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婚活の第一条件がレベルになったけど、私は絶対にレベル上げなんてしない!!  作者: 斑目 ごたく
だから私はレベル上げをしない
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ジークベルト 4

「えっ!?あれって、あれでしょ!?不味いんじゃないの、不味いんじゃないの!!?」


 それはジークベルトが先ほど発動させた罠の、基点となる場所だろう。

 部屋全体に影響を及ぼし、仲間達の戦闘能力を奪ったそれを再び起動させられてしまれば、今度こそ命はないかもしれない。

 そう考えて焦るセラフは、その場でバタバタと足踏みを繰り返すと、どうしたらいいか分からないと混乱した様子をみせていた。


「待て!!あれはあのままでいい!」

「えっ、嘘でしょ!?だってあれは、あの・・・さっきの何か凄い奴じゃん!絶対、止めた方がいいって!!」


 どうしたらいいか分からないまま、とにかくそれを止めようと駆けだし始めていたセラフを、マックスが制止する。

 その声にセラフはさらに訳が分からないという表情で混乱を加速させると、彼にどうしてそうするのかと問い掛けていた。


「今の奴は、手がつけられない。しかしあの装置は、恐らく魔力によって起動するもの。そしてその起動には、莫大な魔力が必要な筈だ」

「それが、どうしたってのよ!!早く止めないと、間に合わなくなるわよ!!」


 しかしそれに答えたマックスの言葉は、当たり前の事実を告げるばかりでセラフの不安を解消するものではない。

 彼のそんな言葉にセラフはさらに訳が分からないと頭を抱えると、とにかく早く何とかしないとと必死にジークベルトの事を指し示していた。


「いいや、まだだ!奴があれに魔力を込めきった所を狙うんだ!そうすればセラフィーナ、お前でも奴を倒せる。俺を信じろ」


 マックスはジークベルトにその膨大な魔力を浪費させるために、敢て今は待てとセラフを制止していたようだ。

 その狙いは正しいだろう。

 マックスでさえ返り討ちにされてしまう今のジークベルトに、セラフが容易に近づける訳もない。

 ましてやそこに一撃を加えるなど、夢のまた夢だ。 


「信じろっていわれたって・・・私にはもう武器だってないし、そんな丁度いいタイミングなんか狙って動けないわよ」

「これを使え。当主である事を示す儀礼用の剣だが、使えなくはない筈だ」


 真っ直ぐにこちらを見据えるマックスの真剣な瞳に、セラフも渋々納得したような仕草を見せている。

 その頬が僅かに赤く染まっていても、それを咎める者は今はいない。

 事実、マックスはそんなセラフの様子など気にも留めずに、彼の腰に佩いていた華美な装飾が施された剣を差し出していた。

 彼が話している通りそれは儀礼用の剣であり、実戦を想定したものではないだろう。

 しかし自らが使っていた剣をジークベルトによって半ばから断ち切られてしまったマックスには、それしか差し出せるものがなかったのである。


「いいの、こんなの使っても?大事なものなんじゃない?」

「構わん、どうせ飾りだ・・・タイミングはこっちが指示する。お前はそれに従えば・・・っ!?」


 マックスから剣を受け取ったセラフは、その見事な装飾にそれが本当に使っていいものなのかと戸惑ってしまっていた。

 しかし長年戦いの場に身を置き、そんなものなどに何の価値も感じていないマックスは、ぞんざいに扱っても構わないとそれをセラフに託すと、ジークベルトへと目を向けている。

 そこにはあれほど荒れ狂わせていた魔力が、すっかりと鳴りを潜めてしまっている彼の姿が映っていた。


「今だ、セラフィーナ!!急げ!!」


 もはや目に見えるほどに膨大な魔力を荒れ狂わせていた、ジークベルト。

 しかしその姿が、今や見る影もない。

 それは彼が、その装置に魔力を注ぎ終えたことを意味していた。

 その事実に、もはやのんびりしている暇などないとすぐさま気がついたマックスは、セラフに今すぐ彼へ叩けと叫んでいる。


「え、えっ!?嘘でしょ!?い、今なの!!?」

「そうだ!!いいから、急げ!!」 

「あぁもう!どうなっても知らないんだからね!!」


 剣を渡されたばかりで覚悟も決められていないセラフは、その突然の呼びかけに驚き戸惑ってしまっている。

 しかし今は、そんな彼女に構っている余裕などなかった。

 そのためマックスも戸惑う彼女を無視しては、早く早くと急かしたてている。

 その言葉にやけくそ気味に応えたセラフは、マックスから受け取った剣の鞘を投げ捨てると、それを振りかざして駆けだし始めていた。


「うわああぁぁぁぁっ!!!」


 剣を振りかざして走るのは、最高速を求める上では愚策だろう。

 それでも決まりきらない覚悟に、今必要なのは気合だと滾らせる上段は、叫んだ大声が背中を押している。

 その速度は、セラフの身体能力を考えれば十分過ぎる速度へと達していた。

 しかし果たして、それでも間に合うのだろうか。

 ジークベルトとセラフの間の距離は短くなく、そして彼の準備は既に整ってしまっている。


「っ、不味い!セラフィーナ、避けろ!!」


 そしてやはり、それは間に合う事はない。

 余裕たっぷりな仕草でその椅子へと腰を下ろしたジークベルトは、意味ありげな仕草で両手を掲げている。

 それは彼なりの発動の合図だろう。

 それを目にしたマックスはセラフへと警戒の声を上げるが、自らを奮い立たせる大声を上げている彼女の耳に、それは届かない。


「―――終わりだ」

「こん、ちくしょぉぉぉ!!!」


 セラフが気合の声を振り絞ってその剣を振り下ろすのと、ジークベルトが装置を発動させ、周辺が黒い閃光に覆われるのは、ほぼ同時であった。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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