砂漠の夜
見つけられないこともある。でも必要以上に自分を責めないで。新しい朝に向かっていこう。そして、また探し始めよう。
イラスト:コロン様
私達は 晴れた夜の砂漠で出会った。
満点の星空にひとりぼっちの星が一筋流れた時、あなたは井戸の中から現れた。
「やぁ」
無視した。
だって私それどころじゃなかったのだもの。
あのひとりぼっちの星の涙を受け止めてあげなきゃならない。
「やぁ」
無視した。
「やぁ」
無視した。
「やぁ。娘さん。良い夜だね」
私はむっとして睨みつけた。
「やぁ」
私はとうとう文句を言うことにした。
「忙しいのです。話しかけないでください」
「こんな夜は……星たちも砂漠の砂になりたくなるだろう」
星たちが砂漠に?
思わず「どうして?」と言ってしまった。
「今夜は、砂漠の砂が金平糖になる夜だからさ」
驚いて見てみると、確かに砂漠は、半透明な金平糖になっていた。
「そして あんなに離れた星々は砂のようにくっつきたくなるのさ」
「でもあの子は……寂しくて泣いていいたんじゃない。金平糖になりたくて泣いていたんじゃない」
「そうだね」
「だから受け止めてあげなきゃ。私に会いたくて泣いていたのだから」
「分かった。手伝おう」
私達は三日月の船に乗り、金平糖の海を漕ぎ出した。
船は滑るように進む。
櫂をおろすと、金平糖がざくっと音を立てるのに、滑らかだ。
「絶対にみつけてあげる」
あの子の涙の輝きを頼りに、夜じゅうあちこち漕ぎ回った。
でも、悲しいことにあの子のささやき一つ聞くことはできなかったんだ。
とうとう砂漠の夜が終わろうとする時、砂漠の片隅に立っていたサボテンの花のつぼみがきらりと光った。
なんだろうと見ていると、あなたは言った。
「時には見つからないこともある。会えないこともある。それが定めというもの。でもいつかは会えるさ」
三日月の船が朝日に消えた。
金平糖もさらさら光る黄金の砂に戻っている。
そして、驚くことにあなたはサボテンの花になった。
私はサボテンの花を見ながら、「いつかは会える」とそうつぶやいて、橙色の空を見上げた。
おわり
お読みくださり、ありがとうございます。
勢いで書いたので未熟な面が出ているかと思いますが、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
イラストはコロン様が描いてくださいました。コロン様、本当にありがとうございました!