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私が私で居れる夢をうつす  作者: てるるん
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目を覚ますと

ん……

まだ眠っておきたい……。

でも、たぶんそろそろ起きる時間かな……

起きたくないな。

目を覚ましたら、一日が始まるから

そんなことを寝ぼけた頭で

考えながらふと気付く。


今私は、布団で寝ている。

普段なら当たり前だが、さっきまで

机に伏していた気がする……。


そう思うと、違和感が気になり

頭が少し覚めてきた。


不安に駆られ、重い瞼を必死に持ち上げる。

仰向けの姿勢で寝ている私は

見慣れない天井を見た。

目を何度か開けたり閉じたりしてみた。

その天井はどうみても私の部屋ではないことを

告げている。

枕も布団も私のものではなかった。


薄暗くてよくわからないが

やはりここは知らない場所かもしれない……



そう思いながらゆっくり体を起こしてみる。

視界には見慣れない真っ白な掛け布団と

ベッドの周りを囲っているカーテンが見える。


全く知らない場所だと自覚した私は

自分に問いかける……まだ夢を見てるのかな……。

だけど、淡い希望だとわかっているくらいに意識は

だんだんとはっきりしていた。


見覚えのないここは…どこだろう。


ベッドから降りて囲いのカーテンを

恐る恐る開けて、辺りを見渡してみる。


どうやらここは個室で

他には誰の姿も見当たらない。

左側にカーテンの掛けられた窓があって

右側にドアがあった。

ドアに付いてる小窓から

外少し明るいのがわかる。


ベッドやベッドのすぐ横にある机

小さなtvを見る限り

ここは病室の様に思える。


………?

意識失ってて病室に連れてこられたのかなぁ。


ただ、何故か机に置いてあるスマホにも

ノートにも見覚えがない。


ただし、そのノートの表紙を見ると

目を丸めて驚いた。こんなことある!?


「Avenir 桜 小春」


こう書かれていたからだ。


同姓同名……。

私がその日記を書いた記憶はない。

その英単語も勿論、読めない。

少しでもこの状況が理解したくて

恐る恐る日記を開いてみる。

罪悪感は感じたが、何もわからないことへの

不安が勝ってしまった。

念の為、周りに人がいないかを確認する。

恐る恐るノートを開いてみる。

内容はこうだった。


「8月25日


入院初日。


膵臓癌で余命半年だと宣告された。


日記は勧められたから、書こうと思った。


実感がわかない。


でも……当たり前が当たり前じゃなくなるって

考えたら、とても辛くて怖い…………。」


少し、字が滲んでる部分や薄く変色してる

部分がある。

毎日のように泣いていた私には見覚えがあった。


たぶん……涙のあとだ……。



そっか。この子は余命宣告を受けているんだ。

そう理解はできたが、他には何も思わなかった。


正直、死にたいと思っている私には

その程度の感情しか芽生えなかった。


私も死にたい……この子には申し訳ないが

そう思ってしまったからだ。

多分、同姓同名のこの人からしたら

私みたいなやつは最低なんだろうな……。


続きはまだあるようだが

そう思うとこれ以上先は

見る気にならなくなった。

盗み見してしまった罪悪感も感じてる。


だが、気づいたことがある。

5月25日と言えば、ちょうど3ヶ月前になる。

この子はその間、ずっとこの病室にいるのだろうか…


気にはなったけど、日記を見るなんて

丸裸の心を覗くようなことだと思い

そっとそのノートを閉じることにした。

どの口が……と思ったがこの件はこれでお終いにする。


他に情報が得られそうなものと言えば

スマホしかない…………。

ピンクと白の淡い花柄模様の手帳型スマホカバーは

すごく可愛くて私好みだ。

中を開いてみたい気持ちもあったが

人としてダメな気がしたので辞めた。

またしても今更だが…………。


何もわからないから

仕方ないじゃないか……と開き直り気味に

場所だけでもと思い、窓のカーテンを開けてみる。


「綺麗…………。」


上から見下ろす窓の外には

綺麗な草原が広がっていた。

朝日に照らされてキラキラと光って見える。

奥には林のようなものもみえる。


住宅地に住んでいた私にとって

大自然と思えるこの景色は

一瞬何もかもを忘れさせてくれる。

それ景色に見入っていると、衝動的に

外に出たくなった。

この気持ちよさそうな草原を歩いてみたい!


部屋にあったスリッパを急いで履いて

横開きのドアを恐る恐る開けてみる。

開いたドアから先を覗いてみると

右側と正面に、長い廊下が続いている。

左側はどうやら突き当たりらしい。

私の部屋は、角部屋みたいだ。


右と正面、どちらにいくか迷っていると

遠くの方から音や声が聞こえてきた。




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