初代勇者の誕生
願い事を叶えようとするとき、人は何をする?
流れ星にお祈りする?
神様にお祈りする?
それとも、それが自分にできない事だったら、他の人の力を借りる?
ううん、私は自分で何とかしようと思う。
だって、だって。
何かに祈ったり、人に頼ったりするのは不確実だもの。
自分で確実性を上げられないもの。
私は、何か願う事があったら、絶対に、百パーセント叶えたい。
だから、自分で何とかしようとするの。
それが、どんなに荒唐無稽な事でもね。
たくさんの墓。
最後の一つの手入れを終えて、傍にいた同業者の友人へ話しかける。
「世界中の人を救いたい? 本気で言っているの?」
「本気だよ。私は自分の手で皆を救いたい」
「魔王に立ち向かえた人なんて今までいないよ」
「今までいなかったからって、これからもいないわけじゃないよ」
誰もした事がなくても、道しるべがなくても、歩くべき道が整えられていなくても。
自分の力で叶えたい。
「だから止めないで、今度ここに帰ってくるときは、魔王を倒した時だから」
私達はお墓の管理人だから、どれだけの人間が魔王のせいで死んでいるかわかる。
もうこれ以上、不幸な理由でつくられる墓を増やしたくないんだ。
その数日ご、魔物の群れを薙ぎ払う女性の姿が前線で確認された。
それが初代勇者の始まりの話となる。