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塩飴はゴミに入りますか

 後始末は、光が主導して素早く片付けていく。

 巻き込んでしまった人たちへの謝罪は、光がいたおかげで、あっさりと受け入れられた。


 ――光先輩がいたら許されて当然だし、なんだかなぁ。


 そう思ってしまうみのるだったが、真っ当に話して謝罪しても理解してもらえるとは思えないので、仕方のないことであった。

 最初から協力してくれていた男性客たちは、門倉の実家の道場の門下生たちだ。腕の立つ彼らと撫子が鎮圧にあたったおかげで、無用に怪我人が出なかったのが幸いだ。


 店内の掃除を3人でし、後片付けを済ませた。テーブルナイフは弁償した。ロッカールームに散らばる髪の毛も、容赦なくコロコロ粘着テープで回収し、ゴミ箱に放り込む。

 ミサキは客のフリをしていた門下生の人に、ミサキの家の前まで車で運んでもらった。


 全てを終えて喫茶店を出たときには、すっかり日が沈んでいた。


「一応、ってつくんだろうけど。無事に解決してよかったよ。撫子とみのる君もありがとうね。わたし、腕っ節はないからさ。2人にばっかり危険なこと任せることになっちゃったけど」

「そんなことはない。光がいなければ、どうにもならないことが多かった」

「僕らだけで出来ることは限られてますからね。それに、光先輩がいなければ、四葉ちゃんは心を開いてくれなかったと思います」

「照れる」


 光が頭をかく。

 からんころんと口の中で塩飴を転がしながらの帰り道。光がぽつりと呟く。


「よつばちゃんのご両親、泣いて謝ってた」

「そうか」


 撫子も短く答えた。


「よつばちゃん、怒らなかったんだよ」

「そうか」

「うん」


 沈黙する3人を、暖かさの残る風がなでていった。


「よつばちゃんを守るって気持ちでいたけど、一番優しくて強かったのは、あの子だったんだなって」

「……そうだな」


 ただ、許す。そのことが、どれだけ難しいのか。どれだけの覚悟が必要なことなのか。


 ――きっと、小難しいことなんて考えず、真っ直ぐな気持ちひとつで許せたんだろうな。


「四葉ちゃん、すごいですね」

「すごいよね」


 饒舌じょうぜつに何かを語る必要もない。そんな時間が流れ、3人はそれぞれの家に帰っていった。




 翌日の放課後。2日連続で学校を仮病で休んだ3人は、なんだか久しぶりに感じる生徒会室に集まっていた。


「それじゃあ、新企画やるよーーーー!」


 打って変わって元気になった光がこぶしを突き上げる。それを、撫子とみのるは無言で眺めていた。


「ノリ悪くない?」

「いや、元気だなあと思いまして」

「みのる君には塩飴成分が足りてない」


 みのるの口に、やばい成分が入っていそうな塩飴が放り込まれた。


「えー、それじゃあ本題に入るね。次の週末に、全校生徒で町内の清掃活動をする予定になっています! 時間は午前6時集合で、午後4時解散です!」


「あー、前の全校集会で言ってましたね。……それにしても、頭の悪いスケジュールじゃありませんか? しかも、高校生にもなって、町の清掃活動とかあるんですか? なんか総合学習とかの時間を持て余した小学校みたいな活動ですけど」


 不満を口にするみのるに、撫子が言う。


「まあ、そう言うな。体育祭が近いことも関係しているんだ」

「あー、来月の」

「そうだ。体育祭で大きな音を出して迷惑をかけるから、という意味もあるんだが。実は、信仰関係でも、理由がある」


 みのるは姿勢を正した。


「お、聞く姿勢になってくれたね。そうなんだよ。どこからどう見ても、頭が悪いとしか言えないこのスケジュール。超絶まじめな生徒でもなければ、やってらんない」


 午前6時集合。

 正午から30分だけ食事休憩。お弁当持ち寄り、外食可。

 そこからまたゴミ拾いをして、午後4時に集合して、集めたゴミの袋を学級ごとに集めて解散。


「普通ならサボる。仮病で逃げる。寝坊する。参加しても、集合時間までサボって、適当にお茶を濁す。でも――わたしが全校生徒に、正義のために必要なこととしてお願いした。つまり、今この学校で『めんどくせー』って思っているのは、撫子とみのる君くらいなんだよ」


 みのるはぽんと手を打った。


「なるほど。つまり、サボったりしている生徒は、信仰の素質を持っているとわかる。っていうことですね」

「お、気付いたね。偉いぞ、みのる君。ご褒美をあげよう」


 プレゼントされた塩飴に、みのるは微妙な表情をした。


「それでね。体育祭って全力で体を動かすよね? その中にもし撫子みたいな、身体能力を上げる信仰持ちがいたりしたら、騒ぎになると思うんだよ」

「それを未然に防ぐために、ここで見つけておくと」

「そういうこと。もう1個プレゼント」


 2個目の塩飴が贈られた。

 ――いつか高血圧と糖尿病で苦しみそうだな。

 そんな言葉は飲み込んで。


「で、ゴミ拾いで素質を持っているか見分ける方法はあるんですか?」


 撫子がカバンからクリアファイルを取り出した。


「名簿と、名簿を加工したチェックリストを用意した。これで、出席とゴミの提出を管理する。欠席と遅刻は『×』。サボり疑惑は『△』。ちゃんと提出したら『○』をつける。これを生徒会で管理する。当日は頑張ってくれよ?」


 撫子はいたずらっぽく笑った。

瞳の色は琥珀色 さんからレビューを頂きました。

心より感謝を申し上げます。

感想・評価・ブクマをくださった方、また全ての読者の皆様にも感謝を申し上げます。


前書き・後書きは極力使わない方針ですが、思わずスキップしてエナジードリンクを買って予定外の更新をするくらい嬉しかったので、お礼を書かせて頂きました。

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