ろくでなしに、恋をした。
あれから体調はすっかり良くなり、書類整理もなんとか終えることができた。
私は一条さんのところに書類を届けるために廊下を歩いていた。
「うわっ…!」
と、曲がり角を曲がった途端、誰かとぶつかった。
見ると、朔弥の顔が目の前にあった。
──ドクン。
なぜか胸が高鳴って、顔が熱くなった。ここ最近、私は様子がおかしい。
「ご、ごめん朔弥、大丈夫?」
「めっちゃびびった」
朔弥はいつものようにへらへら笑いながら言う。
「お前こそ大丈夫?なんか顔赤くね?」
──ギクッ
「え、え?そう?そんなことないよ」
私は笑って誤魔化した。
朔弥に指摘されて余計顔が赤くなる。
私はそれに気づかれないように、足早にその場を立ち去った。
「──恋する女の子は、可愛いな」
早歩きで歩いていると、突然後ろから声がした。驚いて振り返ると、零が立っていた。
「──え?」
よく意味がわからず、聞き返す。
「千夜璃は、今すごく可愛いね。いつもだけど」
私は数秒、思考停止する。
(あれ、零兄ちゃんって女の子に可愛いとか言うキャラだっけ…?)
「……え、えと」
訳が分からず、おどおどしていると、
「好きなんでしょ?」
ぼっ、と顔が熱くなった。
図星、と零が笑っている。
「ど、どうしてそれを……」
私は赤くなった顔で俯いて聞く。
「見てたらわかるよ、バレバレ」
零は楽しそうに笑う。
「こっ、このことは、朔弥には…」
「わかってる、言わないよ」
頑張ってね、と言ってひらひらと手を振って、零は廊下を歩いていった。
──私は、朔弥のことが好きなんだ。
もう、認めるしかなかった。