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婚活の第一条件がレベルになったけど、私は絶対にレベル上げなんてしない!!  作者: 斑目 ごたく
だから私はレベル上げをしない
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ランディの午睡

 昼下がりの暖かな日差しは、適度な食事によって満たされた満腹感もあいまり、強烈に眠気を刺激する。

 市場の端に併設されたフードコートのような食事スペースには、周辺に乱立する屋台からのいい匂いが漂ってきている。

 それは満たされたお腹には食欲を刺激することはないが、それに引き寄せられた人々が齎す雑踏の騒がしさは、寧ろ心地よいBGMとなって目蓋を重くしていた。


「・・・っは!?危ない危ない、寝てしまう所でした・・・解読の途中だというのに」


 こくりこくりと一定のリズムを刻んでいた頭は、深い眠気に一気に深く落ち込んでいく。

 それは座ったままの体勢で眠りこけていた姿勢に、すぐ手前へと存在した机への衝突を齎しており、その衝撃は彼の意識を一気に覚醒させるのに一役買うこととなる。


「っとと、眼鏡眼鏡・・・うわぁ!?あ、危ない!?ふぅ~・・・何とか間に合いましたか」


 彼方へと夢を描いていた反動で、ズレ落ちそうになってしまっていた眼鏡を慌てて掛け直した白髪の男性、ランディは軽く頭を振るっては眠気を払っている。

 彼は垂れ落ちそうになっていた涎を慌てて拭うと、それによって開いた書物が汚れずに済んで安堵の吐息を漏らしていた。


「ふぁ~ぁ・・・それにしても、いい天気ですねぇ」


 眠気を誘う悪魔のような陽気も、目覚めてみれば気持ちのいい暖かな日差しに変わる。

 軽く背筋を伸ばしては欠伸を漏らしたランディは空を見上げ、そこに広がる雲一つない青空に暢気な感想を漏らしていた。


「さて、続きをやりませんと。どこまで読みましたっけねぇ・・・?あぁ、そうだ!ここです、ここ!何々・・・」


 彼がのんびりと空に浮かぶ僅かな雲の様子を眺めていたのは、一体どれほどの時間だったろうか。

 少なくともそれは、周りの喧騒が僅かに静かになっているほどの暇であったのは間違いない。

 長い一息に満足したランディは、先ほどまで行っていた作業へと戻り、手元に広げてあった本へと視線を落とす。

 そのおんぼろな本は、恐らく彼がセラフから譲り受けたポーションによって復元した古文書だろう。

 その文面を指でなぞり、ようやく自分が読み解いた部分まで辿りついた彼は嬉しげに歓声を上げ、早速とばかりに続きへと目を落としていた。


「ふむ・・・やはり封印の要へと辿りつくには、低層から向かうのが正解のようですね。これは彼に伝えなければ・・・」


 ランディは癖なのか、読み解いた内容をぶつぶつと呟きながら、その本を読み進めていく。

 彼はそこに記された内容に、考え込むように顎へと手を添えると、ここにはいない誰かに向かって語りかけていた。


「いえ、もう少し詳細な情報が欲しいですね。何々・・・ふむふむ、その先に進むにはアイテムが必要と。形状の記載がありますが、これは分かり辛いですね。図解でもあればよかったのですが・・・おや、しかしこれはどこかで・・・?」


 読み解いた本の内容を誰かに伝えなければと呟いていたランディはしかし、今分かっている情報では少なすぎると、さらに解読を進めていく。

 その過程で彼は、そこを進むにはあるアイテムが必要であると読み解いている。

 一目で分かる図解などで示されていないその記述は分かり辛く、詳しい情報を求めて先へ先へと読み解いても、ランディは首を捻るばかり。

 しかし頭で思い描いたその記述は、どこかで見た姿をしていた。


「あぁ!あれはあの時の!!」


 ランディの頭に思い浮かんだのは、どこかの露店の店先とそこに佇む黒髪の美女の姿だ。

 その店先の景色を良く思い返すと、その片隅に先ほどの本の記述とそっくりなアイテムが転がっていた。


「ええと、どこのお店でしたっけ・・・と、とにかく急がないと!!」


 そっくりなのはあくまでも、記述から思い浮かべたイメージに過ぎない。

 そのためそれが本当に必要なアイテムなのか確かではなかったが、今はそれしか手がかりはないのだ。

 とにかくそれを確保しないととランディは慌てて席を立ち、記憶の中の露店へと足を急がせる。

 ランディが立ち去った後のテーブルには、彼が散らかしたままのそれと、それを目にして遅かったかとがっくりと肩を落とす、武装した人々の姿だけが残されていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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