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婚活の第一条件がレベルになったけど、私は絶対にレベル上げなんてしない!!  作者: 斑目 ごたく
だから私はレベル上げをしない
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彼らは同じものを求める 2

「えっ!?その、もうちょっと話を・・・行っちゃった。何だったんだろう、あの人・・・?」


 明らかに自らにとって重要な情報を話しているランディに、アリーはもっと話を聞かせてと呼びかけている。

 しかし素早く身を翻し、雑踏の中へと消えた彼の事を引き止めることは出来ない。

 残念そうに彼が去って行った方を見詰めるアリーの視線の先には、がしゃがしゃと鎧をかき鳴らしながら何やら慌しく誰かを探している様子の集団が通り過ぎていく。


「アリー殿!そっちはどうだったぜよ?こっちは全然だったぜよ!」

「アレクシア、そっちは・・・ウィルソンも帰ってきてたのか。そっちは・・・ふん、駄目そうだな」


 雑踏の中に、まだランディの姿がどこかにないかと視線を巡らせているアリーに、近づいてくる大柄な人影が二つ。

 それは明るく笑いながら、自らの失敗を語っているウィルソンと、彼の表情を見てはそれを悟るマックスであった。


「あ、あのね!良く聞いて、二人とも。探していたアイテムなら、見つけたよ」


 探していたアイテムを見つける事に失敗したにもかかわらず、彼らの表情がそれほど暗くないのは、それが淡い期待でしかなかったから。

 その淡い期待を見事掴み取り、アイテムの所在を突き止めたアリーはしかし、その面倒臭い事情に恐る恐るそれを二人に話し始める。


「何!?どこだっ!いや、幾らだ!幾ら必要だ!?金なら出す!それがどうしても必要なんだ!!」

「ま、待って!お願い、最後まで聞いてマックス!!」


 ここに集まった三人の中で、それをどうしても必要としていたのはマックスだ。

 それ故に彼は、それを見つけたというアリーの言葉に激しく興奮し、彼女が全てを語り終わる前にその肩を激しく揺すり始めていた。


「待つぜよ、マクシミリアン殿。アリー殿がまだ、話している途中ぜよ」

「しかしっ!!いや、そうだな・・・悪かった、アレクシア。続きを話してくれ」


 興奮した様子のマックスは、アリーの呼び掛けにも止まる気配を微塵も見せない。

 それを見かねてか、マックスの肩へと手を伸ばしたウィリアムが、彼とアリーを無理矢理引き離している。

 マックスはそんな彼に対しても食って掛かっていきそうな気配を見せていたが、それは流石にやりすぎだと気付いたのか冷静になると、アリーに話の続きを促していた。


「うん。えっとね・・・二人とも驚かないで欲しいんだけど。そのアイテムは、セラフが持ってるの」

「何と、セラフィーナ殿が!何ぜよ、それならアリー殿から頼めばすぐに・・・はっ!そうぜよ、セラフィーナ殿は今・・・うっ、うぅ・・・セラフィーナ殿ぉ」


 促された話の続きにも、アリーは僅かにもったいぶってそれを告げる。

 その内容にウィルソンはすぐに歓声を上げ、それならば何も問題ないと話していた。

 しかしそれも件の女性、セラフは今どこにいて何をしているかを思い出すまでだ。

 それを思い出してしまったウィルソンは悲しそうな表情を浮かべると、鼻を鳴らしてはぐすぐすと泣き出してしまっていた。


「うん、そうなの。セラフは今、お見合いで遠くに・・・」


 ウィリアムが急に泣き出してしまったのは彼が恋焦がれている女性、セラフが遠いどこかでお見合いをしているからだろう。

 身分の違いに叶わぬ恋だと知っていても、いざ本当に誰かのものになってしまうと知れば泣きたくもなってしまうというもの。

 そんな彼の心の動きが分かるのか、アリーもまたどこか悲しそうな表情でそれを呟いている。


「ふん、それがどうした」


 しかしそんな二人の悲しみを、鼻で笑う男がいた。

 アリーからアイテムの所在を聞いたマックスは、それが決して手が届かない場所ではなく、寧ろ簡単に手に入るじゃないかと笑って見せている。

 それは一体、どういう事だろうか。


「何をぐずぐずしている?急ぐぞ、二人とも」

「えっ・・・行くって、一体どこに?」


 その場から踵を返し、どこかへと向かおうとしているマックスは、呆気に取られたようにその場から動こうとしない二人に、呆れたように肩を竦めると手を差し出してくる。

 マックスが差し出した手に、釣られるように手を伸ばしたアリーはしかし、その意図を理解してはいない。

 彼女の問い掛けにマックスは僅かに唇を歪めると、静かに目的地を告げた。


「どこに?愚問だな、アレクシア。決まっているだろう?」


 アリーの手を掴まえたマックスは、そのまま駆け出していく。

 それに慌てて駆け出した、ウィリアムの足取りは軽い。

 それはその向かう先が、彼の望みとも同じだったからだろう。


「―――あいつの所にだ」


 はっきりとそれを口にしたマックスに、迷いの色はない。

 それを追い掛けるウィリアムの足も力強く、そこに躊躇いはないだろう。

 しかしただ一人、その足取りも重く、迷いを抱える者がそこに、いた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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