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婚活の第一条件がレベルになったけど、私は絶対にレベル上げなんてしない!!  作者: 斑目 ごたく
だから私はレベル上げをしない
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バルトルト 1

「合わせろ、ブライアン!!」

「分かってる!!」


 左右から振るわれる刃は、その上下と前後も違えている。

 それはつまり、回避するのが不可能だという事を示していた。


「素晴らしい、連携・・・だが、まだ未熟!!」


 しかしそんな回避不能な攻撃すらも、バルトルトは凌いでみせる。

 全身を回転させるように動かしたバルトルトは、マックスの剣を打ち落とすのと同時に、ブラッドの刃をその鞘によって受け止めていた。

 それはそのタイミングが僅かでもずれれば、成立しなかった神業であろう。

 しかしそんな圧倒的な技量を見せつけられ、致命の一撃を回避されてしまったマックスは、ニヤリと笑みを覗かせていた。


「ヘンリエッタ、今だ!!」


 致命の一撃を凌がれたマックス達であったが、その攻撃によってバルトルトの動きを拘束はしている。

 そしてそれこそが今回の攻撃の狙いだったのだとマックスは唇を歪めると、近くに控えるエッタへと合図を送っていた。


「いわれなくとも、分かっておりますわ!!」


 本人の言葉通り、エッタの構える杖の先端には、マックスの声が掛かる前から魔力の輝きが煌いていた。

 それは彼女の言葉によってバルトルトの足元へと転移すると、そこから眩い光を放ち始めていた。


「危ないですわよ!二人とも、早くお引きなって!!」

「分かってる!!」


 放つ光の眩さは、その魔法の威力を物語っている。

 それは当然、そのすぐ近くにいる二人をも巻き込むものだろう。

 その危険に、エッタが避難を呼びかけるまでもなく彼らはその場から退避を始めている。

 それは問題なく、間に合うタイミングだろう。

 何の妨害もなければ。


「なるほど、そういう狙いか・・・悪くはない、しかしまだ甘いな!」


 退避を始めたマックス達にも、それは自分達がギリギリで間に合うタイミングでの話しだ。

 それに遅れて動き始めるバルトルトが、それに追いつける筈もない。

 ならばと、彼は異なる選択を取る。

 つまり、彼らをその場へと引き込む選択を。


「ぐっ、何を・・・!?」

「不味い!ヘンリエッタ君!!」


 伸ばした腕と絡め取る足は、容易にその場から離れようとして二人を捕まえていた。

 それは彼らをその場へと引き戻して、決して逃げられないようにとさらに拘束を強くする。

 彼らの足元では、エッタの魔法が今にも発動しようと、輝きを増しているところであった。


「いいや、構わない!ヘンリエッタ、このまま俺達ごと焼き払え!!」

「そ、それは・・・私には、私には出来ませんわ!!」


 危険に、咄嗟に回避を願う本能を捻じ伏せて、マックスは自分達ごと焼き払えとエッタに命令を下す。

 しかしマックスが如何に覚悟を決めようとも、それをエッタが実行出来るかどうかは別の話しだ。

 魔人の討伐という人類救済のお題目も、目の前の幼馴染を焼き殺すことを許容出来るほどのものではない。

 エッタはマックスの指示に瞳を迷わせると、やがてその杖を地面へと打ちつけて、そこに宿った魔力を霧散させてしまっていた。


「やはりまだ甘い・・・いや、青いな」


 エッタに味方を巻き込んでまで攻撃をする覚悟はないと見抜いていたバルトルトは、予想に違わなかったその結果に、つまらなそうに嘆息を漏らしている。

 彼はもはや用はないと、捕まえていた二人を跳ね飛ばすと仕舞っていた刀を再び抜き放っていた。


「しかしやはり・・・その力は、危険ゆえ」


 バルトルトが抜き放った刃を向けたのは一人、僅かに距離が離れた場所に立っているエッタであった。

 彼女へと狙いを定めたバルトルトがそちらへと一歩踏み出すと、それは幻覚のような不確かでいつの間にかそのすぐ目の前まで迫っていた。


「ひっ」

「・・・御免」


 それは技術か、まやかしか。

 突然目の前に現れたバルトルトの姿に、エッタは怯え短い悲鳴を漏らすことしか出来ない。

 それは彼女の容姿も相まって、いたいけな少女の姿をしている。

 バルトルトが僅かに躊躇ったとしたら、それが原因だっただろうか。


「っ!小癪な!!」


 しかしその僅かな隙に、突け入る事が出来る者もいる。

 死角から飛来した矢はしかし、彼の頭を貫く前に切り払われていた。


「エッタ、今の内に!!」

「わ、分かりましたわ!!」


 一の矢を切り払われても、二の矢三の矢と続ければいい。

 連続して放つ矢にバルトルトの動きを拘束する事に成功したアリーは、エッタに今の内に逃げるように告げる。

 それに慌てて、エッタもバルトルトから距離を取り始めていた。


「この程度の妨害、どうとでもなる!!」

「ひぃぃぃ!?嘘ですわよね、嘘ですわよねー!?」


 不意を突かれた一の矢ならば、その刀を使って切り払う必要があったが、狙われていると気づいた後続の矢ならば、簡単に躱すことが出来る。

 ましてやバルトルトほどの達人ともなれば、身を躱しながら標的に刀を振るうことも容易であった。


「―――そのまま逃げるぜよ、ヘンリエッタ殿!」


 しかしそれも、頭上から降ってきた巨大な人影が現れるまでの話しだ。

 それはその勢いのままに、手にした巨大な斧を振るっている。

 しかしその狙いはいい加減で、力任せな一振りでしかない。

 そんな一撃であるならば、バルトルトは簡単に受け流してしまうだろう。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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