非情な現実
雲一つない快晴に、眩しい朝日が輝く時間帯は、新しいパーティメンバーを募るには打ってつけの条件だろう。
事実、あちこちでこれからダンジョンに挑むのであろう冒険者風の者達が、臨時のメンバーを募集して声を上げている。
その中の一人であるアリーはしかし、彼らとは比較にならないほどの人気を誇っていた。
それもその筈だろう、容姿を気にしない者が多い女冒険者の中にあって、彼女は貴族社会で磨かれた圧倒的な美貌を誇っている。
しかもファッションに人生を掛けていたセラフの親友である彼女は、当然その影響でお洒落のセンスにも長けている。
結果、その美貌は周りから群を抜いており、さらに人当たりが良く愛想もいい彼女は、このダンジョンにおいてアイドルといってもいい存在になっていた。
そんな彼女が今までの固定のパーティから抜け、新たなパーティを募集するというのだ。
彼女狙いの男達が、それに向かって飛びつくのは当然の成り行きだろう。
「お、アリーちゃんじゃん!今日も可愛いねぇ!何々、パーティメンバー募集だって?そんなの、決まってるだろ?アリーちゃんのパーティなら喜んでってなもんだ!!え・・・?レベル1の女のお守り?あー・・・それは、ちょっとなぁ」
「駄目駄目!そんな連れてちゃ、命が幾つあっても足りないよ!幾らアリーちゃんの頼みでも、それだけは聞けねぇな!!」
「その子を省いて、アリーちゃんと後ろのメイドちゃんだけってのは?駄目?ふーん、ならいいや」
しかしそんなアリーをもってしても、パーティメンバー探しは難航してしまう。
それはわざわざ指摘するまでもなく、彼女の後ろに控えているセラフが原因であった。
彼女はメンバー探しをアリーに任せ、その様子をケイシーと共に後ろで見守っていたのだが、その機嫌は時間を追うごとに加速度的に悪くなってしまっていた。
「何よ何よ!!皆口を揃えてレベル1、レベル1って・・・!それは前にも聞いたわよ!!いい加減にしなさいよね!!!」
加速度的に溜まっていく不機嫌は、やがて鬱憤という形で爆発する。
その足元に地団太を踏んでは大声で文句を喚き散らすセラフは、美人であるが故にとてつもない迫力を放っていた。
それはただでさえ、彼女というお荷物のために離れつつあったアリーの周りの冒険者達が、さらに遠のいてしまう切欠になってしまう。
「お嬢様!?駄目です、どうかお静かに!お嬢様のために折角頑張ってくださっている、アレクシア様にご迷惑が!」
「それが何だっていうのよ!どうせ誰も来やしないわ!!もう、どうだっていいのよ!!」
鬼の形相で不満を撒き散らしているセラフの姿に、男達はすごすごと引き下がっていってしまう。
それは不味いとケイシーは主の暴挙を止めようとするが、彼女はそんな制止に聞く耳を持つことはない。
それどころか、目の前の惨状に自棄になってしまった彼女は、ケイシーの制止を振り切るとこの場から逃げ出すように駆け出していってしまう。
「アレクシア様!お嬢様が!!」
「えぇ!?ごめんね、ちょっと待ってて!ケイシー、追い掛けるよ!!」
飛び出していってしまったセラフに、ケイシーは急ぎアリーへと声を掛ける。
彼女が怒っているのは気付いていたが、まさか飛び出していってしまうほどとは思っていなかったアリーは、それに驚きの声を上げると慌てて彼女を追いかけ始めていた。
「は、はい!」
流石は冒険者として経験を積んだ者か、かなりの速度で駆け出していくアリーに、ケイシーは長いメイド服のスカートの裾を摘むと、その後ろを必死に追いかける。
しかしその距離は、段々と開いていってしまっていた。
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