 2人を巻き込んでの戦闘はしたくなかったが、こうなりゃ仕方ない。


「先手必勝、ファイヤーストーム!」


 幅の狭い峠道に加え、奴は馬に乗っている。まともに避けれは――




「甘いぜ――そらよっとぉ!」

「と、飛び越えて来たぁ!?」


 マジかよ! けど考えてる暇はない。


「ならこれでどうだ? ストーンカスケード!」

「――チッ!」


 無数の石ころを転がす魔法だ。足の踏み場を無くしたら避けられるはずもなく、たまらずスナイパーJは道を外れて林の向こうへ。


「やったか!?」

「早ぇよグレ兄!」



 バッ!



「フッ、この距離なら外さねぇぜ」


 バカ兄貴の台詞がフラグとなり、林の中から舞い戻ったスナイパーJ。上手く距離を縮められて横並びに。


「クソ、ファイヤーボール!」


 ボフッ!


 よし、顔面に直撃――



 ――が、多少はよろけるも、すぐに体勢を立て直し……


「防がれた!? しかもその手に持ってるのは……」

「護符だよ。何の対策もなく再戦を挑むとでも思ったか、ええ?」


 護符には魔法の威力を抑制する効力がある。強力な護符だと八割近くも防いだりするとか。


「今度こそ終わりだな、そらよ!」


 シャシャシャシャ!


「グエェ……」

「何っ!? しまった、狙いは御者か!」


 顔や喉にボーガンの矢を受けた御者が馬から転げ落ちていく。


「クソ、俺が御者をやる、横の野郎は2人に任せた!」


 グレ兄ちゃんが御者台に座り、今にも暴れだしそうな馬を宥めた。事故は防げたが、今度はグレ兄ちゃんを護らなきゃならない。


「フン、立て直しやがったか。だが誰が代わっても犠牲が増えるだけだぜ!」


 シャシャシャシャ!



 カキキキキィィィン!


「何っ!?」

「忘れたのか? 防御魔法を使ったのは初めてじゃないんだけどな」

「チッ!」


 大きく舌打ちするスナイパーJ。俺がいる限りグレ兄ちゃんに矢が届くことはない。


「ならば!」


 左手が俺に向けられる。直接俺を仕留める気か。だが……


「まぁまぁ、敵を前によそ見をしてはいけませんよ?」


 それよりも先にラミ姉の矢が奴に狙いを定めるのが早かった。


 ザクッ!


「ギャア!? ――クソッ、やりやがったなこのアマァ!」


 顔面に――額に矢を受けたスナイパーJが大きく後退。そして……


「これで勝ったと思うなよ? 次に再戦する時を楽しみにしとくんだな!」


 捨て台詞を吐き、そのまま何処かへと走り去ってしまった。

 しかし額に矢を受けても生きてるとか、どんな生命力だよアイツ!


「ふぅ、何とか撃退したか」

「ええ。ですがバースト、付き合うお友達は選んだ方が身のためですよ?」

「友達じゃねぇっての」


 後日、騒ぎを起こしたのはポラットス子爵であると断定された。あの別荘は子爵本人の所有物だし、何よりあの妙なゾンビもどきは別荘の地下から出てきたらしいからな。

 と言っても当人のポラットス子爵もゾンビもどきに殺されてるのが発見されたとかで、いまいち目的がハッキリしない事件としてしばらく話題になるのであった。



登場人物紹介


名前:ポラットス・バーバルーズ

性別:男

年齢:38歳

種族:人間

備考:ランタール帝国の子爵。派閥では改革派に属していた。新春を控えた時期に決起集会を開くも、エドウィン伯爵の強い要望を受けてエドウィンの参加を認めてしまう。また言われるがままにキルロード家も招待して派閥の立場が危ぶまれるも、最後は何者かが企てたゾンビもどきに襲われ死亡。


名前:エドウィン・オルノーゼ

性別:男

年齢:45歳

種族:人間

備考:ランタール帝国の伯爵。派閥では慎重派に属している。マンティコアの件があってから何かと周囲を嗅ぎ回るキルロード家を目障りに感じ、敵対派閥ごと殺してしまおうと画策。配下になり損ねた失敗作を使って多数の敵対派閥を葬ることに成功。それをポラットスに擦りつけたまでは良かったが、肝心のキルロード家は無傷。次なる作戦は……。


名前:モルゴメス・モンゴメリー

性別:男

年齢:13歳

種族:人間

備考:同い年のバーストの知り合い。大食いのためか、同年代の男子よりかはかな~り肥り気味。同年代からノロマ扱いをされるが、バーストは更に上を行く落ちこぼれという認識を持っている。太っちょの割には意外と足が速い。


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