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誰かの日記

 長かった。とても長かったように思う。幼い心を奮い立たせるには、それだけ持続する燃料が必要だった。


 彼奴は、許せない存在だ。けれど、彼は、彼のことだけはどうしても恨み切ることが出来ない。さらに幼い記憶の濁流が、その恨みの炎を消し去ってしまうから。

 けれど、それは燻り続ける。彼奴への恨みのように燃え盛ることはないが、それは確かに、常に燻っている。


 だから、これは報いなのだ。彼が望んだように、好きなことだけを、自分の夢を追い続けることのできる環境を作ることが、彼への報い。――いや、救いなのだろう。

 もう、きっと。あの日の関係には戻れない。彼が、自分を許す筈がない。あの子はそれで苦しんだのだから。

 きっと、言ってしまいたかっただろう。すべて話してしまいたかったであろう。……今なら解る。世の中を知った今なら解る。この町は、破綻していた。だから、言ってしまうなんてことは許されなかったのだ。


 だから、彼奴だけは許せない。この町は、あの村は生き物を育てるためのものではなかった。結果的に、悪意を育むことしか出来ないものだった。それを産み出した彼奴だけは、許せない。何も知らず、何も考えず、自分の名誉だけに手を伸ばしてさえいれば満足な奴だ。現実なんて見えてない。自分の空想の中でだけ生きていられる奴なんだ。


 彼奴を、そこから引きずり落とす。彼の場所まで突き落とす。その時、再びあの場所へ跪かせてやる。本来あるべき姿となったあの場所へ。その時はきっと、――もうすぐだ。

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