乙女と王子とそれからのお話
ジュリウス王子の誕生日に行われたお祝いの舞踏会で、ルクレツィアとの婚姻の儀式の日取りが正式に発表された。
何かどうしようもない事情で日程が早まったらしく、家族達が遠い目をしていたことを、ルクレツィアは覚えている。
同じような目を国王夫妻や王太子夫妻もしていて、ご機嫌だったのはジュリウスくらいだ。
その舞踏会で、ルクレツィアは、仲良くなっていたご令嬢方から、本当に兄や弟や叔父の花嫁にはなってくれないのかと散々泣かれてしまった。
勿論、中にはジュリウスの婚約者の座が空くのであればと考えていたご令嬢もいたようで、そちらからは、こうなると思ったと苦笑交じりに祝福を受けた。
シャンデリアに弾ける、艶やかな光。
窓から差し込むのは満月の彩る夜の煌めき。
美しい夜は祝福と喜びに満ちていて、うっとりとするようなふくよかさであった。
ルクレツィアは、ジュリウスと沢山ダンスを踊った。
楽しくて堪らなくて笑顔で踊るルクレツィアを、ジュリウスは時々、ターンでぶんと振り回してくれる。
普通のご令嬢にはあんまりな仕打ちだったが、ルクレツィアは、楽しくてわぁっと声を上げてしまった。
ジュリウスがあまり兄弟らしく過ごせないと話していた王太子からは、弟は、穏やかそうに見えて計画的に暴走する男なので、もし何かあったら容赦なく倒して構わないと言われ、弟王子達からは、黒い竜王を隣国に投げ込める義理の姉が出来たと、目をきらきらさせてお喋りを求められる。
残念ながら、弟王子達はベルナールが追い払ってしまったが、ルクレツィアは、二人も弟が増えたことになるのだと今更ながらに気付き、いつか恰好いい竜を取ってきてあげると約束を交わした。
今年のシーズンは、このジュリウスの誕生日の舞踏会を以って幕を閉じる。
大広間で歓談する貴族達もそれぞれの領地に戻ってゆき、今夜までに結ばれた若者達は、また来年、新たな関係になって王都に集まるのだろう。
華やかな舞踏音楽を奏でる楽団に、あちこちに散らばる小さな微笑みや煌めく瞳。
今年はご縁を得られなかった者達は、次のシーズンを見据えたきりりとした目をしており、デビュタントの初々しい微笑みを攫った意地悪な放蕩者もいる。
ルクレツィアは、その夜はたっぷりご馳走を食べ、ずっと言えなかったが大好きだったのだと泣きながら伝えてくれたご令嬢達と沢山お喋りした。
かつてはこの国を滅ぼした怪物だったからこそ、今回は色々なご令嬢達と少しでも話をしてみたいと考え、おずおずと声をかけていたことがこんな縁を作ってくれたらしい。
文通のお誘いや、お茶会へのお誘い、気の長いものでは来年のシーズンでの夜会のお誘いも沢山いただいたが、貴族の女性の生活や嗜好は、婚姻を機に大きく変化してゆくものだ。
途中で途切れてしまうやり取りや、この場限りの盛り上がりというものもあることを承知している。
でも、それでもとても嬉しくて、ルクレツィアはずっと笑顔でいた。
なお、ルクレツィアの本性は、比較的優しい表現を選び、国王やジュリウスから周囲に伝えられた。
国防に関わる功績はその舞踏会の夜にあらためて讃えられ、夜の妖精ではなかったルクレツィア本来の立ち振る舞いに眉を顰めていた第二王子派の貴族達や、ジュリウスが騎士団から離れる事に反対していた魔術騎士達からの支持も、少しばかり重ねて得られたようだ。
祝福されるということ。
笑顔でいて、幸せでいられるということ。
勿論それは、全ての人から得られるものではないけれど、かつてこの国を滅ぼした怪物は、今の手の中のものだけでも幸せ過ぎて取りこぼしそうな素晴らしい夜だった。
その後、王都を離れて辺境域に戻ったルクレツィアの下には、度々ジュリウスが訪れた。
婚姻やその後の生活に向けて新調して貰った沢山のドレスの中には、何着もの動きやすさに特化したドレスや、乗馬服があったことを明記しておこう。
とても寂しがり屋ですぐに会いにきてしまう婚約者は、その他のご令嬢が貰うような宝石やドレスも贈ってくれたが、それ以上に、素晴らしい乗り心地の竜革の鞍や、雨の日でも駆け回れるブーツに、魔術付与のある武器なども贈ってくれた。
ルクレツィアの母は、これ以上娘を強化してはならないと何度も訴えていたが、父や兄はよく分かっているなと大喜びである。
(それはそれは、美しい、春の日であった)
真っ白な薔薇の花びらが振り撒かれた王都で、ジュリウスとルクレツィアの婚姻の儀式が行われたのは、予定通りの、けれども当初の予定よりは半年も早められた、良き日であった。
諸外国からの賓客も訪れ、その中にはなぜか、招待状を自ら欲する手紙を送り付けて国王を動転させた、この大陸随一の大国の国王と王子までいる。
ルクレツィアは、全くの初対面の筈の異国の王様に、婚儀の後に本当に良かったと抱き締められてわんわん泣かれたので、ジュリウスだけでなく国中の高位貴族達から、何かとんでもないことをしたに違いないという疑いの目を向けられてしまった。
けれどもそれもまた、祝福であったのは間違いない。
(……………それに、もしかしたら、あの人達かもしれないって思ったんだ)
その、大陸随一の大国の王族達は、大きな国を維持するのに相応しいだけの、この国では考えられないような高位魔術を扱う、階位の高い魔術師でもあるのだという。
そんな偉大なる国の王族達の安堵にも近い祝福の表情を見ていると、この国を滅ぼした怪物を鎮め、時間を戻したのは彼等ではないかという気もするのだ。
でもそれは秘密なので、ルクレツィアは疑わしげにこちらを見る伴侶に、どうしてこんなに喜んでくれるのだろうねと首を傾げておく。
目が合った異国の王子は、にっこりと微笑み、思ってもいなかった美しい花嫁にと、手の甲に口付けを贈ってくれたので、その日の大聖堂に集まった招待客たちは、大国の王子を婚礼の場から摘み出す元王子の暴挙に真っ青になったらしい。
だが、その一件には素敵なおまけがついた。
そちらの国とルクレツィアの関係が深いと見た諸外国は、その日を境に、この小さな国への扱いを変えたのだ。
その時には既に、ルクレツィアが黒竜王を国から追い出した狩人だということも知らしめられていたので、あの大国の王族がわざわざお祝いを言いに訪れるだけの傑物だと認識され、長らく続いていた国境域の紛争は、こちらの国に有利な友好条約を結び決着となった。
その事は国王や王太子からもたいそう感謝され、最後に重なったその新たな功績故に、辺境域と王家との繋がりはますます深くなったと言われている。
王都で過ごした時期に仲良くなったご令嬢達とは、今でも仲良しだ。
一度、ご夫君と喧嘩したエルミーシャが先触れもなく泊まりにきてしまい、ジュリウスとエルミーシャが大喧嘩になったこともある。
エルミーシャは、シーズン最後のあの舞踏会でベルナールに婚約の打診をしていたようだが、こちらの公爵令嬢はとても怖いのでと、ベルナールは断固として辞退したらしい。
だが、そんなエルミーシャが選んだ相手は、ずっと彼女を思っていた幼馴染の伯爵家の子息なのだそうだ。
実際には両想いが過ぎるが故に喧嘩も多い、新婚夫婦のしょうもない騒ぎに巻き込まれたくはないと、ジュリウスはげっそりとしていた。
嬉しいことに、ベルナールにも可愛い婚約者が出来た。
物静かで優しい婚約者に今は夢中に見える弟からは、時々、そんな婚約者が自分よりもルクレツィアと楽しそうにしているという苦情が届くので、無事に姉離れも出来たのだろう。
「あのね、その時のベルが……」
「ルクレツィア、そろそろベルナールの話はやめておこうか」
「あれ、ベルが可愛い話、もう聞かなくていいの?まだ、十五個目だよ?」
「ああ。それよりも、私の愛する妻が、今日は何をしていたのか聞きたいな。久し振りに王都に出掛けていたせいで、すっかりこちらを空けてしまったからね」
「半日だけで、ジュリウスは大袈裟だなぁ」
「……………では、その手に持っているのは何だろうか」
どこか暗い目でそう尋ねられ、ルクレツィアは、おやっと手元を見る。
片手で握り締めたふさふさした白銀の毛皮は、木漏れ日にきらきらと輝いていた。
なお、後方には、ルクレツィアが大きな獲物を引き摺って歩いてきた跡がある。
「ああこれ?森の精霊王なんだって。領民達の畑に悪さをしていたから、こちらに相談が入っていたんだよ。調査に行った先で遭遇したから、狩っちゃった」
「……………少し待ってくれるかい?話を整理している」
「うん。大きな森狼みたいだよね。毛皮が凄そうだから、ジュリウスのコートでも作ろうと思って」
「……………森の、精霊王で」
「うん!僕とお揃いにする?」
「……………まぁ、それであれば構わないか。仕立屋を手配しておこう」
ルクレツィアは、最近になって、ジュリウスの取り扱い方法を覚えた。
ルクレツィアが一人で狩りをすると、冒険心に溢れる少年心が爆発してしまうのか羨ましさに荒ぶる夫は、こうして、獲物を均等に分配するとすとんと落ち着くのだ。
美味しい精霊はルクレツィアが料理して分け合い、革や爪や牙、祝福結晶などはお揃いの道具として分け合うことを決め、今回もその手法で事なきを得たようだ。
ジュリウスがぴりぴりすると、最近はベルナールまでが、鎮めの儀式のようにルクレツィアを差し出すので、結果として対処法の取得が早まったという訳である。
そんなちょっぴり困った夫だが、ルクレツィアは、こうして一緒に暮らすようになってから、今迄よりもずっとジュリウスが大好きになった。
「ジュリウスは、どんな一日だったの?」
「君と朝食を食べてから朝駆けに行き、王都に呼び出されたので急いで仕事を終え、その後に君の所へ帰ってきたところだ。夕刻の見回りは一緒に行くかい?」
「王都の話がほんの少ししかなかった!」
「……………いつも通りだよ。兄に息子自慢をされ、以前より懸念のあった、隣国との交易の問題については、辺境域の立場を説明し、宰相も交えて話し合ってきた。今回は、残念ながらお義父上とはお会い出来なかったが、王都で壮健であられると聞いている」
「うん。お母様も、王都での暮らしに漸く慣れてきたところだって」
「ああ。母上が、何度かお茶会に誘っているそうだ。どうも、とても話が合うらしい」
ルクレツィアの両親は、ジュリウスが辺境伯になり一年が経つと、王都の屋敷に移住した。
隣国との関係が改善され、国境域の危険度が下がったということもあり、元々体の弱い母が過ごし易いようにと、前辺境伯は一時的な引退をしたのである。
一時的なと付いてしまうのは、先代辺境伯が、自分の生まれ育った土地が好き過ぎるからだ。
ルクレツィアは、母から、二年もすれば我慢出来なくなって、辺境域に戻りたいと言い出すだろうと溜め息混じりに聞かされていた。
その頃には家族が増えているかもしれないので助かりますと大真面目に返答して、ルクレツィアを仰天させたジュリウスは、とは言え、今暫くは二人で過ごしていたいらしい。
なので今は、古参の家人達を伴い、夫婦で新しい暮らしを楽しんでいる。
(いずれ、ベルナールのお嫁さんもこちらに住むようになったら、凄く賑やかになるんだろうな……………)
兄のアルコルは王都で暮らしていて、双子の子供達にすっかり夢中だ。
ジュリウスが任されていた魔術騎士団を引き継ぎ、新しい団長は定時で帰ると部下達に呆れられているのだとか。
そちらの双子は一人が男の子なので、いつか辺境域に遊びに来た時には、竜を捕まえてあげようと思う。
両親も初孫の側で暮らせているので、そのような意味でも新しい生活を楽しんでいるようだ。
王都では子供達を乳母に任せる事も多いが、厳しい土地で暮らす辺境域の人間は、戦争がない時は、子育てには積極的に関わりたい者達が多い。
「……………そう言えば、君は、王都でまた沈黙の乙女と呼ばれているらしい」
「あれ、何でだろう。僕、いっぱい喋るよ?」
「ああ。だが、ここ暫くは王都の夜会などに出ていないだろう。また君の声を聞きたいという者達が、王都にも姿を見せて欲しいという思いを込めて、そう呼んでいるのだそうだ」
「それなら、次のシーズンでは王都に遊びに行こうかな。……………もしかして、ジュリウスがしょんぼりしているのって、また王都で虐められたの?!」
「……………ルクレツィア。さすがに私も、虐められはしないから、安心していいよ」
「でも、兄上が、この前の舞踏会で、公爵夫人に足を踏まれていたって教えてくれたよ?」
「私が君を連れて来ないと分かると、うっかり足を踏んでしまったらしい。あの一族は、娘といい、君が大好き過ぎやしないだろうか」
「仲良しなんだよ。みんな素敵な人達で、ジュリウスの事も応援してくれているって」
エルミーシャの家は、一度目の時には、積極的に辺境伯の断罪に関わった一族だ。
けれども今は、家族ぐるみでの付き合いが続いていて、ルクレツィアは、そんな公爵家の人達が大好きである。
幸いにも、一度目の記憶があっても、あの時はこうだったからと、誰かを憎んだり嫌ったりすることはせずに生きてこられた。
あの災厄を引き起こしたのはルクレツィアの愚かさ故であったし、国や自分の愛する人達の運命の天秤を大きく傾けるようなことがなければ、彼等も、ルクレツィアの一族を責め立てはしなかったのだろう。
「……………まぁ、そんな過激派がいるからね。次のシーズンで王都に滞在するにせよ、君が参加する舞踏会は、多くても二か所程にしよう」
「ほぇ、……………過激派?」
「とは言え、友人達と会いたいのなら、勿論、この屋敷に招いても構わないよ。私の狭量さで、君に寂しい思いをさせる訳にはいかないからね」
「そう言えば、ジュリウスは友達とは会えている?……………というか、兄上以外の友達っている?」
「……………ルクレツィア?」
またしても暗い目をした伴侶から、友人は沢山いると釈明されたが、とても危険なので、今暫くは会わせて貰えないのだそうだ。
何が危険なのかはよく分からなかったが、そのご友人方が魔術騎士の仲間であった場合は、ルクレツィアがびっくりしてしまうような危険な術式を扱う魔術師だったりするのかもしれない。
ジュリウスとの暮らしで様々な魔術に慣れてから、あらためて紹介して貰えるのだろうか。
なお、婚姻の日にお祝いに来てくれた大国の王様からは、季節ごとに手紙が届くようになった。
毎回の結びに、悩みなどがあれば相談に乗るので話して欲しいと書いてあるので、また怪物にならないかどうかを凄く警戒されているような気がする。
婚姻の儀式の日にジュリウスと一悶着あった王子様からは時々異国の果物などが届き、こちらも手紙で近況などを尋ねてくれる。
しかし、それらの手紙が届くとジュリウスがたいそう荒ぶるので、ルクレツィアは、その度に伴侶をたっぷり甘やかしてやらねばならなかった。
「ルクレツィア、次の安息日には……」
「うん、任せて!お兄ちゃんのフルコースの予定を立ててあるから!!」
「……………その過ごし方の可否はさて置き、どんな予定にしてあるんだい?」
「まずね、早起きをして森に妖精を狩りに行って、木苺や森苺を摘んだ後は、…………あれ、大丈夫?朝から竜だと、探すのが大変なんだけど、妖精でいい?」
「……………そうだね。竜と比較するのであれば、妖精の方がまだ良さそうだ」
「うん。他にも沢山計画があるんだよ。ジュリウスは大好きで大切な僕の旦那様だから、僕はこれからも、たっぷりお兄ちゃんになるからね」
「時々、過去の自分に、なんて浅慮な事を望んだのだと言いたくもなるが、……………君が隣にいてくれるのであれば、これでいいのかもしれないな」
「ほぇ……………?」
伸ばされた手が、ふわりと頭を撫でてくれる。
温かな陽光の温度と、大好きな家族の手の温度に頬を緩め、ルクレツィアは笑顔になった。
相変わらずルクレツィアは、コルセットは苦手だし、華やかな舞踏会での社交も少し不得手だ。
以前のように優雅なお辞儀は出来ないし、貴婦人らしい艶やかな装いに必要な華奢な靴を履いていると、うっかり転びそうでそわそわしてしまう。
洒落た言葉回しは出来ず、あんなに得意だった刺繍は苦手になっていた。
だから多分、怪物になったルクレツィアが手にする筈だった未来はやはり、今のルクレツィアの手の中には戻らないのだと思う。
それでもここは、やり直しの先のより素敵な未来で、大好きなジュリウスは名前を呼ばなくても隣に居てくれることが多いので、もうこちらの方が、ルクレツィアの大事な場所になっていた。
(ねぇ、君はこれでいいかい?みんなが元気で幸せでいるよ。……………これならもう、悲しくないかい?)
そっと胸に手を当て、星空の下で泣いていた怪物を思ってみる。
けれどももう、そこには、きらきらと光る流星の煌めきが散らばるばかりで、ずっと一人ぼっちだった怪物はどこかへ消えてしまったようだ。
あの怪物が星に祈る日は、もう来ないだろう。
流星雨の夜の星が叶えた願い事は、こうしてルクレツィアの手の中にあって、夜空に手を伸ばす必要はなくなったのだから。
(あなた達を守れて良かった)
その喜びに弾む胸を今日も押さえ、ルクレツィアは遠い日の大好きな婚約者に話しかける。
あの日、喘鳴の下でルクレツィアに誓ってくれた、優しくて大好きな人に。
(ねぇ、ジュリウス。ジュリウスの言う通り、大丈夫だったよ。君が、あの日のルクレツィアにそう約束してくれたから、きっと僕は、こんなにも幸せになれたんだ)
「ジュリウス」
「……………ん?」
「ずっとずっと、大好きだよ」
「……………そういうところだぞ」
目元を染めた夫はなぜか逃げていってしまったが、ルクレツィアは、今日もなんていい日だろうかとご機嫌になった。
持っていた精霊王をぺっと地面に落とし、ぐいんと伸びをするととても清々しい気分になったルクレツィアは、ジュリウスに、今日のお茶の時間には林檎と胡桃のタルトがあることを教えてあげようと振り返る。
「ジュリウス」
名前を呼んで手を伸ばすと、ちゃんとすぐに戻ってきてくれていた大好きなジュリウスが、しっかりとその手を握ってくれた。
ルクレツィアの大好きな伴侶は、こうして名前を呼ぶと、はっとするほどに優しい眼差しでこちらを見ることがある。
そして、少し離れていても、すぐに戻ってきて隣にいてくれるのだ。
「大丈夫。ここにいるよ、ルクレツィア」
そして、こんな風に振り返る時のジュリウスは時々、はっとする程に幸せそうに微笑む。
その微笑みを見ていると、ルクレツィアは、手の中にきらきら光る流星を授けられたような、特別に素敵な気分になるのだった。
本編はこちらで完結となります!
ジュリウスともう一人の幕間のお話を予定しておりますので、更新の際には、Twitterよりご案内させていただきますね。