1 スキルは空気
僕は、空気のような男子高校生、空気静。
先ほど、異世界転移してしまいました……
と、いうことで、今までの僕の空気人生で得た、異世界転生or転移をしてしまった主人公がまず最初にすることは……
街を探すことだ!
と思って、辺りを見回す。
うん、何もない。
あたり一帯草原で、遠くに森林が見えるくらい。
ちょーど田舎だ。
今までの異世界転移者は一体どうやって街まで行ったんだ?
一瞬もう終わりか、と思った僕だったが、ハッと気づく。
スキル、まだ見ていないのでは……?
そう!異世界のど定番!スキル!
これがあれば僕だって、世界最強に……?
ムフフフフ。
期待が込み上げてくる。
そして、僕は空に手をかざし、大きな声で叫んだ。
ど定番のセリフを。
「ステータス!」
すると、僕の前に半透明の板のようなものが現れたではないか。
これが、生ステータス……!
感動に打ち震える僕に対し、現実は残酷だった。
ステータスの内容は酷いものだったのだ。
空気静
年齢 17
種族 人間
戦闘レベル 1
隠密レベル 1
スキル属性【空気】
スキル 空気高速移動 空気憑依 空気をよむ
突っ込んでもいいか?
スキル属性【空気】ってどゆコト?
てか、空気を読むってもはやスキルではないのでは?
しかし、ここでへこたれる僕ではない。
気持ちを切り替えて、街へレッツゴーだ!
多分この中で、1番使えるのは、空気高速移動である気がする。
じゃあ、やってみますか。
「スキル、空気高速移動、発動」
そして、どこぞの中二病のようなセリフを言い放った僕は、瞬く間に100メートルぐらい走っていた。
これマジ。嘘じゃない。
だって、ホント瞬きしている間に、さっきまで、遠くに見えてた草原の奥の、森林手前まで来てるもん。
え?ヤバくね?
僕このなんちゃってスキルで、あの世界記録保持者のボ◯トとか追い抜いちゃったのでは?
先ほどからのショックとは異なり、今度はこのよくわからない空気スキルに、僕は混乱するのだった。