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危険な兆候

「・・・やった、やったわ!!見たわよね、皆!!私、やったわ!」


 僅かな沈黙の後に、切り裂かれた魔物の身体がゆっくりと後ろへと倒れていく。

 それを目にした黒髪の美女、セラフは後ろを振り返ると仲間に向かって笑顔を振りまいていた。


「よっ!姐さん、流石です!!」

「いやぁ~、見事な一太刀でした!中々出来ませんよ、ありゃ!」


 そんなセラフの振る舞いに、彼女の後ろに控えていた柄の悪い男達が、やんややんやと囃し立てる。

 彼らは口々に彼女への賞賛を口にし、その言葉にセラフもまた嬉しそうにふんぞり返っていた。


「ふふ~ん、そうでしょうそうでしょう!やれば出来るのよ、私にだって!!」


 燦々と降り注ぐ賞賛に、気分良くしたセラフは明らかに調子に乗った様子で、自らの成果を誇っている。

 彼女が倒した魔物は人型をしており、恐らくゴブリンか何かの類だろう。

 人型の魔物は頭がよく、武器の類も使いこなす。

 そのため幾ら下級のものとはいえ、今の彼女には手が余る相手の筈であった。

 それを彼女が仕留められたのは、周りの男達がそれだけ十分にお膳立てを頑張ったからだろう。


「ささっ、姐さん!次行きましょ、次!!」

「今の姐さんなら、もっと深い所でも余裕ですって!!」


 しかし彼らはそんな事をおくびにも出さずに、セラフを盛り立てる事に徹している。

 その思惑は、一体どこにあるのだろうか。

 彼らはさらに奥に進んだ方がレベル上げに効率がいいと、頻りにセラフの事を急かしていた。


「そう?まぁ、確かに今の私なら余裕かもねー!ふふん!それじゃ、先に進むわよー!!あなた達、ついてきなさい!!」


 周りの男達に煽て上げられ調子乗っているセラフは、彼らの思惑を考えようともしない。

 それどころが気分良く鼻を鳴らした彼女は、寧ろ先頭に立ってはさらにダンジョンの奥へと歩みを進めてしまっていた。


「・・・行ったな。おぅ、向こうはどうだった?」

「人気はないな。まぁ、こんな浅い階層の奥の方までやってくるなんて、よっぽどの物好きだけだろうよ」

「違いねぇ・・・ってことは、問題ないな?」


 セラフが先に進んだのを確認した男は、後ろからやってきた男へと声を掛ける。

 彼らは何やら周りに目をやっては、そこに人気がないことをしつこいぐらいに確認しているようだ。


「おぅ、その通りよ。へへっ・・・楽しみだなぁ、兄弟!見たかい、あの身体?きめの細かさが、そこらの女とは桁が違うぜ!・・・むしゃぶりつきてぇな!」 

「・・・俺が先だぞ」

「分かってるって、兄弟!!っとと、急ごうぜ!あいつらが先に始めちまうかもしれねぇ!」

「おぅ!」


 下卑た笑みをその口に浮かべる男達は、その表情に見合った下品な言葉を吐き出している。

 それはセラフを、この人気のないダンジョンの奥で襲うという計画だろう。

 既にダンジョンの奥深くにまで進み、人気のないことも十分に確認したこの場所に、もはや逃げ場など存在しない。

 男達は先に進んだ仲間達に、慌てて足を急がせては追いついていく。

 その足取りは、欲望に浮き立ったとても軽いものであった。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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