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美女の危機にヒーローは現れる 2

「待てや、ごらぁぁぁ!!!てめぇ、こんな事してただで済むと思ってんのか!!!」

「何だ、まだやるつもりか?」


 しかしそれを、彼に腕を切り落とされた男が止める。

 その男は傷口を必死に縛り、どうにか流れ出る血を止めると、自らの得物を何とか握りマックスへとそれを突きつけていた。


「お、おい止めろって!あいつは・・・!」

「何でだ!?何故、止めるっ!!・・・何だって!?何でそんな奴が・・・?」


 マックスへと食って掛かろうとしていた男を、周りの仲間達が必死に制止している。

 彼は何故、仲間がそんな事をするのか分からないという表情を見せていたが、その耳に何事か囁かれると、驚くように目を見開きすぐに大人しくなってしまっていた。


「知るか!と、とにかく兄さん!何やら兄さんと、こいつは仲が悪いご様子。何なら兄さんも、俺達と一緒に楽しんでいかれませんか?へへっ、勿論一番は兄さんに譲りますんで・・・」

「・・・知るか。そんなのは、お前らで好きにやればいい。俺を巻き込むな」


 マックスが自分達では相手にもならない実力者だと知った男達は、ひたすら下手に出ることでこの場を凌ごうとしている。

 彼らはマックスとセラフが不仲なのを利用して、彼を仲間へと引き込もうとするが、マックスはそれを相手にもせずにそのまま立ち去っていってしまっていた。


「は・・・?ちょ、待ちなさいよあんた!!ここまで来て、見捨てるっていうの!?おい!ふざけんなー!!!」


 足早に立ち去っていくマックスの姿は、薄暗い洞窟の見通しにあっという間に見えなくなってしまう。

 その素早い動きに、それを制止することすら出来なかったセラフは呆気に取られ、彼の姿がなくなって始めてそれに対して文句を叫んでいた。


「お、おい。こりゃ、どういう事なんだ?」

「知るか。それよりも、今ならやれるだろ?さっさと剥いてくれ、俺は腕が・・・」

「あ、あぁ・・・任せろ」


 セラフを放置して立ち去っていってしまったマックスの姿に、彼女を囲んでいる男達は戸惑い顔を見合わせている。

 しかしその中の一人である、マックスに利き腕を切り落とされた男は、そんな事よりもと欲望に血走った目をセラフへと向けていた。

 どうにか止血も終わり、命の危機を脱した男も、その生命が脅かされた事実は拭えない。

 それは彼の本能を刺激し、その表情はまるで獣のように欲望に支配されたものとなってしまっていた。


「ぎゃーーー!!!犯されるーーー!!!マックス、マックーーッス!!!あんた許さないから、化けて出てやるー!!!」


 利き腕を切り落とされ不自由な男に代わり、周りの男達がセラフの服を剥ぎ取ろうとその手を伸ばしてくる。

 セラフはその状況に手足を激しく暴れさせ始めるが、それもやがて男達によって取り押さえられてしまう。

 もはや逃げる事も出来ないと悟った彼女は、こんな男達に乱暴されるぐらいならばと、最後にマックスへの恨み言を残し大きく口を開く。

 それは自らの舌を噛み切り、命を絶つための動きだろう。


「おっと、やらせねぇよ」

「んんーー!!?」


 しかしそれも、それに気付いた男達が彼女の口へと布を突っ込む事で阻止されてしまう。

 そうして自ら命を絶つ手段も失われた彼女は、ただただ彼らの事を睨みつける事しか出来なくなってしまう。


「おい、まだか!?もう待ちきれねぇよ!!」

「もう少し待てって!これ、どうなってんだ?金持ちの服ってのはどうも、複雑でいけねぇ」


 利き腕を切り落とされた男は、もはや待ちきれないと下を脱ぎ始めている。

 早く早くと急かす彼の言葉にも、セラフの服に手を伸ばしている男達はまだ時間が掛かると返していた。

 彼らは初めて触る貴族の服装に苦戦しており、どこから手を掛けたらいいかと迷っているようだった。


「そこは、向こうを先に外すべきだな」

「あぁ、なるほど!そういう仕組みか!助かったよ、あんた!」

「礼の必要ない・・・ところで、お前達は何をしている?」

「何って、あんた・・・そんなの、こいつを犯そうとしているに決まってんだろ?」


 セラフの服のあちこちを引っ張っては、どうやったらそれが外せるのかと苦戦している男達に、正しい手順を告げる声が届く。

 男達はそれに素直に感心し、感謝の言葉を告げるが、彼らはもっと良く考えるべきだったのだ。

 この場でそれを言える者が、一体誰であるかを。


「そうか・・・なら、死ね」

「は?あんた、何いって―――」


 余りにも短く、簡潔に伝えられた死の宣告は、それ故にその意味をうまく伝えない。

 それは当然、それを告げられた男達に戸惑いと疑問を与えていた。

 しかしそれも、問題にはならないだろう。

 何故なら彼らは、既にそれらを二度と抱く事が出来なくなってしまったのだから。


「ふん!こんなものか・・・あっけない」

「マックス・・・帰ってきてくれたの?その・・・あ、ありが―――」


 一太刀でセラフの周りを囲む男達を切り伏せたマックスは、つまらなそうにその成れの果てを見下ろしている。

 後一歩でという危ない所で救われたセラフは、一度見捨てられかけたにもかかわらずどこか目を潤ませ、彼に対して感謝の視線を向けていた。


「別に、お前を助けに戻った訳じゃない。ああいう輩を放置すると、周りが迷惑すると思い出しただけだ。勝手に勘違いしてんなよ、妄想女」


 しかしそんな素直な感謝の心も、マックスによって踏みにじられてしまう。

 彼女が向けるキラキラと視線を避けるように顔を背けた彼は、お前を助けに戻った訳ではないと吐き捨てる。

 それどころか彼は、こちらの行動を自分の都合よく解釈するセラフの事を、馬鹿にしたような台詞までをも残していた。


「はぁ!?せっかくこっちが感謝しようってのに・・・それぐらい素直に受けないよ、このとーへんぼく!!」

「ふん!こんなダンジョン奥深くにまでひょいひょいついて来て、案の定犯されそうになっている馬鹿女に何を言われても悔しくはないな!悪いが、そんな奴に構っている暇はないんでな、先に進ませてもらうぞ」


 当然それは、セラフの怒りに触れてしまう。

 彼女は半分唇を通り過ぎていた感謝の言葉を引っ込めると、マックスに対する文句を叫び始める。

 しかしそんな彼女の事など相手にしていられないと、マックスはわざとらしく手を払う仕草をしてみせると、さっさと踵を返しその場から立ち去ろうとしていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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