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セラフは新たなる道を模索する 2

「ふふっ、やっと笑った。やっぱり、エッタは笑ってる時が一番可愛いね!」

「っ!?や、やめてくださいまし!恥ずかしいですわ、セラフィーナさん!!」


 エッタがようやく見せた笑顔に、セラフもまた笑みを見せると、自分は彼女のその表情が好きだと話している。

 彼女のその言葉に顔を真っ赤に染めたエッタは、再び俯いてはその顔を覆ってしまっていたが、それは恐らく涙を流すためではないだろう。


「ん?ちょっと待てよ・・・ねぇ、エッタ?お金さえあれば、いいんだよね?」

「確かにそうですけど・・・余り、蒸し返さないでくださいます?私も随分、反省しておりますの」


 陰鬱とした雰囲気が消え、どこか和やかな空気が漂いだした二人に、セラフはその顎に指を添えると何事か考え始めていた。

 そうして彼女の口にした言葉に、エッタはもう蒸し返さないでと露骨に眉を顰めている。

 しかし彼女のその返答に、セラフはニヤリと笑みを作っていた。


「よし、それなら・・・決めた!お金なら、私が出すよエッタ!!それであの人達を二人で雇いましょ!ね、いいアイデアだと思わない!?」


 仲間が見つからない者がここにおり、仲間に支払えない者がここにいる。

 であるならば、その二人が手を取り合えば何も問題ないだろうと、自信満々にセラフはエッタへと手を差し出していた。


「は?い、いえですからセラフィーナさん!そういうの駄目だと・・・」 


 しかしそれは、エッタが今まさに反省している過去の行いを、そのまま繰り返すことに他ならない。

 それは駄目だと口にするエッタ、しかしセラフがその言葉を聞くことはない。


「よーし、そうと決まれば善は急げね!!」

「ちょ、ちょっとお待ちになってセラフィーナさん!私は何も、賛成した訳では・・・」


 もはや完全に決まった事だと手の平を打ち鳴らし、早速とばかりに行動に移そうとしているセラフの姿に、エッタは焦った様子で彼女を何とか制止しようとしている。

 果たして、彼女の試みは成功するだろうか。

 そこに彼女達へと近づいてくる、一人の女性の姿があった。


「お嬢様、お嬢様ー!どこにおられますか、お嬢様ー!ベンジャミン様がお見えでございます!」

「ベンジャミン!!そうか今日は・・・ふふふっ、まさに打ってつけのタイミングね!!ケイシー、ここよここー!!!」


 彼女がこの街に滞在して、今日が丁度一ヶ月という所であった。

 それは彼女をこんな辺境に置き去りにした執事、ベンジャミンが設けた期限、まさにその時である。

 折り目正しく時間をきっちりと守る彼は当然、その日を狙ってこの場に現れ、今まさにセラフの前へと歩いてきている所であった。


「お嬢様、まずはご壮健なご様子。このベンジャミン・ブラックモア、心よりお喜び申し上げます」


 大声を上げながら手を伸ばし、それを大きく振っては存在をアピールしているセラフに、ケイシーとベンジャミンの二人は真っ直ぐそちらへと歩いてくる。

 そうしてセラフの前へと進み出たベンジャミンは丁寧にお辞儀をすると、彼女が無事である事に心の底からの祝辞を述べていた。


「はいはい、そういうのいいから!お金、持ってきてるんでしょ?さっさと寄越しなさい!」

「お、お嬢様!?余りに、はしたのうございます!!」


 丁寧に挨拶を述べてきたベンジャミンに対し、セラフはそれをぞんざいに跳ね除けると、彼が持ってきているだろう追加の資金をさっさと寄越せと手を伸ばしている。

 ベンジャミンが持ってきているそれを、喉から手が出るほど欲しがっているのは、寧ろケイシーの方だろう。

 彼女は彼から渡された多くはない資金を、何とかやり繰りしてはセラフの我が侭にも応えてきたのだ。

 しかしそんな彼女を尻目に、セラフはその金を寄越せとベンジャミンに要求している。

 ケイシーが彼女のそんな振る舞いに声を上げたのは、何もそのはしたなさだけが問題ではないだろう。


「ケイシー、エインズワース家は商売で身を立てた家。ある程度のがめつさは、許容されるべきと学びなさい」

「は、はぁ・・・ベンジャミン様が、そう仰られるなら」


 しかしそんなケイシーの抗議は、ベンジャミンによって窘められてしまう。

 彼は商売によって成り上がり、今の地位を築いた主人の家に、セラフの振る舞いは寧ろ正しくすらあると諭している。

 その言葉にケイシーは納得する姿勢をみせていたが、果たしてその内容は彼女の行動を褒め称えるものであっただろうか。


「よろしい。ではお嬢様、これを」

「・・・これっぽっち?こんなんじゃ、全然足りないわ!!」


 自らの言葉に納得する様子を見せたケイシーに、ベンジャミンは軽く頷くとその懐から小ぶりな袋を取り出し、それをセラフへと差し出している。

 丁寧に両手を添えながらそれを差し出したベンジャミンに、セラフは引っ手繰るようにしてそれを奪い取っている。

 そうして手に入れたお金の入った袋を、軽く振るってはその重さを確かめていた彼女は、その思った以上に軽い手応えに不満を叫ぶ。


「お嬢様とケイシー、二人が暮らすには十分な額かと」

「それにしたって少ないっての!!ほら、さっさと出しなさい!!あんたの事だから、どうせ用意してあるんでしょ!!人を雇うのよ!レベル上げの為なんだから、お母様も文句はないでしょ!!」


 ベンジャミンがセラフに手渡したのは、前回と同じ一か月分の滞在費だろう。

 確かにそれはセラフとケイシーが慎ましい生活を送る分には十分な額であったが、腕の立つ冒険者を雇うには物足りないどころの額ではない。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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