5 公園
よろしくお願いいたします
次にたどり着いたのは小さな公園でした。
遊んでいる小さな子供はいませんでしたが、公園近くの高校の制服を着た女の子が何人かいました。
ベンチに座って喋っている子や、ブランコに乗っている子がいます。
「ここはどう?」
ブチ助が言いました。
茶々ばあさんは高校生を見るやいなや顔をしかめてしまいました。
「あの年ごろの人間はとくに嫌いさ」
女の子達は大きな声で笑ったり、話したりしていました。
茶々ばあさんは心底嫌そうに女の子達を見ました。
「カエデちゃんはね、高校生になってからケガが多くなって、泣いて帰ってくるのが多くなったんだ」
しっぽがパタパタ揺れました。
「ひと月前、あんなに毎日楽しそうに着ていた制服がビリビリになってね。教科書だって、靴だって、絵の具だらけになって帰ってきたんだ」
ブチ助にはよく分からなかったけれど、それはきっと酷いことなのだと思いました。
「その日から突然、学校へ行けなくなったんだ。怖くなって、家の外すら出られなくなったんだ。毎日あたしを撫でて泣いてばかりで。ママさんもパパさんも心配していたさ」
茶々ばあさんはとても悲しそうでした。
「人間っていうのはバカな生き物さ。あんなに優しい子に悲しい思いをさせるなんて。あたし達猫からしたら、人間なんてみんな一緒なのにさ。人間ってのは上とか下とか決めつけたがる」
ブチ助は上を向きました。
「人間って、変だね」
次に下を向きました。そしてもう一度、上を向きました。
「ぼくは、上を向くほうが好きだな。綺麗な空や星や木の葉っぱも、優しい人間の笑顔も、上にあるんだもの。下はご飯を食べる時や虫さん達を踏まないように気をつける時だけ」
「そうかい」
茶々ばあさんは笑いました。
「お前さんは人間が好きかい?」
茶々ばあさんのしっぽがゆらゆらと揺れました。
「人間はめんどくさい生き物だよ。それでも人間が好きかい?」
ブチ助は少し考えたあと、しっかりと頷きました。
小学校の子供達、商店街の人達も、おじいさんも、みんなブチ助に優しくしてくれました。
「うん。ぼくは人間が好きだよ」
「そうかい、そうかい」
茶々ばあさんは嬉しそうに言いました。
「海の見える場所はあるかい?」
「あるよ。連れていってあげる」
そうしてまた、坂道を登っていきました。
「あたしはね、学校なんて行く必要はないと思うのさ。でもママさんもパパさんも外には出なけりゃいけないって言うもんでねぇ。カエデちゃんが怖いって言う外とはどんなところか、一度は見てみたかったんだ」
坂道の途中で茶々ばあさんがポツリと言いました。
「なるほど、外には色んなところがあるんだねぇ」
「色んな人もいるよ」
ブチ助が答えました。
「きっと悪い人も、優しい人もいるよ」
「そうか」
二匹のしっぽがゆらゆら揺れました。
ありがとうございました




