長編書けないんです
長編が書けないんですとセンセに相談したら、書けないなら書くなとバッサリ切られた。でも書きたいなら書け、と続ける。もちろん書きたい。書きたいからセンセに相談したのだ。
好きな人の一日の動作を事細かく書け。心象は妄想でいい。好きなものに対してならみっちり書けるだろ。とセンセは言った。それなら出来そうだ。わたしはセンセの一日の行動を描写することにした。朝起きてから、夜ベッドに入るまで。実際に見てきたこと、知らないことは勝手に想像しつつ、普段なら無駄だと思うようなものもかまわずできるだけ緻密に書き綴った。
書き上がったものをセンセに提出して読み終わると、一応言っておくが僕はこんなこと思ってないからな、とだけ言って返された。どこの部分のことを言っているのかはわからないが、とりあえず分量は申し分なかったらしい。
君は長編を真面目に書こうとしてなかった、書こうとしなければ君みたいなタイプは書けない。逆に言えば本気で書こうと思えば書けるんだよ。
こくりとわたしは頷く。実際に意識しまくれば書けたのだ。書きたい、書こうという気持ちが足りていなかっただけだった。そういえば、この文章はラブレターになってしまったのだが、センセは気づいているのだろうか?