表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚活の第一条件がレベルになったけど、私は絶対にレベル上げなんてしない!!  作者: 斑目 ごたく
だから私はレベル上げをしない
103/110

決着 2

「それを使うんだ!それなら、それなら奴を・・・魔人を倒せる!!」

「え、えっ!?何よ、急に。だってさっきは・・・えっ、何これ眩しっ!?」


 絶望の中で見出した希望に、マックスは縋りつくように叫んでいる。

 その言葉にようやく身を起こしたセラフはしかし、もはや無理だと諦めようとしていた。

 しかしそんな彼女も、手にした剣が眩く光り輝いているのを目にすれば、驚き目を見開きもするだろう。


「そいつを・・・そいつを寄越せぇぇぇぇっ!!!」


 セラフのレベルを無理やり上げることで、完全に無敵となった筈の身体が、あっさりと傷つけられてしまった。

 その事実に震えるジークベルトは、怒りを顕にするとセラフへと飛び掛る。

 その狙いは、彼女が手にする剣だろう。


「っ!?何だ、何に突っかかる!?」


 今だに状況を理解していないセラフならば、そのまま為す術なくそれを奪われてしまうだろう。

 しかし彼女へと飛び掛ったジークベルトは突然、その途中で突っかかるようにその足を止めてしまっていた。


「セラフィーナ!!それで・・・それで早く、こいつを倒すんだ!!」


 それはボロボロで、もはや立つことすら出来そうもないブラッドが、その足を抱きかかえるように掴んでいるからであった。


「邪魔を、するなぁぁぁっ!!!」

「ぐぁ!?」


 しかしそれも、すぐにジークベルトによって振り払われてしまう。

 その際に自らの鋭い爪を振るったジークベルトは、ブラッドの身体を深々と切り裂き、彼は短い悲鳴を上げては、再び床へと倒れ伏してしまっていた。


「ブラッド・・・分かったわ!私が、あいつを倒してみせる!!」


 それでもブラッドの決死の振る舞いは、セラフの心にも響いている。

 光り輝く剣をその手に握り、立ち上がった彼女は決意を秘めて宣言する。

 魔人を、ジークベルトを倒すと。

 その言葉に呼応するように、彼女が握った剣は一際眩い光を放っていた。


「遅い遅い遅い、遅すぎるんだよぉ!!」


 しかしそんな決意も、迫るジークベルトの速度を考えれば遅すぎた。

 彼はもはや彼女の目の前へと迫り、その腕を振り下ろそうとしているのだから。


「ひぃ!?・・・あれ?」


 その剣が例えジークベルトの身体に届くとしても、セラフの技量が彼に勝るという話でもない。

 迫るジークベルトの爪に、セラフは反応も出来ずに短く悲鳴を上げるだけ。

 しかしやってくる筈のその痛みは、いつまで待っても訪れる事はなかった。


「全く、世話が焼けますわね・・・もう、こんな炎しか出せませんのに・・・」


 響いた声は甲高く、しかし力なく沈んでいく。

 その声を発したのは、どうにか僅かばかり身体を持ち上げている金髪の美少女、エッタだろう。

 見ればジークベルトの目元には、ゆらゆらと揺らぐ炎が纏わりついており、それが彼の視界を阻害してその爪から、セラフの身体を守っていたようだった。


「それが、どうしたぁ!!近くにいる事は分かっているんだ、見えなくとも関係あるかぁ!!」


 始めの一撃こそ外したジークベルトも、近くにいる事は分かっているセラフに、諦めることなくその腕を振るっている。

 その目を覆っている炎は弱弱しく、もはや身体を起こしている事すら出来ないエッタの姿に、やがて消えてしまうだろう。

 それにその滅茶苦茶な軌道は、確かにセラフを捉えてはいなかったが、それがいつまでも続くとは限らない。

 事実、今翻った彼の腕は真っ直ぐに、セラフの身体を狙って伸びようとしていた。


「心配するな、セラフィーナ。お前には・・・指一本、触れさせはしない」


 それもギリギリの所で、マックスによって防がれていた。

 彼はその半ばで断ち切られた剣と、短剣を使っては器用にジークベルトの爪を受け流している。

 それは薄氷を踏むような、際どい攻防の連続だろう。

 それを窺わせるように、ジークベルトの攻撃を受け流しているマックスの横顔には、冷や汗が絶えることなく伝い続けていた。


「・・・うん、分かった!任せたよ、マックス!!」

「・・・あぁ、任せろ」


 それでも守りきってみせると口にしたマックスに、セラフも頷くと傷つけられるかもしれないという怯えを捨てて、両手で剣を握り締めていた。

 そんな彼女の言葉に、応えたマックスの表情は窺えない。

 しかしその声は、どこか嬉しそうな声色をしていた。


「何故だ、何故だ、何故だ何故だ何故だ、何故だぁあぁぁっ!!?何故抜けない!!俺様は、俺様は・・・魔人、ジークベルトだぞぉ!!」


 目の前に存在する、最後の脅威にジークベルトの攻撃は激しさを増してゆく。

 しかし幾らそれが激しく、強く素早くなろうとも、マックスの防御を抜く事は出来ずにいた。

 既に深手を負い、体力も尽きかけボロボロなマックスの姿に、何故彼がそれを続けていられるのかと、ジークベルトは理解出来ずに混乱を叫んでいる。

 そんな彼の反応に、マックスはニヤリと笑うと両腕をクロスさせていた。


「それが人間と、お前達魔人の違いだ!ジークベルト!!」

「っ!しまっ!?」


 クロスさせた両腕を爆発させるように解き放ったマックスは、その振るった腕によってジークベルトの両腕を大きく弾いている。

 それは致命的な隙だろう。

 そんな隙をじっと待ち望んでいたものが今、そこへと踏み込んでいく。


「今だ!!ぶちかませ、セラフ!!!」


 渾身の力を解き放ったマックスは、そこに踏み込んでいった存在と入れ替わるようにして、地面へと尻餅をついている。

 そうして彼は叫んでいた、セラフと。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

 もしよろしければ評価やブックマークをして頂きますと、作者のモチベーション維持に繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ