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婚活の第一条件がレベルになったけど、私は絶対にレベル上げなんてしない!!  作者: 斑目 ごたく
だから私はレベル上げをしない
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交渉 1

「ここで手を引けだと?ふざけるな!!」


 魔人ジークベルトからの提案に、マックスはその言葉ごと投げ捨てるように腕を振っては、否定の言葉を叫んでいる。

 マックスはジークベルトの用意した椅子に座ろうとせず、その脇に立っては彼と向かい合っていた。

 ジークベルトが用意した椅子に腰を下ろしているのは、疲れ果てた様子のエッタぐらいだろう。

 ブラッドはマックスと同じような場所でジークベルトを警戒しているし、それ以外の者達は皆ウィリアムに寄り添っていた。


「おいおい!こっちはこれでも、あんた達のことを思って提案してるんだぜ?あの二人は相当な腕利きだ。それと戦ったんだ、あんた達だって無事じゃすまない。もう立っているのだってやっとの筈だ。なぁ、嬢ちゃん?そうだろう?」


 はっきりとした怒りの感情を滲ませ、ふざけるなと叫んだマックスに、ジークベルトは心外だと大げさに驚いて見せている。

 彼はマックス達の事を思ってそう提案したのだと話し、一人はっきりと疲れを滲ませ椅子に座って休んでいるエッタへと、同意を求める視線を向けていた。


「わ、私は疲れてなんかいませんわ!!あぅ・・・」


 心底疲れ果て、ぐったりとした様子で椅子へともたれかかっていたエッタも、その弱みを敵に指摘されればそのままではいられない。

 彼女はすぐに跳ね起きると、そのまま床へと足を下ろしていたが、隠せない疲れに眩暈がするようにふらつくと、すぐにその場へと膝を突いてしまっていた。


「いやいや、そりゃ無理だお嬢ちゃん。俺様は魔人だぜ?あんたがどれ程の魔力をさっきの戦いで使ったかなんて、全部お見通しなのさ。もう指の先ほどの炎も出せやしない、そうだろう?」


 眩暈にふらつき膝を突いてしまったエッタに、マックス達がすぐに駆け寄ろうとしている。

 しかしそれを睨みつけて制止したのは、エッタのせめてもの意地だろうか。

 しかしジークベルトは、そんな彼女の強がりなど全てお見通しだとニヤリと笑みを見せていた。


「そ、そんな訳ありませんわ!!何なら、今すぐ貴方を炎で包んであげてもよろしくってよ!」


 そんな全てを見透かしたようなジークベルトの言葉に、エッタは彼を睨みつけるとその手にした杖を向ける。

 彼女はそれでジークベルトを今すぐにでも燃やして見せると息巻いているが、その先端からは僅かばかりの輝きも見られなかった。


「おおっ、怖い怖い!・・・だが、止めときなお嬢ちゃん。そんな事すれば、あんた死んじまうぞ?分かってんだろ?」

「くっ・・・そ、それは・・・」


 エッタの格好だけのポーズにもノリノリで乗っかってくれたジークベルトはしかし、すぐに真剣なトーンへと声を低くすると、ゾッとするほど冷たい瞳で彼女の事を見詰めている。

 彼がそうして告げた死の宣告に、エッタは何も言い返せずにいた。


「ほらな?やっぱりボロボロだ。どうだい、ここで引き返したくなっただろう?」

「・・・いいや、ならない。ヘンリエッタの魔法がなくとも、俺達はまだ戦える!」


 ジークベルトの言葉に何も言い返せなかったエッタは、何よりも自分が良く分かっているのだろう。

 これ以上やれば、命を落とすと。

 ウィリアムを除けば、一行で最大の火力であった彼女の力がなくなれば、これからの戦いはより一層厳しくなる。

 それを示唆しては引き返せと促すジークベルトに、マックスは決して引き下がらないと強い意思で言い返していた。


「そうかい。だがまだあるぜ?引き返したくなる理由はよぉ・・・あんた!そうあんただ!あんたももう、ポーションが切れちまったんだろう?だからこいつらの治療をしてない・・・なぁ、そうだよなぁ!?」


 絶対にここで引き下がりはしないと宣言したマックスに、ジークベルトはつまらなそうに肩を竦めている。

 しかしそれも僅かな間だけで、彼はすぐに気を取り直すと、そのニヤニヤとした笑みを再び浮かべていた。


「わ、私ですか!?そ、それは・・・」


 ジークベルトはマックス達の遥か後方、床に倒れたままのウィリアムに寄り添っている者達へと視線を向けている。

 彼はその中のランディを指し示すと、もう治癒のポーションが切れてしまったのだろうと指摘していた。

 ジークベルトからの突然の指名に、ランディは驚き戸惑っているが、その言葉を否定しようとはしない。


「ランディ、返事しちゃ駄目よ!!もう治癒のポーションがないなんて知れたら、ことなんだから!!」


 そんなランディの態度に、そもそもジークベルトの言葉になど耳を貸してはいけないとセラフは話す。

 その注意はもっともなものであったが、彼女はその中でもっと重要な情報を漏らしてはいなかったか。


「セ、セラフ!?それは言っちゃ駄目だって!!」

「えっ?あっ!!?」


 彼女の失言は、その当人よりもそれを耳にした者に早く伝わっている。

 それにいち早く気がつき、指摘するアリーの言葉にセラフは一瞬不思議そうな表情で首を傾げ、そしてすぐにしまったと自らの口元を押さえていた。


「はっはぁ!!貴重な情報、どうもありがとう!」


 セラフが思わず漏らしてしまった致命的な情報に、膝を打つのは魔人ばかり。

 心底嬉しそうに歓喜の声を上げたジークベルトは、セラフに対して丁寧に頭を下げている。

 そのわざとらしい仕草に、セラフは悔しそうに顔を俯かせると唇を軽く噛んでいた。


「どうだ!これでもまだ戦うかい!?そりゃあ、無駄死になんじゃないかぁ?えぇ、おい!!」


 既に大きく損耗し、戦う力もさほど残っていないマックス達が、回復する手段までも失いながら戦い続けるのは自殺行為だ。

 それを声高に主張するジークベルトは、そのまま勢いで彼らを追い返そうと試みている。

 その迫力のある身振り手振りは確かに引き込まれるものがあり、彼が口にしている言葉も道理に叶うものだ。


「いいや!俺達は退か―――」


 そんなジークベルトの言葉にも、マックスはすぐに振り払うように腕を振るうと、不退転の決意を告げている。

 しかしそれは、ジークベルトによって言い終わる前に制止されてしまっていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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