センセはインスタントコーヒーがお好き
近くに新しい喫茶店ができたからコーヒーを飲みにいこうとセンセを誘った。そしたら、僕はインスタントしか飲まないし味が分からないから他の人と行きなさいと言われた。味が分からなくたって、センセと一緒の時間を外で過ごしたかったから誘ったのだ。たまには喫茶店でセンセが小説書くのを眺めながらわたしも書きたいなぁと思ったのに。センセはまったく女心がわかってない。ホントに他の人と行っちゃうぞ? と思いつつも誘いたい相手など他にはいない。そんなことセンセは知っていながらそう言うんだから意地が悪い。
そろそろセンセのコーヒーがなくなるだろう。わたしはケトルでお湯を沸かしなおす。コポコポと沸騰した音がする頃センセは無言でわたしにカップを差し出す。わたしはそれを受け取り、インスタントコーヒーをお湯でとく。センセの横にカップを置くと、それが当たり前のように口をつける。熱々のコーヒーを啜る音。わたしだけがセンセにコーヒーを用意し、飲むところを見られる。他の人に用意されるのなんてやっぱり嫌だと思ったわたしは誘いを断ってくれてありがとうと心の中でお礼を言った。