プロローグ
僕の名を空気静という。
僕が何者かと言われれば、何者でもなく。
何か特筆すべきことがあるかと言われれば、何もなく。
ごく普通の、高校二年生だ。
ただ、特技は一つある。
それは、周りの空気の溶け込むこと!
幼い頃から影が薄いと言われ、空気のように、周りに合わせ、ひっそりと生きてきた僕は、空気の如き存在感になることができるようになった。
僕が教室にいても誰も気づかないし、先生でさえ、出欠席をとるとき、毎回僕を忘れてしまう。
ある意味才能のようなこの特技で、僕は昨日まで、平凡に生きてきた。
そう、昨日まではーー
今日は、夕方まで居残りで、宿題のレポートを書いていた。先生には宿題を忘れたことさえ気づかれず、提出した時にはものすごく驚かれた。
そして、帰宅。
帰宅途中にいつも行くコンビニでアイスを買い、オレンジに染まった空をぼんやり見ていた時だ。
ビュオオオーっと普通にはありえないぐらいの風が吹いてきて、僕はーーー
草原に立っていた
さっきまでコンクリートの道を歩いていたはずなのに何故??
戸惑い、焦る僕の頭は現実逃避をした。
これ、全部雑草かな?食べたら美味しいかな?
苦しい現実逃避と、信じられない現実。
理解不能な状況に、僕の頭はオーバーヒートして、ヘフっとその場に倒れ込んだ。
どれくらい倒れていたのかはわからない。
でも、頭の中では、整理がついた。
きっと僕は、異世界転移をしたのだ。
近年、ゲームや、アニメでは、異世界転移をする者が多いと聞く。
きっと僕もその一人だろう、と思考が一旦まとまったところで、僕の頭にまた疑問が浮かぶ。
空気のような僕がなぜ異世界転移を⁇
謎は深まるばかりだった。