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順調過ぎる滑り出し

 力任せに振り切った剣筋は、それでも鋭く肉を裂く。

 その確かな手応えに顔を上げたセラフが見たものは、虚空へと溶けるように消えていく魔物の姿であった。


「やった・・・!やったわ!!何よ、私だってやれば出来るじゃない!!」


 はっきりと仕留めたその姿を目にしても、中々それを信じる事が出来ないセラフは、僅かな時間を置いてようやくその実感を噛み締めている。

 そうして強くその拳を握り締めた彼女は、それを振り上げると自らを誇るように雄叫びを上げていた。


「そうよ、そうなのよ!別に、身体を動かすのだって苦手って訳じゃないんだし。こちとら美容のための早朝ランニングを毎朝、欠かしてないんだからね!!どんなもんよ!!!」


 誰しもが憧れるような完璧なスタイルを誇るセラフは、当然の如く身長も高く、その身体も引き締まっている。

 彼女はそれを維持するための運動を欠かしておらず、元々別に運動神経も悪い方ではない。

 そのためぶっつけ本番で挑んだダンジョン探索はこれまでの所、意外なほどに順調に進んでいた。


「ふふふ・・・そろそろかしら?ワクワク、ワクワク」


 初めて魔物を討伐したセラフは、どこかそわそわと身体を揺り動かしていた。

 それは彼女がここにやってくるに至った理由、つまりはレベルアップを待ち望んでいるのだろう。


「・・・こないわね?上がる時ははっきり判るって聞いたのだけど・・・ちぇ!なーんだ、一匹倒したぐらいじゃ上がらないんだ!」


 しかし、彼女が待ち望んだ瞬間はいつまで待っても訪れる事はない。

 この浅い階層で現れるのは、ほとんど通常の動物と変わらないような弱い魔物ばかりだ。

 事実、彼女が先ほど倒した魔物も、少しばかり普通の奴よりも身体の大きいといった程度の蝙蝠であった。

 それを倒したぐらいでは、流石にレベルは上がりはしない。

 セラフもそれは分かっていたのか、悔しそうに舌を鳴らすと残念だとばかりに両手を挙げている。

 その声は、内容とは違い欠片ほども残念がってはいないものであった。


「ふふん!一匹倒した程度で上がらないなら、じゃんじゃん倒すだけよね!!よーし、いっくぞーー!!!」


 その口元に浮かんだ笑みは、確かな自信の現れか、それともただの調子に乗った迂闊さのしるしか。

 ベンジャミンから渡されていた片手剣を一度高く掲げたセラフは、このまま魔物を薙ぎ倒していくと堂々と宣言すると、そのまま駆けだしていく。

 彼女の姿は薄暗いダンジョンの向こう側へと、瞬く間に消えてしまっていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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